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「ベストよりベターを目指す」。東大人気講義録:森畑明昌先生の「囲碁で養う考える力」

  • 2026.10.26

東大の講義は難解なものばかりかと思っていたけれど、時間割を見ると刺激的なテーマであふれている。理系、文系の枠を超えて、新しい世界を知り、教養を育む喜び。東大の授業ってこんなに面白かったのか。

photo: Koh Akazawa / text: Nozomi Hasegawa

カギになる4つの格言。東大人気講義録:森畑明昌先生の「囲碁で養う考える力」
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講義の概要

日本棋院の全面的な協力の下、東大出身のプロ棋士、石倉昇九段を中心に2005年10月に開講。古い歴史を持つ伝統文化でもあり、頭脳のスポーツともされる「囲碁」。そのルールを学び、実戦を通じて、判断力や分析力、洞察力、集中力などを養う。毎回100人以上の応募があるが、受講可能人数は40人。囲碁の未経験者・初心者のみ。

Point1:「囲碁」を打つときにはベストを求めず、ベターを求める

受講の条件は、ルールを知らない、もしくは本で読んで知っている程度の未経験者であること。囲碁は格子状の碁盤の交点上に黒と白の碁石を交互に置いていき、自分の石で囲んだ陣地の広さを競う「陣取りゲーム」。初手から300通り以上の可能性を秘める19×19の碁盤は初心者にはハードルが高いため、まずは6×6の小さい碁盤から授業が始まる。

「19×19の碁盤だと終局まで大体250手ほどかかります。なので5手、10手で飽きてしまうような人や一手一手ベストを求めてしまう人は向いていない可能性が。深く考えすぎずに“こんなものでいいかな”と、ベターを目指しながら進める人の方が、囲碁には向いているような気がします」

Point2:「囲碁」のルールを覚えるためのカギになる4つの格言

囲碁を覚えるときに知っておきたいのが「まわりに来たらごあいさつ」「入れてください。入れません」「危ないナナメに御用心」「離してきたら、離して打つ」という4つの格言。大人になってからの囲碁学習では、理屈抜きにひたすら打ち試行錯誤で学ぶのではなく、囲碁の基本的な考え方を「言葉」を通じて学ぶのがよい。

「例えば“まわりに来たらごあいさつ”とは、相手の石が自分の石のすぐ隣の8ヵ所のどこかに打たれたら、無視せずに隣接して打った方がいい、という心得のこと。この4つの格言は一局のうちに適用できる場面が多く出てくるものです。これらを正しく理解して覚えておくと、実戦の中で迷ったときの指針になってくれますよ」

Point3:勝利に“正解”がないことが思考力に火をつける

「小学生から25年以上囲碁をやっていますが、正直今でも囲碁のことは何もわからないんです」。森畑先生の言うその“わからない”が、実は考える力を養うことに強く影響している可能性がある。

「やりかけの盤を見せられたとき、次に打ってはいけない絶対に悪い手はわかるけれど、絶対に勝てる手はわからないんです。そのまま200手打って気づけば勝敗がついてしまうのが囲碁で、そこで勝つには広い目で勝負を見極めることが重要になります。学生からは“この授業がどんな授業よりも頭を使います”とよく言われるんです。いつもと違う環境に置かれることで、自然といつもと違う頭を働かせていることになるんでしょうね」

Point4:信長、秀吉、家康も「囲碁」の名プレーヤーだった⁉

この授業には、囲碁を通じて思考力を養う以外に「伝統文化としての囲碁を知ってもらう」という狙いもある。約4,000年前の古代中国が起源とされ、この歴史が続いているのはきっと、時代ごとの権力者たちに保護されてきたから。織田信長や豊臣秀吉らの戦国武将も愛したといわれ、中でも徳川家康は飛び抜けて囲碁が好きだったと推測できる。

「史料として残る戦国武将の棋譜に関しては、後から良いように創作されたと思われるものがほとんどなんです。ただ、家康に関しては自身で囲碁の会を頻繁に開催していたという記録が残っている。家康クラスの人物が負け続ける会をわざわざ開くわけがないんですよね……!」

講義の参考書

『東大教養囲碁講座 ゼロからわかりやすく』著:石倉昇、梅沢由香里、黒瀧正憲
『東大教養囲碁講座 ゼロからわかりやすく』 東京大学出身の石倉昇をはじめ、吉原(梅沢)由香里、黒瀧正憲と3人のプロ棋士がまったくの初心者である東大生を相手に、わかりやすく丁寧に囲碁を教える前代未聞の講座「囲碁で養う考える力」。その講座の内容や囲碁のノウハウを一冊にまとめている。著:石倉昇、梅沢由香里、黒瀧正憲ほか。光文社新書/935円。

東大 memo
森畑先生は東大囲碁部のOBでもある。先生が大学院生の頃に本講義がスタートした。

profile

東京大学大学院総合文化研究科准教授・森畑明昌
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森畑明昌

もりはた・あきまさ/2004年、東京大学工学部卒業。09年東京大学大学院情報理工学系研究科博士後期課程修了。17年より東京大学大学院総合文化研究科准教授を務める。

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