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小栗旬演じる「悪徳刑事」になぜ“善性”が宿るのか?『シンデレラ』主演俳優と「バディになりそうでならない」『バッド・ルーテナント:トウキョウ』の魅力【レビュー】

  • 2026.10.23

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『バッド・ルーテナント:トウキョウ』が10月23日より劇場公開中。本作は小栗旬主演作かつ日本を舞台としながらも、ハリウッドスタジオのNEONとタッグを組んだ「日米共同プロジェクト」となっている。

原案となるのは、「悪徳刑事もの」の代表格といえる、ハーヴェイ・カイテル主演映画『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』(1994年)。その題材からして、『十三人の刺客』(2010年)や『でっちあげ〜殺人教師と呼ばれた男』(2025年)などで「バイオレンス描写」に定評のある三池崇史監督とは相性抜群だと期待できる。

実際の本編では、そんな期待をしっかり上回ってくれた。PG12指定ながら、ギリギリを攻める「ちょいグロ」な刺激的なシーンがアリアリで、性描写も直接的すぎない絶妙なさじ加減。もちろんそれぞれが猥雑で危険な作品には必要と思えるものだ。万人が楽しめるエンターテインメントでありつつも、良い意味で「渋め」の味わいもある良作だった。さらなる魅力を紹介していこう。

※以下、『バッド・ルーテナント:トウキョウ』の決定的なネタバレを避けつつ、一部の展開に触れています。

小栗旬が『シンデレラ』主演俳優との「バディ」になる……いや、ならない?

あらすじはシンプルのようで、その「背景」は良い意味で込み入っている。酒とドラッグと賭博に溺れる悪徳を絵に描いたような刑事・矢吹(小栗旬)が、新宿・歌舞伎町で発生した連続猟奇殺人事件を捜査する。同時期にアメリカから来日したFBI捜査官・グエン(リリー・ジェームズ)が追う、次期大統領の娘の失踪事件にも関わることになる。

つまりは「一見無関係の2つの事件が同時に進行していく」ため、それぞれの「不可解さ」も含めてエンタメになっている。そして、「初めは相性最悪に思えた2人が事件の捜査を進めるうちにお互いに信頼しあっていく」という、『ズートピア』(2016年)や『TOKYO BURST-犯罪都市-』(2026年)のようなバディ(相棒)刑事ものの面白さも期待できそう……なところだが、実はこの『バッド・ルーテナント:トウキョウ』では「そんなに仲良しのバディになっていかない」ことが、むしろ味わい深い。

主人公・矢吹はもともと「一匹狼」的に単独行動が目立っていて、他人の介入がないからこそ非合法なことに手を染めまくる悪徳刑事になっている。つまりは彼にとってはバディなど「ジャマ」でしかない存在なのだろう……と、彼の言動から想像できる。それでも、バディになることを求められたグエンのことを完全に拒絶するわけではないし、時には一緒に「大暴れ」もするし、とある決定的な「選択と行動」にも深く関わり合うことになる。そんな「バディにならないようでなるかもしれない」絶妙な距離感こそを楽しんでほしいのだ。

なお、リリー・ジェームズは実写映画版『シンデレラ』(2015年)の主演俳優として知られている。今回は凛とした佇まいが「一筋縄ではいかない」「毅然とした」FBI捜査官に昇華されており、良い意味で、やはり小栗旬とは「簡単には仲良くならなそうな」空気が醸し出されているのも面白い。

さらに、劇中の大半で話されているのは日本語だが、小栗旬はリリー・ジェームズとは英語での会話をこなしている。三池崇史監督は「小栗さんは日常会話の英語は問題なく話せますが、いわゆるネイティブな人ではない。でも僕はそこがいいと思っていて。今回の矢吹は捜査に必要だから英語を学んだくらいの設定でいいし、逆にアメリカ人から見たらネイティブじゃない英語を話していても、それが味となり魅力となるのはやはり俳優の力だと思います」と語っている。その通りで、これはこれで「ちょうどいい」英語の会話になっている。

ちなみに、小栗旬は実写映画版『ルパン三世』(2014年)でも英語セリフにトライしており、その際のインタビューでは「もう英語はしゃべりたくない……(笑)」などと苦労を語っていたこともあった。そのことからすれば、本作では、英語を堂々と話していて、それが作品上の味わいとして昇華されていることも、なんとも嬉しくなる。

「悪に引きずられてしまった元善人」にも思える小栗旬の説得力

主人公・矢吹は(表面的な悪事を捉えれば)絵に描いたような悪徳刑事と前述したが、実際はステレオタイプな人物像に収まっておらず、観ていくうちに「あれ? 実はそんなに悪いヤツでもないのでは?」と思わせるのも、本作独自の味わいになっている。

具体的には、彼は子どもの頼みを断らない(断れない)でいる。「子どもの送迎」や「お遊戯会へ参加する様」はなんとも微笑ましいし、捜査上で訪れた児童養護施設でのやりとりからも、「なんだかんだで頼み事はちゃんと引き受ける」「子どもを見捨ててはおけない」という、彼なりの“善性”が見えてくるのだ。

さらに、矢吹は拭い去れない過去を抱えており、その過去も含めて、周囲から「ひどい噂」が語られている。そうした背景が、彼の「やさぐれた」振る舞いを加速させていたのではないか、と想像もできる。

三池崇史監督は「アグレッシブな悪というより、世の中に対しても自分に対しても半歩引いてしまっていて、ずるずると悪の世界にはまってしまっているという屈折した悪いヤツ」と矢吹について分析しており、その通りの「悪に引きずられてしまった元善人」のような印象さえあるのだ。

それでいて、小栗旬本人は「最近いい人の役が続いているから悪い人の役をやりたい」「ただこんなひどいヤツはこれまでやったことがない」とも語っていたらしい。しかし、小栗旬にとって「やさぐれた」役はお手のもので、Netflixドラマ『ガス人間』(2026年)では本作よりも善人寄りの警官を熱演していたし、映画『響-HIBIKI-(2018年)』では売れないまま鬱屈している小説家にも絶妙な哀愁を漂わせていた。

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今回の『バッド・ルーテナント:トウキョウ』の「元善人にも思えるけど、ズブズブと悪に染まってしまった刑事」も、そのようなキャラや演技の「延長線上」にある、実に小栗旬らしいキャラであり、俳優本人の資質がバッチリ活きていたと思うのだ。

豪華キャストの贅沢な使い方、そして「顔の良さ」

さらに、本作には西野七瀬、向里祐香、岩田剛典、渡邊圭祐、中野英雄、村上淳、國村隼、舘ひろしなど、豪華キャストが勢揃いしており、「この役をこんなに贅沢な使い方をするの?」「でもこれは納得の起用だわ」と、驚くと同時に的確に思える配役も見どころだ。特に、野村周平の「軽薄そうな長髪のドラッグの売人」は野村周平だと気づかないほどの変貌ぶりだったりする。

そして、連続殺人事件の犯人だと思しき最凶のサイコパスには間宮祥太朗、アメリカからやって来た物語の鍵を握る謎多き美女には現役プロレスラーのリヴ・モーガンというという配役もたまらない。「サイコ」を超えて「モンスター」とさえ言える2人が、どのように小栗旬&リリー・ジェームズと対決するのか? その意外な顛末も楽しみにしてほしい。

そして、勧善懲悪的にスカッとすべてが解決するわけではない、皮肉的めいた「乾いた」タッチの物語運びにもある。そんな物語だからこそ、豪華俳優陣の存在感や演技力が活かされている。特に注目してほしいのが、終盤である人物から「これからのこと」を明かされたときの小栗旬の表情だ。「ぜんぜん良い話じゃねぇからそれ!」という彼の心境がありありと伝わってきて笑ってしまったし、他のキャラクターも「顔」が実に良いことにもぜひ注目してほしい。

ラストは意外に思われるかもしれない。だが、それまでに描かれた出来事や登場人物たちの心理を思い返せば、個人的には「それはそうなるかもな」と納得できる。いや、むしろ「必然」とさえ思える幕切れだ。そして、この結末を迎えてこそ「表面的にはバイオレントなシーンが目立つが、実は渋い味わいのある作品」だと思える。

そんなわけで、全編での猥雑で危険な雰囲気を楽しみつつ、しっかりとした物語の「妙」にも期待してほしい。

文=ヒナタカ

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