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『チュノ』の推奴師はどこまで本当なのか?“賞金稼ぎ”と奴婢の秘密組織を史実検証

  • 2026.10.21

テレビ東京系列の「韓流プレミア枠」で放送中のドラマ『チュノ~推奴~』(2010年)。前編では、朝鮮王朝時代に逃亡した奴婢を追跡・回収する「推奴」という行為そのものは実際に存在した一方、地方官庁など公権力を通じて処理されるケースがあったことを紹介した。

では、チャン・ヒョク演じるテギルたちのような「推奴師」は、どこまで史実に近いのだろうか。

結論から言えば、その姿にはかなりドラマ的な脚色が入っている。

馬に乗り、刀や武術を駆使しながら逃亡奴婢を追跡する。こうした“武装した賞金稼ぎ集団”のようなスタイルは、史実そのものというより、作品にスピード感とアクション性を与えるための設定と見るべきだろう。

『チュノ』では、テギル、チェ将軍、ワンソンらが馬で各地を駆け抜け、逃亡した奴婢を追い詰める。その荒々しい姿こそ作品の大きな魅力だが、史実の「推奴」をそのまま再現したものではないのだ。

(写真=2010 KBS All rights reserved)

一方で、『チュノ』には史実を巧みに取り込んだ部分もある。

その一つが、奴婢たちによる秘密組織だ。劇中では、両班を敵視し、主人を襲う奴婢たちの集団が登場する。一見すると完全なフィクションに見えるが、これには実在した「殺主契」という組織がモチーフとして使われている。

『燃藜室記述』などの歴史書にも記録が残っており、奴婢たちが主人である両班に反抗しようとする動きそのものは、史実に根ざしている。

ただし、殺主契が記録に登場するのは17世紀後半、粛宗(スクチョン)の時代だ。『チュノ』の主な舞台となる仁祖時代とは少し年代がずれている。つまり『チュノ』は、すべてを史実通りに描いた作品ではない。

逃亡奴婢を追う「推奴」は実在した。奴婢による反抗組織も存在した。しかし、馬に乗った推奴師たちが武器を手に全国を飛び回る姿は、ドラマならではのアレンジだ。

史実をそのまま再現するのではなく、実際に存在した制度や社会背景を土台に、アクションとドラマ性を加えて作り上げた世界。だからこそ『チュノ』は、歴史の再現ドラマではなく、史実を巧みに利用したエンターテインメントとして成立している。

その「ウソと本当」の絶妙な混ぜ方こそ、『チュノ』が歴史ドラマとして今も語られる理由の一つなのだ。

文=森下 薫

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