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単身赴任でうつ病発症、打ち明けられぬまま妻が他界…孤独な65歳を救った言葉

  • 2026.10.22
「いつかはわかってくれるだろう」との思いから、妻と本音で話し合うことを避けていた池尾。
「いつかはわかってくれるだろう」との思いから、妻と本音で話し合うことを避けていた池尾。

メンズエステを舞台に、訳ありな客たちの心を癒していく人間ドラマ『メンエス嬢加恋・職業は恋愛です』。肌に触れることで相手の感情や傷を感じ取るメンエス嬢・加恋が、悩みを抱えた客たちと向き合っていく物語だ。作者は蒼乃シュウ(@pinokodoaonoshu)さん。今回は、亡き妻への後悔を抱えて生きる男性・池尾仁志のエピソードを紹介する。

哀愁漂う65歳男性と「訳あり」の背景

登場するのは65歳の男性・池尾仁志。「僕みたいなおじさんが、こんな所に来てマッサージを頼むなんて変だろう?」と遠慮がちに語る彼には、簡単にはほぐせない深い悲しみがあった。

蒼乃さんは「年配の男性客も描いてみたかった」と明かす。ただの「普通にメンズエステへ通う中年男性」では物語が動かなかったため、「哀愁漂う老紳士」という人物像を設定したことで、一気にストーリーの深みが増したという。

すれ違いの果てに生じた不全感と後悔

池尾は家族の幸せのために出世を目指し、仕事に人生を捧げてきた。しかし、本社への栄転が決まった際に妻から告げられたのは「あなた1人で行って来てください」という言葉だった。昇進すれば理解してもらえると信じ、単身赴任を選ぶ。

激務の末にうつ病を発症した池尾だったが、「余計な心配をかけたくない」と本当のことを打ち明けられずにいた。そんな折、息子からの電話で妻の訃報を知らされる。お互いを思いやる気持ちがありながらもすれ違ってしまった夫婦の切なさが胸に刺さる。

蒼乃さん自身も「親しい仲なら、モヤモヤした時点で話し合うのが理想」としつつも、「実際は難しい」と語る。「ケンカになるのが嫌で避けてしまったり、『いつかわかってくれるはず』とごまかしてしまうことは多い。そのくせ『どうしてわかってくれないんだろう』とイライラしてしまうこともある」と振り返る。

亡き妻の思いと「自分らしさ」への解放

妻を幸せにできなかったという後悔から、自らの幸せすら遠ざけていた池尾。そんな彼へ加恋は「女はそんなにか弱くない。あなたに幸せにしてもらわなくても、私は自分の力で幸せになります」と、亡き妻の気持ちを代弁するように語りかける。

蒼乃さんは「病気で亡くなったからといって、“幸せではなかった”と決めつけることはできない」と指摘する。「長生きだけが幸せとは限らないし、妻は妻なりに人生をまっとうしたのではないか」と述べ、「“男らしさ”“女らしさ”ではなく、“自分らしさ”を大切にすることが幸せへの近道だと思う」と語った。加恋の言葉を受け、ようやく自分自身の人生へ目を向け始めた池尾。優しくも切ない余韻が残る一編だ。

取材協力:蒼乃シュウ(@pinokodoaonoshu)

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