1. トップ
  2. 【ルームツアー】メンフィスから現代アートまで、コレクションと暮らすパリの家

【ルームツアー】メンフィスから現代アートまで、コレクションと暮らすパリの家

  • 2026.10.27
Nicolas Matheus

セーヌ河岸に位置する、広さ260㎡のアパルトマン。現代アートとデザインをこよなく愛する施主のために、建築家マリー・ドルディーユが色彩豊かな住まいへと刷新した。『エル・デコ』2026年10月号より。

Nicolas Matheus

メンフィスの息吹を感じるエントランス

パリ市内の中央を流れるセーヌ川沿いに立つ、広さ260㎡のアパルトマン。現代アートとデザインを愛し、膨大なコレクションを所有する施主のために、建築家マリー・ドルディーユが手掛けた住まいである。作品を引き立てる静かな背景を整えながら鮮やかな色を重ね、部屋を巡るたびに異なる表情が現れる空間をつくり上げた。

以前の所有者がモールディングや暖炉、木製パネルといったパリの住居の典型的な装飾を既に取り払っていたため、彼女に与えられたのは、いわば白紙の状態だった。

「このアパルトマンの間取りは、もともとうまく整理されていました。玄関を入ると片側に子どもたちのための一角があり、もう片側にはリビングと両親のための独立したエリア、さらに内部階段でつながる使用人の部屋がありました。その部屋は書斎兼ゲストルームに改装しました」とドルディーユ。

<写真>「ブライム」の“ピッチー・オリーブ”でペイントされたダークなエントランス。セラミック製のトーテムは、エットレ・ソットサスが手掛けた1960年代の“フラヴィア”。ネオンを用いたタペストリーはケニア・アルマラス・ムリーリョの『ルナ・ロハ』。繊細なラインのステンドグラスはカロリーヌ・プレジェルマンが制作したもの。

Nicolas Matheus

1980年代のムードで鮮やかに彩られたキッチン

彼女は室内に異なる様式を取り入れ、その境界をあえて曖昧にした。玄関とキッチンにはイタリアデザインの気配がちりばめられ、テラゾーの床が二つの空間をつなぐ。

<写真>エットレ・ソットサスがデザインしたアルピの突き板を用いた面材、テラゾーの床、溶岩石にエナメル仕上げを施したワークトップと壁面を取り入れ、素材、模様、色彩が華やかに共鳴するキッチン。アクセル・シェイによるカラフルなソルト&ペッパーケースが1980年代の趣を強調する。

Nicolas Matheus

多彩な個性を引き立てるローズピンクのテーブル

セーヌ川とパリの街並みを望むメインルームは、サロンが二間続きとなった伝統的な間取りだ。壁を明るい色調の石灰仕上げで覆い、天井の角をなだらかに整え、階段状の暖炉を造作することで、その伝統を更新した。エドラのソファやイサム・ノグチのヴィンテージ照明、施主がコレクションした絵画や彫刻が、端正な空間で調和している。

<写真>リビングに続くダイニングでは、サビーヌ・マルセリスがデザインしたピンクのテーブル“ソープ”を、パトリシア・ウルキオラの「カッシーナ」のチェア“デュデット”が囲む。チェアの色使いは、壁に掛かるヴォイチェフ・コヴァジークの絵画『スピナリオ』の色調と呼応する。テーブルの上のボウルはモルガンヌ・パスカリーニの作品。

Nicolas Matheus

ペールトーンが支配するダイニングルーム

続くダイニングでは、サビーヌ・マルセリスのテーブルとパトリシア・ウルキオラによるチェアが、飾られた絵画の色彩と呼応する。別の一角には、波打つ脚をもつルーカス・コバーの特注テーブルを配し、ジャスパー・モリソンのチェアを合わせた。キッチンはエットレ・ソットサスがデザインした突き板を主役に、テラゾーの床、エナメル仕上げの溶岩石を用いたワークトップと壁面を組み合わせている。素材、模様、色が響き合う空間には、1980年代を思わせる遊び心が息づく。

<写真>波打つ脚のテーブルは、ルーカス・コバーが手掛けたもの。ジャスパー・モリソン作の「マティアッツィ」のチェアとスツールを合わせた。「ピエール フレィ」の生地“アルセーヌ”を張ったベンチの上に、マリック・シディベの写真作品が見える。照明はパーヴォ・ティネルのアイテム。

Nicolas Matheus

パステルカラーが心地よいリフレッシュを誘う

プライベートエリアでは、主寝室とバスルームを上品なピンクで統一。モルタル、カーペット、塗装という異なる仕上げで色を重ね、親密かつ繊細な雰囲気を生み出した。また、バスルームでは、ドット柄のタイルと半円筒形のシャワーブースが柔らかな曲線を描く。

<写真>パウダーピンクと「チェラミカ・ヴォーグ」のドット柄のタイルに包まれたバスエリア。開いた半円筒のようなシャワーブースは、フランスのメーカー、「アド・ルセム」のモルタル系の仕上げ材が使われている。淡いパステルカラーと曲線美のコントラストが、軽やかな気品を醸し出す。

Nicolas Matheus

ドットが楽しげに躍り出す陽気なバスルーム

<写真>壁から浮かび上がるミラーキャビネットはオーダーメイド。クロームメタルのアームチェアはフィリップ・スタルクが1983年にデザインした“ドクター・ゾンダーバー”。その後ろには、ピンクのフェイクファーでフレームを覆った、アクセル・シェイのフロアランプ“クルブ・アレシャン”が佇む。

Nicolas Matheus

ゲストルームの壁面で花々が咲き誇る

かつての使用人部屋を改装した書斎兼ゲストルームは、花柄の壁紙、オレンジのアート、紫の床が鮮烈な表情を見せる。隣接する小さなバスルームにはフルーティなカラーパレットを取り入れ、都市の灰色に抗うような明るさをもたらした。

<写真>ゲストルームにはピエール・シャポが1960年代にデザインしたデイベッド“L07”を選択。マットレスとクッションの張り地は「ピエール フレィ」の“ヴィクトール”、壁紙は「ハウス オブ ハックニー」の“ホリーホックス”。クレディア・フルニオーの作品『ヒーター・オレンジ』が掛かる。

Nicolas Matheus

大胆な色彩が映えるゲスト用バスルーム

<写真>かつての使用人部屋を改装した書斎兼ゲストルームには、コンパクトなバスルームを設けた。濃いパープルとピンクというきわめて大胆な色彩の対比を試みている。「ビザッツァ」の洗面台とミラーは共にインディア・マダヴィによる“デシンヌ・モワ・ユヌ・サル・ド・バン”コレクション。

Nicolas Matheus

紫のグラデーションが甘い眠りに寄り添う

静けさと大胆さ、パリの伝統とイタリアの自由な感性が交差する、喜びと驚きに満ちた住まいがここにある。

<写真>ヘッドボードは両側に収納を組み込んだ。ラッカー仕上げのベッドサイドテーブル“ローリー・ポーリー”は、フェイ・トゥーグッドのデザイン。木彫の作品はフレデリック・ペランクの『アルパイン』。正面はポーランドを拠点に活動するプシェメク・ピシュチェクの二連作『ファサードD』。

Realization:AUDREY SCHNEUWLY Photo:NICOLAS MATHEUS

Hearst Owned

『エル・デコ』2026年10月号

Hearst Owned

こちらもCheck!

Hearst Owned
元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ