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クラシック・モンスターからSF、ヒッチコックまで!「ひつじのショーン」最新作が公開となるアードマン作品に散りばめられた映画オマージュたち

  • 2026.10.25

「ウォレスとグルミット」などのストップモーション作品を中心に、良質なアニメを世に送りだしているイギリスのアードマン・アニメーションズ。今年でスタジオ設立50周年を迎え、10月23日からは新作の長編『映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!』が公開された。

【写真を見る】アードマン作品に隠された映画オマージュを分析!(『チキンラン: ナゲット大作戦』)

【写真を見る】アードマン作品に隠された映画オマージュを分析!(『チキンラン: ナゲット大作戦』) [c] Netflix : Courtesy Everett Collection
【写真を見る】アードマン作品に隠された映画オマージュを分析!(『チキンラン: ナゲット大作戦』) [c] Netflix : Courtesy Everett Collection

かわいらしいクレイアニメが持ち味のアードマン作品だが、子どもはもちろん大人も楽しめるポイントも多く、特にうれしいのが随所に散りばめられた映画オマージュの数々。これまでの長編作品に散りばめられた映画ネタを、代表作から振り返っていきたい。

脱獄ものから潜入ミッションまで真逆の作品をオマージュした「チキンラン」

アードマンの長編1作目として2000年に作られたのが、ニワトリたちの活躍をクレイアニメで描いた『チキンラン』。イギリスはヨークシャー州、強欲なトゥイーディー夫人の養鶏場で囚人のような暮らしを強いられ、卵を産めなくなったら絞められるという非情な扱いを受けているニワトリたちが、外の世界への逃亡を計画する、意外にもダークな1作だ。

物語全体が『大脱走』のオマージュとなっている『チキンラン』 [c]Everett Collection/AFLO
物語全体が『大脱走』のオマージュとなっている『チキンラン』 [c]Everett Collection/AFLO

張り巡らされる有刺鉄線、粗末な木造小屋など、第2次世界大戦時の強制労働収容所のような養鶏場からの脱走という物語の枠組みからもわかるように、物語のベースは脱獄映画の金字塔『大脱走』(63)。リーダー的存在のジンジャーが独房の壁に芽キャベツを投げるシーンをはじめ、地面にトンネルを掘って脱走を試みる作戦など、随所にオマージュが散りばめられている。

また、ニワトリたちが作戦会議を行う“17号棟”は『第十七捕虜収容所』(53)を、頭脳派ニワトリのマックがかけるビン底メガネは『パピヨン』(73)のダスティン・ホフマンを彷彿とさせるなど、そのほかの脱獄映画ネタも満載だ。

『パピヨン』のメガネというマニアックな部分までパロっている [c]Everett Collection/AFLO
『パピヨン』のメガネというマニアックな部分までパロっている [c]Everett Collection/AFLO

ほかにも、養鶏場に新導入されたチキンパイ製造機のオーブンから脱出する際に、閉まりかける扉の下から滑り込み、ギリギリで落ちた帽子を掴み取るシーンは、お察しの通り『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(84)から。さらに『飛べ!フェニックス』(65)を思わせる間に合わせの飛行機など、様々な映画からの影響を感じ取ることができる。

砂漠からの脱出を描く『飛べ!フェニックス』 TM & Copyright [c] 20th Century Fox Film Corp. All rights reserved.
砂漠からの脱出を描く『飛べ!フェニックス』 TM & Copyright [c] 20th Century Fox Film Corp. All rights reserved.

なお、2023年の続編『チキンラン: ナゲット大作戦』は、前作で無事養鶏場から脱走し、島で平穏な生活を送っていたジンジャーとロッキーが、島から抜けだしナゲット工場に迷い込んでしまった娘モリーを助けだすため、再びトゥイーディー夫人と対峙するという内容。

インポッシブルな潜入作戦が繰り広げられる(『チキンラン: ナゲット大作戦』) [c] Netflix : Courtesy Everett Collection
インポッシブルな潜入作戦が繰り広げられる(『チキンラン: ナゲット大作戦』) [c] Netflix : Courtesy Everett Collection

脱獄ものだった前作とは逆に、「007」シリーズを彷彿とさせるヘンテコな敵の根城に忍び込んでいくという潜入ミッションものに。サム・フェル監督が「チキン:インポッシブル」と呼んでいたそうで、罠が張り巡らされた厳重なセキュリティをニワトリたちが攻略していく様は「ミッション:インポッシブル」シリーズのよう。スパイ映画や「オーシャンズ」シリーズといったケイパームービーの影響も感じられる。

「007」シリーズ的なトンチキな敵のアジトが登場する(『チキンラン: ナゲット大作戦』) [c] Netflix : Courtesy Everett Collection
「007」シリーズ的なトンチキな敵のアジトが登場する(『チキンラン: ナゲット大作戦』) [c] Netflix : Courtesy Everett Collection

またニワトリたちが暮らす島のインスレーションは 『猿の惑星:創世記』(11)のセコイアの森から着想。ジンジャーが潜在意識で苦しめられているトゥイーディー夫人のもとへと足を踏み入れざるを得ないという展開は、「エイリアン」シリーズのリプリーを参考にしたそう。『トイ・ストーリー』(95)を思わせる車の運転シーンなど、元ネタ探しが楽しい1作だ。

ヒッチコック的なスリリングな演出も光る「ウォレスとグルミット」

アードマンの代表的シリーズの一つである「ウォレスとグルミット」。テレビシリーズや多くの短中編が作られてきたシリーズの初の長編にあたり、第78回アカデミー賞の長編アニメ賞を受賞した名作が『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』(05)だ。

町の畑を荒らすウサギを捕らえる仕事を始めた発明家のウォレスと忠犬グルミットが、ウサギを野菜嫌いにすることを思いつき、心を操る発明品で一匹のウサギに実験をしたことから巻き起こる騒動を描く。

『フランケンシュタインの逆襲』の原題は『The Curse of Frankenstein』 [c]Everett Collection/AFLO
『フランケンシュタインの逆襲』の原題は『The Curse of Frankenstein』 [c]Everett Collection/AFLO

「The Curse of the Were-Rabbit」という原題のサブタイトルからもわかるように、怪しげな実験によってモンスターを生みだしてしまうという「フランケンシュタイン」や「狼男」映画など、数々のクラシック・モンスターの影響が随所に感じられる。あるキャラクターが月夜に照らされたことで“ウサギ男”へと変身するシーンは、手が伸びる様子などリック・ベイカーの匠の技が光る『狼男アメリカン』(81)をそっくりそのままオマージュしているほどだ。

また巨大化したウサギ男が建物によじ登るなど、町を襲うシーンは『キング・コング』(33)を彷彿とさせ、古きよきモンスター映画への愛にあふれた1作となっている。

モンスター映画のクラシック『キングコング』もアードマンの餌食に! [c]Everett Collection/AFLO
モンスター映画のクラシック『キングコング』もアードマンの餌食に! [c]Everett Collection/AFLO

「ウォレスとグルミット」でシリーズを通じて多く登場するのが、サスペンスの巨匠ヒッチコックへのオマージュだ。例えば、1993年に作られた短編『ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!』の原題『The Wrong Trousers』は『間違えられた男(The Wrong Man)』から来ており、『下宿人』(27)を思わせる不気味な下宿ペンギン、フェザー・マッグロウという悪役、『サイコ』(60)を思わせる不気味な音楽に、のぞき見の構図など要所に影響を感じさせる。

ヒッチコック作品の影響を感じさせる『ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!』 [c] BBC:courtesy Everett Collection
ヒッチコック作品の影響を感じさせる『ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!』 [c] BBC:courtesy Everett Collection

その続編となった2024年の長編『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』では、前作で捕まった強盗ペンギンのフェザー・マッグロウがカムバック。ウォレスは発明したノーム型お手伝いロボット、ノーボットでひと儲けしようと試みるが、突如ノーボットが暴走。その裏には動物園に収容されているはずのフェザーが一枚噛んでおり…と再びフェザーがウォレスとグルミットに罪をなすりつけようとする復讐劇が繰り広げられる。

ノーム型ロボットの暴走を描く(『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』) [c] Netflix : Courtesy Everett Collection
ノーム型ロボットの暴走を描く(『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』) [c] Netflix : Courtesy Everett Collection
悪役として人気のフェザー・マッグロウ(『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』) [c] Netflix : Courtesy Everett Collection
悪役として人気のフェザー・マッグロウ(『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』) [c] Netflix : Courtesy Everett Collection

フェザーを動かさずにカメラを動かすことで恐ろしさを演出する際の照明は『レベッカ』(40)を参考にするなどヒッチコックの影響が感じられるが、そのほかにも多くの映画をオマージュ。刑務所内(動物園だが)でフェザーが懸垂をするシーンに象徴されるように、復讐という物語の枠組みは、いわばペンギン版『ケープ・フィアー』(91)といったところ。

『マトリックス』といえばこの緑のコード [c]Warner Bros.:Courtesy Everett Collection
『マトリックス』といえばこの緑のコード [c]Warner Bros.:Courtesy Everett Collection
動物を撫でながら椅子で振り返る悪役あるあるもパロディ(『007は二度死ぬ』) [c]Everett Collection/AFLO
動物を撫でながら椅子で振り返る悪役あるあるもパロディ(『007は二度死ぬ』) [c]Everett Collection/AFLO

さらにコンピューター画面に流れる緑色のコードがノーボットに映しだされるシーンは「マトリックス」シリーズ、ノーボットたちのアジトは『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』(02)のオーク生産工場、椅子に腰掛けたフェザーがアザラシを撫でながら振り返るシーンは「007」のヴィランであるブロフェルド、船の上でバランスをとるアクションは『ミニミニ大作戦』(69)、その直後にグルミットが橋から落ちそうになるシーンは『ダイ・ハード』(88)…と枚挙に暇がない。

サイレントコメディからSFまで幅広くカバーする「ひつじのショーン」

この「ウォレスとグルミット」と並ぶアードマンの代表作が、このたび新作が公開される「ひつじのショーン」。テレビシリーズやスピンオフのほか長編映画がこれまで2本作られており、『かぼちゃ畑の怪物!』が3作目となる。

サイレントコメディ的なスラップスティックなギャグが炸裂する『映画 ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~』 [c]Lionsgate/courtesy Everett Collection
サイレントコメディ的なスラップスティックなギャグが炸裂する『映画 ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~』 [c]Lionsgate/courtesy Everett Collection

『映画 ひつじのショーン〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜』(15)は、ショーンが自由な時間を手にするため、牧場主をトレーラーの中に眠らせておくイタズラを考えるが、トレーラーが都会へと走りだしてしまい、その後を追って都会へと足を踏み入れるという物語。

ひつじはもちろん、人間もセリフを話さず、映像や表情といったニュアンスで物語るこのシリーズはサイレント映画的な側面があり、リチャード・スターザック監督曰く、テレビシリーズからバスター・キートン的身体ギャグやジャック・タチなどを参考にしてきたそう。本作もコメディアングループのキーストン・コップスにオマージュを捧げている。

動物管理局ではレクター博士的な猫が…(『映画 ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~』) [c]Lionsgate/courtesy Everett Collection
動物管理局ではレクター博士的な猫が…(『映画 ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~』) [c]Lionsgate/courtesy Everett Collection
『X-MEN』の小ネタも登場する(『映画 ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~』) [c]Lionsgate/courtesy Everett Collection
『X-MEN』の小ネタも登場する(『映画 ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~』) [c]Lionsgate/courtesy Everett Collection

また、動物管理所でエリザベスカラーをした猫がズルズルと音を立てながらショーンたちを見ているシーンは『羊たちの沈黙』(91)を想起させるほか、動物を捕獲員のトランパーが捕獲棒を鏡に向かって構える姿はまんま『タクシードライバー』(76)。トランパーが「プレデター」さながらに暗視ゴーグル越しに動物を追いかけるなど、映画をパロったギャグ連発の映画好きにたまらない1本だ。

続く長編第2弾『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』(19)は、牧場に宇宙人の女の子ルーラが迷い込み、宇宙人を狙うエージェントから逃げながら、彼女を家族のもとへ帰そうとショーンたちが奮闘するという、もろに『E.T.』(82)な物語。『E.T.』の月をバックに自転車で宙を駆けるシーンをはじめ、SF映画へのオマージュ、小ネタがてんこ盛りだ。

ピザの箱に『メッセージ』的な文字が…!(『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー』) [c] Netflix : Courtesy Everett Collection
ピザの箱に『メッセージ』的な文字が…!(『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー』) [c] Netflix : Courtesy Everett Collection
『ロボコップ』のED-209 [c] Orion:courtesy Everett Collection
『ロボコップ』のED-209 [c] Orion:courtesy Everett Collection

例えば、UFOからルーラが降りてくる際の『未知との遭遇』(77)的演出をはじめ、ショーンが頼んだピザの箱には油で『メッセージ』(16)のような象形文字が。ショーンとルーラが訪れるスーパーの店名が『銀河ヒッチハイク・ガイド』(05)にちなんで「ミリウェイズ」となっていたり、「メン・イン・ブラック」シリーズ的風貌のエージェントが乗るトラックが変形するロボットは『ロボコップ』(87)のED-209を彷彿とさせるなど、SF映画ネタの宝庫となっている。

ハロウィンが舞台の最新作ではホラーを中心にオマージュ!

80年代のスラッシャーホラーの影響も(『映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!』) [c] 2026 / AARDMAN ANIMATIONS Ltd - All Rights Reserved
80年代のスラッシャーホラーの影響も(『映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!』) [c] 2026 / AARDMAN ANIMATIONS Ltd - All Rights Reserved

「ひつじのショーン」劇場版最新作となる『映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!』。本作ではハロウィンの準備に浮足立つ牧場に正体不明の毛深い怪物が現れるなか、牧場主が行方不明になってしまう騒動にショーンたちが直面する。

ショーンがマッドサイエンティストに!(『映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!』) [c] 2026 / AARDMAN ANIMATIONS Ltd - All Rights Reserved
ショーンがマッドサイエンティストに!(『映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!』) [c] 2026 / AARDMAN ANIMATIONS Ltd - All Rights Reserved

インスピレーション源はユニバーサル・モンスターズやハマー・フィルムのホラー。ショーンがかぼちゃを急速成長させるための薬の開発実験を行ったことから大騒動が起こるという「フランケンシュタイン」的物語や、もじゃもじゃ怪物という「狼男」的要素など『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』のセルフオマージュとも言える。

謎のもじゃもじゃ怪物が牧場に現れ…(『映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!』) [c] 2026 / AARDMAN ANIMATIONS Ltd - All Rights Reserved
謎のもじゃもじゃ怪物が牧場に現れ…(『映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!』) [c] 2026 / AARDMAN ANIMATIONS Ltd - All Rights Reserved
『サイコ』の有名シーンもギャグとして登場する [c]Everett Collection/AFLO
『サイコ』の有名シーンもギャグとして登場する [c]Everett Collection/AFLO

さらに『サイコ』を彷彿とさせるシャワーシーンのギャグなど、アードマンお得意のヒッチコックも炸裂。さらに『ゴーストバスターズ』(84)、『グーニーズ』(85)、「インディ・ジョーンズ」シリーズなど、スティーブ・コックスとマシュー・ウォーカー両監督が親しんだ80年代の映画も参考にしており、これまで同様、映画ファンの満足度の高い1本に仕上がっているようだ。

『映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!』は10月23日(金)より公開 [c] 2026 / AARDMAN ANIMATIONS Ltd - All Rights Reserved
『映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!』は10月23日(金)より公開 [c] 2026 / AARDMAN ANIMATIONS Ltd - All Rights Reserved

今回紹介した代表作以外にも、レイ・ハリーハウゼンにオマージュを捧げた『アーリーマン 〜ダグと仲間のキックオフ!〜』(18)など、子どもやファミリー層はもちろん、大人も大満足のクオリティを誇るアードマン作品。そのなかでも映画好きにはたまらない映画オマージュの数々を、『映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!』が公開されるこの機会に、劇場でチェックしてみてほしい。

文/武藤龍太郎

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