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衝撃的なメタモルフォーゼ…!ボディホラーとして観るDC最新作『クレイフェイス』が現代社会に投げかける本当の恐怖

  • 2026.11.1

『スーパーマン』(25)のジェームズ・ガン率いるDCスタジオが放つ『クレイフェイス』(公開中)。美貌と実力を兼ね備えたハリウッドの次世代スターがすべてを失い、怪物“クレイフェイス”となっていく過程を描いた衝撃の心理スリラーだ。実は、『ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館』(12)、『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』(24)のジェームズ・ワトキンスが監督を、『ドクター・スリープ』(19)のマイク・フラナガンが脚本を務めていることでホラーファンも必見の本作。ナノテクノロジーを使った治療によって、肉体が変化していく恐怖を描くボディホラーでもある、映画の魅力をひも解いていきたい。

【写真を見る】バットマンのヴィラン誕生の瞬間を描く『クレイフェイス』をホラーの視点で読み解く!

【写真を見る】バットマンのヴィラン誕生の瞬間を描く『クレイフェイス』をホラーの視点で読み解く! [c] DC Studios. All Rights Reserved.
【写真を見る】バットマンのヴィラン誕生の瞬間を描く『クレイフェイス』をホラーの視点で読み解く! [c] DC Studios. All Rights Reserved.

禁断の治療に手を出した人気スターを待ち受ける悲劇

クレイフェイスは1940年に「バットマン」のヴィランとして誕生したキャラクター。“クレイ”の名の通り、粘土のように自在に姿かたちを変える能力を持っている。クレイフェイス初の実写映画である本作は、治療の副作用で怪物と化した男の悲劇として映像化された。

ゴッサム・シティの荒んだ街からのし上がり、ハリウッドで成功をつかんだ二枚目スターのマット・ヘーゲン(トム・リス・ハリス)。ところが裏社会を仕切るマルコ・ザボ(デヴィッド・デンシック)の女に手を出してしまったため、大切な顔を無残に傷つけられてしまう。容貌を失い、名声や仕事もなくした失意のマットは、科学者ケイトリン・コー(ナオミ・アッキー)が難病治療のために開発中のナノセルの存在を知る。彼女を説き伏せ治療を受けたマットは元の顔を取り戻すことに成功。だが、その影響で姿かたちが変化する“クレイフェイス”と化していく。

俳優として順調にスターダムを駆け上がっていたマット [c] DC Studios. All Rights Reserved.
俳優として順調にスターダムを駆け上がっていたマット [c] DC Studios. All Rights Reserved.

治療の副作用でマットの身体は思いもよらない変化を遂げていく

細胞を変化させるナノセルで、欠損した皮膚や筋肉を元通りにしたマット。修復には成功したが、体内のナノセルが感情の起伏に合わせ変化し始める。怒りや悲しみ、憎しみなどストレスに反応し、その肉体は思いもよらない姿になっていく――。このように、肉体が変化する恐怖を描いた作品を「ボディホラー」と呼ぶ。ヒトとハエが遺伝子レベルで結合する『ザ・フライ』(86)、遺伝子操作で生まれた生命体を描いた『スプライス』(10)、アンチエイジングをテーマにした『サブスタンス』(24)など、このジャンルには多くの作品があり、ジェームズ・ガンの長編監督デビュー作『スリザー』(06)でも人間から怪物へ変化していく様がハイテンションに描かれた。

美しい顔を失ったマットは元の顔を取り戻すため、未認可の技術に手を出す [c] DC Studios. All Rights Reserved.
美しい顔を失ったマットは元の顔を取り戻すため、未認可の技術に手を出す [c] DC Studios. All Rights Reserved.

感情の動きに合わせて顔や体が粘土のように変化するようになったマット。美貌を失くした自分を無慈悲にも見捨てたエージェントや自分をだました弁護士たちを目にした彼は、ある時は顔が崩れ落ち、またある時は上下のまぶたが貼り付く副作用に見舞われる。しかもナノセルはストレスに即座に呼応するため、予測は不可能。そのためマットは二枚目から無残な顔へと変わる恐怖や恥辱を、ループするように味わい続けることになる。ナノセルはマットが眠っている間にも反応するため、睡眠中に潜在意識のなかに現れた人間に次々に変化していくシーンもすさまじい。

泥のように姿を変えるクレイフェイスを作りだした精巧な特殊メイク

美貌を取り戻し、かつての人生を取り戻したかのように見えたが… [c] DC Studios. All Rights Reserved.
美貌を取り戻し、かつての人生を取り戻したかのように見えたが… [c] DC Studios. All Rights Reserved.

本作の肝は、マットがルックスだけでなく実力も兼ね備えた俳優であること。やがて彼は撮影を通して培ってきた他人を演じる能力を生かし、思い通りに姿を変える術を体得。自分を陥れた者たちへの復讐を開始する。肉体が自分の意志に反して動きだす恐怖を描くボディホラーは、肉体に引きずられ精神までもが歪んでいく恐怖も魅力の一つ。はじめは怒りに任せ人を殺めてしまったマットだが、やがて負の感情が暴走し心身共に怪物になる。

顔や体が泥のように変化する副作用がマットを襲う [c] DC Studios. All Rights Reserved.
顔や体が泥のように変化する副作用がマットを襲う [c] DC Studios. All Rights Reserved.

本作で描かれる肉体のメタモルフォーゼは衝撃的だが、そこにリアリティを与えているのがクレイフェイスのエフェクトだ。顔が崩れ、ドロリと液状化するように変容していくクレイフェイスの変身過程を、特殊メイクやアニマトロニクスの第一人者レガシー・エフェクツが担当。古くは「ターミネーター」シリーズや「ジュラシック・パーク」シリーズを手掛けてきたメンバーが、本作では18段階のプロセス(VFXで補完したものを含めると27段階)で変わりゆくクレイフェイスを制作し、それを補完する形でCGが使われた。プラクティカル・エフェクトならではの質感が、マットを演じるハリスの演技と相まってリアルな描写を生みだした。怪物クレイフェイスも圧巻だが、ザボを倒すため次々に顔を変えながら迫っていくマットのトリッキーなアクションにも注目したい。

顔の喪失を受け入れることができず壊れていくマットが私たちに突きつけるもの

本作で描かれるのは、喪失を受け入れられず壊れていく男の悲劇。顔を失ったことで人々から背を向けられたマットは彼らに憤りを感じたが、彼は新たな人生に目を向けず美貌を取り戻して元の世界に戻ろうとする。他人の評価でしか自分の価値を見いだすことのできない男が、その価値を理解できなかった者たちに過ちを思い知らせる物語でもある。

『クレイフェイス』は公開中! [c] DC Studios. All Rights Reserved.
『クレイフェイス』は公開中! [c] DC Studios. All Rights Reserved.

ボディホラーが時代を超えて問い続けてきたのは「自分の価値を決めるのは誰か?」ということ。周囲の目や評価に依存しがちな現代社会で、『クレイフェイス』は生まれるべくして誕生した作品といえる。恐ろしくも哀しき物語をスクリーンで味わってはいかがだろう。

文/神武団四郎

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