1. トップ
  2. 「猛獣が動ける範囲を定めた檻、それが憲法」逢坂誠二さんから見た今の政治の危うさ【#むちぞん】

「猛獣が動ける範囲を定めた檻、それが憲法」逢坂誠二さんから見た今の政治の危うさ【#むちぞん】

  • 2026.10.22

世の中の「知らないと損する」話題を、北海道から「ざっくり」深掘りするHBCのWEBトーク番組「むちぞん~無知は損する~」。

情報があふれる現代社会で、「もやもやする話題」や「実は知らないと損する知識」を、その道の第一人者をお招きしてじっくり聞いていこうという企画です。

第2回のゲストは、前衆議院議員の逢坂誠二(おおさか・せいじ)さんをお迎えしました。

聞き手は、HBC本間吏成(ほんま・りせい)アナウンサーと、報道部の藤田忠士(ふじた・ただし)記者です。

これまでの記事は連載「むちぞん」に掲載しています。

高市政権をどう見る?

本間アナ)逢坂さんが今、どのように高市政権を見ているのかというのをお聞きしていきたい。

藤田記者)ちょうど今、話題になっております緊急事態条項について、少しご紹介したいと思います。

Sitakke

藤田記者)高市総理は巨大与党を背景に、国民を二分する政策にも手を付けようとしています。憲法改正の発議を来年春と見定め、スピード感や実行力を示そうとしていて、その1つに、いま国会で議論が進む緊急事態条項があります。

ざっくり説明しますと、大災害や感染症の蔓延など国が想定外の大きな危機にあるときに、どう乗り切るかというルール作りをしたもので、具体的な論点が「国会議員の任期延長」と「緊急政令」に集まっています。

例えば任期延長の場合、衆議院解散後に大災害などが起きると法律を作る議員がいない状態になってしまうため、自民党案では任期を1年程度延期するとしています。
しかし今の憲法54条には、解散時の緊急事態には参議院のみで、法律や予算を決められる「緊急集会」の規定があるため、自民党内にも「これで十分じゃないか」という意見もあります。

そしてもう1つの「緊急政令」は、大規模災害時に政府が国会に代わって法律と同じ効力を持つ命令を出せるようにしようというものですが、国民の自由を制限することが可能になるため慎重論もあります。

Sitakke

逢坂さん)今回ね、まずこの憲法改正の問題なんですけれども、憲法っていうのは何のためにあるかと言うと、実は「権力者を縛るため」にあるんです。国民を縛るためにあるんじゃないんですよ。

権力者っていうのは誰かと言うと、法律を作ることのできる人、法律によって仕事をする人、それから法律のもとで人を裁く人。だから国会議員とか公務員とか裁判官を縛るのが憲法なんですよ。

だから立憲主義という観点で言うと、要するに自分の権限を伸ばすようなことは、憲法上本当によほど慎んでやらなきゃいけないということなの。

ところが、いまやろうとしている「緊急政令」というのは何かと言うと、法律というのは国会でしか作れないのね。「唯一の立法機関は国会である」と憲法に書いてある。

ところが、緊急事態の時は内閣が法律を作れるようにしましょうというのは、言葉は「政令」と書いてあるけれど、要するに「緊急法律」と思った方がいいわけです。内閣の一存で法律を作れてしまう。これは極めて危険で、法律で人を罰したり義務を課したりできるわけですよ。内閣の権限を強めようというのが、今回の改正の1つなんです。

本間アナ)国会で決めるものではなくて、内閣の一存で決めちゃうと。

逢坂さん)本来縛られるべき内閣が「縛りを解いてくれ」と言っているんですよ。

逢坂さん)それから「国会議員の任期延長」というのは、確かに災害があった時に選挙ができないから任期延長した方がいいんじゃないかというのは、なんとなく理解できるかもしれないけれど、国民の側から見たらどう見えるかと言うと、自分が一票投じる権利を、本当は7月に投票できたはずなのに、それが半年後や1年後にのびるということですよね。じゃあ、その間に亡くなる人も出てくるかもしれない。

だから、国民の一票を投じる権利という観点から言えば、自分たちの権利が奪われる、制限されるということなんですよ。それから国会議員の側からすれば、本来ここで自分の役割は終わりだったはずなのに、それがのびて、自分に都合のいい方向へ持っていくということなんです。

だから、いずれの観点も立憲主義という意味で言えば、よくよく慎重にやらなければならないものなんだけれど、それをいま、数の力で押し切ろうとしているところに、問題があると思うんですよ。

Sitakke

逢坂さん)1993年、北海道南西沖地震が起きた。あのとき、奥尻島と渡島半島の沿岸部が相当な被害を受けたけれど、実は衆議院選挙の真っ最中だったの。全国で選挙をやっている最中だったけれど、あの状況の中でも奥尻島で選挙をやったのだから。

だから、本当に選挙ができないかどうか、実際の例に当てはめて、現行法で何ができるかを精一杯考えて、八方手を尽くしたけれど「やっぱり災害の時は選挙ができない」ということであれば、私は任期延長などの判断もあり得ると思うの。

でも、今の仕組みの中で選挙ができるかどうかを十分に考えていない。東日本大震災の時に名簿がなくなった町があったけれど、名簿を共同管理・一括管理して復元できる仕組みにすれば解決できるでしょう?そういうことすら、今やっていないわけだよ。

不都合があったら、今の憲法の枠組みで何がやれるかを最大限考えることが大事なの。衆議院の選挙ができないなら、参議院の緊急集会でどこまで権限を持たせるかという議論もしていない。順番がアベコベなんですよ。

「猛獣が動ける範囲を定めた檻、それが憲法」

本間アナ)逢坂さんの見立てを考えると、自分たちを縛っているはずの憲法を、自分たちが都合のいいように、もっと動きやすいように変えようとしていると。

逢坂さん)法律に基づいて仕事をする人はね、国民の自由を制限したり義務を課したりすることができるんだから、どちらかと言うと「猛獣」に例えてもいいかもしれない。我々国民にとっては、危険なものに例えていいかもしれない。

ただ、その猛獣の存在が、社会に秩序を与えたり、ルールを決めて社会をうまく回したりしていくのではあるんだけれど、その人たちが青天井に自分の権限を振っちゃ困るわけだよ。

だから「猛獣が動ける範囲を定めた檻、それが憲法」なんだ。
その檻を変えられるのは、実は国民でしかないんだけれど、いまやっている議論は、中にいる猛獣そのものが、檻の枠を広げようとしていることに通じるかもしれないね。

Sitakke

藤田記者)自民党は「内閣の権限をいたずらに強化するものではない」「よほどのことがない限り使われない」と主張していますが…。

逢坂さん)「よほどのことがない限り」って、じゃあ「よほどのこと」って何なんだということを議論しなきゃいけない。国会答弁でいくら「安心してください」と言ったって、法律上の何の担保もないじゃないですか。

高市政権を見ていて感じるのは、①政府に対する監視機能を弱める、②政府の権限を強める、③政府の説明責任を回避する、という性格を持っているように見えて、これは相当危ういと私は思うんだな。

国旗損壊罪の議論だってそう。「不快」という個人の感情を罪にする基準にすれば、政府や裁判所の裁量が大きくなってしまう。

衆議院の予算委員会も例年の半分の時間しかやらなかった。補正予算3兆円の大半を使い道が政府の一存で決まる「予備費」に積む。これらはすべて国会の監視機能を弱め、説明責任を回避する動きですよ。

国民から見ても、本当にそれでいいんですかという思いです。

ネット広告は「底なし沼」?

本間アナ)緊急事態条項については、逢坂さんとしては「百害あって一利なし」というお考えですか?

逢坂さん)そこまでは言わない。災害時に何が起こるかを想定することは大事だし、私も100%なくても大丈夫というほど楽観論者ではない。だけど今の議論は乱暴だということ。

それと、もう1つ大事なのは、憲法改正の個別項目ばかりに光が当たるけれど、「国民投票法制」をきちっと正しておかないと、とんでもないことになる。せっかく国民投票をやっても、投票そのものの正当性が疑われるような事態になりかねないのが今の法律なんです。

公職選挙法では、選挙期間中に政治家が有料のネット広告を出すことは制限されているけれど、憲法改正の「国民投票法制」にはそういうルールが全くないの。だからお金を持っている政党や個人は、いくらでもネット上に有料広告を出せるわけです。お金のある側の意見が一方的に拡散されてしまう危険があるわけですね。

Sitakke

藤田記者)そこまで資金力で差が出ますか?

逢坂さん)出ます。資金力のある政党や民間人が、ネット上にガンガン広告を流せる。テレビやラジオは24時間という枠があるけれど、ネットの有料広告は枠がないから「底なし沼」なんですよ。

だから憲法改正の議論をする前に、まずこの国民投票法制を平時にしっかり修正するのが先だと私は思っています。

続きは次回の記事でお伝えします。

むちぞん~無知は損する~

Sitakke

HBCニュースのYoutubeで動画を公開しています。

HBCアナウンサー・本間吏成

稚内市出身。HBCラジオ「気分上昇ワイド ナルミッツ!!!」パーソナリティ、野球実況、HBCテレビ「キタコイ」を担当。Sitakkeでは「むちぞん~無知は損する~」や「アライマ(アラサーの今、話してみた)」に出演。好き勝手に喋るので、リスナーからは「ナルミッツの毒」と言われる。

HBC報道部・藤田忠士

北海道の政治・社会ニュースを中心に取材を担当。

ゲスト:逢坂誠二(前衆議院議員)

1959年北海道ニセコ町生まれ。北海道大学薬学部卒業後、ニセコ町役場に入庁。1994年、35歳でニセコ町長に初当選(当時全国最年少)。2005年衆院選で初当選。内閣総理大臣補佐官などを歴任。

編集:Sitakke編集部IKU

※掲載の内容は収録時(2026年6月)の解説・議論に基づきます。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ