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3泊4日ゲームし放題!【デンマークの驚くべき教育】 逆転の発想がもたらす「否定しない」新しい育児法

  • 2026.11.2
cocrecoギャップイヤー時に通ったエフタスコーレの卒業を祝うパーティーにて。ニールセン北村さんの息子さん(右から2番目)とその友だち。 写真提供:ニールセン北村朋子

受験も偏差値もなく、競争とは無縁。だけど経済力も幸福度も高いデンマーク。周囲を気にせず自分の興味に邁進でき、それが仕事にもつながる教育が、好循環を生んでいます。

そんな社会の中で、親はどんなふうに子育てをしているのでしょうか。

デンマーク在住25年のニールセン北村朋子(きたむらともこ)さんは、「『こうしなさい』と会話を一方的に終わらせないで、じっくり話し合うことが幸せにつながる」と話します。

具体的な親子のコミュニケーションについて、お話をうかがいました。

ゲームは「とことん」やらせてみる

人と比較せず、自分の興味を伸ばすデンマークの教育。親世代も同様の教育を受けてきたため、家庭でも「好きなことは?」「どうしたい?」と子どもによく尋ねるといいます。

日本でも子どもの好きを大切に、という意見はあるものの、それがゲームやYouTubeだった場合は尊重するのが難しい……という声も。こうした悩みに対して、ニールセン北村さんはデンマークの驚くべき「解決策」を教えてくれました。

デンマークの自治体は、長期休みに「ゲーム合宿」を主催します。そこでの3泊4日間は、子どもたちは「ゲームし放題」。食事つきで職員が見守ってくれますが、寝ずにゲームをしてもお菓子ばかり食べていてもOKという滞在です。

「小学校4年生から参加でき、私の息子も何回か行きました。初日はうれしくて徹夜でゲームをする子も多いようです(笑)。寝不足で遊ぶので、なかには気分が悪くなって嘔吐する子も出てきますが、それも織り込み済み。職員は『時間はたっぷりあるから少し休んできたら?』などと勧めます。

最終日には疲れ果て、早く家に帰って寝たい、今週はゲームしなくていい、なんて話すんです。思う存分やってみることで、ゲームとのつき合い方を学ぶのでしょう」(ニールセン北村さん)

「日本では、一番楽しいときに『これ以上はダメ』と強制的にやめさせられている状態なのでは?」ともニールセン北村さんは話します。制限ではなく、「とことんやる」機会を提供するのが、デンマークのひとつの教育法です。

デンマークの親が「わがままいわないの」といわない理由

ゲームに限らず、デンマークの親は、子どもの好きなことを一方的に否定しないように気をつけています。親子で正しいと思うことがすれ違った場合、「とにかくお互いの言い分を聞き、話し合う」のだといいます。

「大人の意見に正当性がある場合でも、親が強制的に決めることはしません。

たとえば、子どもがお菓子ばかり食べてしまうときは、『お菓子とごはんは何が違うと思う?』と問いかけ、栄養成分表を一緒に見ながら『お菓子には体を成長させる栄養が少ないね』などと説明します。食事の意味を理解するように促して、お菓子の量を減らすようにするんです」(ニールセン北村さん)

デンマークでは、怒りで会話やコミュニケーションを一方的に終わらせる場面はほとんど見かけません。「わがままいわないの」ではなく、納得するまで時間をかける。そんな親子の姿に、ニールセン北村さんは何度も遭遇しました。

「子どもの意見にも耳を傾けますが、同様に親の意見も尊重されると考えるのがデンマーク。どちらかだけが折れることはないのです」(ニールセン北村さん)

デンマークには「さかなクン」がいっぱい

かくいうニールセン北村さんも、当初は「子どもは親に従うもの」という前提で育児をしていました。しかし、徐々に、息子さんから論理的に反論されることが増えたといいます。

「小学校高学年ごろから、『僕にはその話は正当性がないように思えるけど、なぜママは正しいというの?』と頻繁に理由を聞いてくるようになって。私もうまく答えられなかったし、自分も子どものときは、親の一方的な態度が嫌だったと思い出したんです。

それからは、周囲のデンマーク人の家庭をよく観察して、子どもへの接し方を変えていきました」(ニールセン北村さん)

cocreco最近のニールセン北村さんと息子さんとのツーショット。成人して自分の道を歩いています。 写真提供:ニールセン北村朋子

根気よく対話する意義について、ニールセン北村さんは息子さんやその友だちから多くを学んだと話します。

「彼らは会話中に少しでも意見が異なると、熱心にその理由を聞き出そうとします。それほど重要ではないと感じることでも『それは良くないよ。お互いに納得できる解決策が絶対にあるはずだから、もっと話し合おう』と諦めません。

仕事で疲れているときは、正直、面倒だな……と思うこともあったんですが(笑)。不思議なもので、対話を続けると良い結論が見えてくるんです」(ニールセン北村さん)

こうした方法をデンマークでは「対話的交渉」といい、学校や社会で広く実践されています。互いの意見に耳を傾け、それらを組み合わせて新しい方法を創造するアプローチ法です。

「対話するとお互いの理解が深まり、自分が受け入れられていると感じます。すると居心地もよくなり、『等身大で大丈夫』だと思えるんです。

だから、デンマークには、『さかなクン』のような魅力的な人がたくさんいるんですよ。ありのままの自分で興味を深めていい、得意を生かして互いに補い合いながら生きていける。そういう感覚が、デンマークの高い幸福感につながっていると実感します」(ニールセン北村さん)

外から見た日本は「ポテンシャルだらけ」

昨今、日本でも、過度な競争の弊害が問題視されています。それでも一部では受験競争が過熱し、とどまる気配がありません。デンマークにいるニールセン北村さんの目に、日本のこうした現状はどう映っているのでしょうか。

「何ていうか……非常にもったいないと思うんです。デンマークから見ると、日本には高い『ポテンシャル』があると感じています。

気候変動が深刻化する世界で、日本人が持つ『絶妙なバランス感覚で、できることを模索する姿勢』や『自然とともに生きる知恵』は、大きな価値を生み出せるのではいでしょうか。

身近な例をあげると、肉や魚などあらゆる食品を発酵させて栄養価を高める技術、残りものをアレンジして別の料理にする『リメイク料理』などがあります。日本では『当たり前』ですが、デンマークにはない発想で、とても新鮮です。

こうした日常に眠る宝の芽を発見し、掘り下げ、今の暮らしにフィットする方法やデザインを提案できれば、今後の発展の源泉になります」(ニールセン北村さん)

しかし、そのためには教育を変える必要がある、ともニールセン北村さんは話します。

「競争前提の『決まった正解を導く』教育だと、子どもの好奇心やアイデアは育つどころか削られてしまいます。各々の資質や個性を認め、生かし合う教育が、これからの世界では大きな力になるでしょう」(ニールセン北村さん)

とはいえ、デンマークの教育を日本でそのまま実践すればいいわけでもありません。

「デンマークは、子ども時代に『鍛錬』を経験する機会がほぼありません。個人の意志が尊重されるため、子どもが『やめたい』といったら基本的に止めません。

だから、人を巻き込んで始めたプロジェクトでも、本人の気持ち次第で中断してしまうことがあり、責任感が育ちにくいのです。

日本では、『決めたことはやりきる』ように促しますよね。こうした良い部分は残しつつ、子どもたちが自分の興味や好奇心を十分発揮できる環境が必要だと思います」(ニールセン北村さん)

「子どもの話を聞くだけの時間」で関係が変わる!

最後に、日本で育児する親がすぐに取り入れられる、「幸せに生きるためのヒント」を教えてもらいました。

「1日10分でもいいので、子どもの話をただ聞く時間を設けること。これは非常におすすめです。意見やジャッジはせず、家事や仕事の手を止めてじっくり子どもの話に耳を傾けてみてください。私自身もこれをするようになって以降、息子との信頼関係が深まりました。デンマークでは多くの家庭で実践しています」(ニールセン北村さん)

子どもの話を毎日聞けば、好きなことや大事にしていること、嫌なことが自然とよくわかります。

「そうやって知った子どもの持つ個性を否定せず、ありのままを受け止める。それが、親も子も幸せになるために最も大事なことだと思います」(ニールセン北村さん)

*****

教育制度だけでなく、日常生活に「ランキング」が溢れる日本。日々他人と比較する中で、子どもも大人も知らぬ間に疲弊しているのかもしれません。

まずは親が少し意識を変え、子どもも自分も尊重する。じっくり対話をしてみる。こうした小さな行動が、「幸せ」への一歩につながります。

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【ニールセン 北村 朋子 プロフィール】

文化翻訳家。2001年よりデンマークのロラン島在住。教育や持続可能な社会、民主主義などについて、さまざまな発信と連携、実践的な取り組みを行う。デンマーク・インターナショナル・メディア・プレスセンター代表メンバー。京都芸術大学通信教育部「食文化デザインコース」講師。デンマーク発祥デモクラシーフィットネス公式トレーナー。息子がひとりいる。

cocreco『経済力も幸福度も高くなる デンマークのすごい教育』(青春出版社)には、記事中に紹介できなかった「森の幼稚園」や民主主義教育などの情報が満載。

取材・文 川崎ちづる

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