1. トップ
  2. ヘルスケア
  3. 紅葉登山、標高1500mでも「高山病」に? 法医学者が警告する「せっかく来たから」と登り続ける危険

紅葉登山、標高1500mでも「高山病」に? 法医学者が警告する「せっかく来たから」と登り続ける危険

  • 2026.10.20
紅葉シーズンに人気の登山。高山病は、エベレストのような高峰だけの問題ではありません。法医学者・高木徹也氏が、標高1500mでも起こり得る高山病の症状と、命を守るための下山の判断を解説します。(画像出典:PIXTA)
紅葉シーズンに人気の登山。高山病は、エベレストのような高峰だけの問題ではありません。法医学者・高木徹也氏が、標高1500mでも起こり得る高山病の症状と、命を守るための下山の判断を解説します。(画像出典:PIXTA)

紅葉を楽しみに山へ出かけ、途中で頭痛や吐き気を覚えても、「少し疲れただけ」と登り続けてしまうことはありませんか? せっかく来たのだから頂上まで行きたい、という気持ちもあるでしょう。

しかし、登山中の小さな異変には、放置すると命に関わる意外な原因が隠れていることがあります。体力に自信がある人や、比較的登りやすい山を選んだ人も例外ではありません。

5000体以上を検死・解剖してきた法医学者・高木徹也さんの著書『こんなことで、死にたくなかった 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(三笠書房)から一部抜粋し、登山中に注意したい異変と、命を守るために必要な判断を紹介します。

遭難者の半数近く、死者・行方不明者の約7割が60歳以上

雄大な景色を楽しみながら歩き、さらに登頂したときの達成感がたまらない「登山」や「ハイキング」を趣味としてたしなんでいる方も多いでしょう。健康維持に熱心な高齢者にも人気がありますよね。

登山者が増えている一方で、警察庁の統計によると、2023年は過去で最も遭難者が多かった年でもありました。そして、遭難者の49.4%、死亡者・行方不明者の67.2%が60歳以上なのです。

山にはさまざまな危険が潜んでいます。転倒、転落、滑落、熱中症、低体温症、虫による感染症、動物による外傷のほかに、落雷や雪崩、火山の噴火などに巻きこまれる危険性もあります。

予測しにくい山の落雷

1967年、高校生の登山パーティーで、11人が落雷により死亡した西穂高岳落雷遭難事故は有名です。

雷の発生は予測しにくく、標高が高くて天気が変わりやすい山中では特に気をつけなくてはいけません。

落雷損傷は感電に加えて打撃的な作用を伴うため、頭蓋骨骨折や脳挫傷が生じることでも知られており、命を落とす危険性が極めて高い災害です。

「山酔い」の段階で下山すれば、ほぼ問題ない

そして、もう1つ登山で気をつけてほしいのが「高山病」。

高山病は酸素濃度の低下によって生じる障害で、登山などで高地に行くことで起こる「急性高山病」と、高地で生活している人に起こる「慢性高山病」の2つが知られています。

高山病はその重症度によって、「山酔い」「肺水腫」「脳浮腫」の3つに分類されます。

「山酔い」は頭痛、倦怠感、食欲低下、吐き気や嘔吐などの症状がありますが、この時点で山を下りて安静にしていればほぼ問題ありません。

ところが、強い息切れを起こす「肺水腫」、歩行が困難になるほどの「脳浮腫」に至った場合は、緊急対応を行なわないと命を落とす場合があります。

持病のある高齢者であれば、なおさら死の危険があるので、すぐに高度の低いところに下り、速やかに医療機関で適切な治療を施さなければなりません。

標高1500mでも高山病は起こる

ちなみに高山病は、何もエベレストなど世界的に高い山だけで起こるものではありません。標高1500mを超えると、どこでも発生する可能性があるのです。

ここまでの高さになると、酸素の濃度は85%程度まで低下します。すると、通常であれば96~99%ある血中の酸素飽和度が、92%以下にまで低下してしまいます。

これは、高山病の症状が出る可能性が十分にある数値なうえ、高齢者であれば、脳梗塞などの脳血管疾患、心筋梗塞などの虚血性心疾患を発症する危険性もあるのです。

国土地理院によると、日本国内に標高1500mを超える山は500座以上もあり、比較的気軽に登れる山もあるとのこと。

景色を楽しみ、達成感を得ることなどを優先しすぎて、十分な計画や準備を怠ったまま、安易な気持ちで登山することのないように心がけてください。

◎このような危険を避けるには……
・しっかりと下調べを行ない、余裕のある計画を立てる。
・登山速度はゆっくりと、グループの場合は最も遅い人のペースに合わせる。
・症状が出たら下山し、重症と思われたら速やかに医療機関を受診する。
著者:高木徹也(法医学者)
1967年、東京都生まれ。杏林大学法医学教室准教授を経て、2016年から東北医科薬科大学教授。高齢者の異状死や浴槽内死亡事例などを研究し、東京都監察医務院非常勤監察医、宮城県警察医会顧問なども務める。これまでに5000体以上を検死・解剖している。
文:高木 徹也

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ