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「見たくない現実」患者50人の排泄介助と暴力を描く「正解がない現実」

  • 2026.10.15
怒鳴る、蹴る 画像提供:(Ⅽ)水谷緑/竹書房
怒鳴る、蹴る 画像提供:(Ⅽ)水谷緑/竹書房

一番の働き者でやさしい人が、患者に暴力をふるっていた――。水谷緑さん(@mizutanimidori)の新作コミックエッセイ『暴力病院 看護助手が精神科で見たもの』を紹介するとともに、制作の背景や作品に込めた思いを聞いた。

『暴力病院〜看護助手が精神科で見たもの〜』003 画像提供:(Ⅽ)水谷緑/竹書房
『暴力病院〜看護助手が精神科で見たもの〜』003 画像提供:(Ⅽ)水谷緑/竹書房
『暴力病院〜看護助手が精神科で見たもの〜』004 画像提供:(Ⅽ)水谷緑/竹書房
『暴力病院〜看護助手が精神科で見たもの〜』004 画像提供:(Ⅽ)水谷緑/竹書房
『暴力病院〜看護助手が精神科で見たもの〜』005 画像提供:(Ⅽ)水谷緑/竹書房
『暴力病院〜看護助手が精神科で見たもの〜』005 画像提供:(Ⅽ)水谷緑/竹書房

※この記事はセンシティブな内容を含みます。了承のうえでお読みください。

※本作は著者の取材に基づくコミックエッセイです。紹介している現場の状況や描き方には背景があり、特定の医療現場や医療行為全般に対する偏見を助長するものではありません。気がかりな症状がある場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。

精神科病棟のリアルと描かれた暴力

精神科の病棟で行われる暴力。話には聞いたことがあるような精神科のリアルな部分が、生々しく漫画化された。本作を描くのは、『まどか26歳、研修医やってます!』や『こころのナース夜野さん』『私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記』などで知られる漫画家の水谷緑さんだ。

制作の経緯について水谷さんは、「『精神科ナースになったわけ』『こころのナース夜野さん』など精神科の漫画はいろいろ描きましたが、これまで描いたことがない切り口で、まだ伝えられていない暴力や支配について深掘りしてみようと思いました」と語る。

現場で葛藤する医療従事者とままならない世界

病棟では、社会に戻りたいと奮起する患者や、生きる気力をなくした患者の姿が描かれる。朝はまず50人の患者を食堂に集めることからはじまる。看護助手は、動ける人には声をかけ、動けない人の排泄処理をし、車椅子に乗せて食堂へ移動させる。日々を生きるだけで精一杯の人々はこころを壊し、言葉が伝わらないケースも少なくない。

本作を読むと、現場で働く人の苦悩も理解でき、正解がない現実に行き場のない気持ちにさせられる。作品を通して伝えたいことについて水谷さんは、「行き場のないのがリアルですが、頑張っている医療者もたくさんいて変わってきてもいるので、悲観せず、ままならない世界のなかで、自分はどんな人でありたいか、どんなふうに他者と関わりたいか、考えるきっかけになればうれしいです」と力を込める。

制作にあたっては、「積極的に考えたいことではないですし、このテーマで1冊も描けると思っていませんでした」と振り返る水谷さん。しかし、「根気強く質問してくださった編集者さんのおかげで、思い出したり改めて考えたりすることができました」と、産み出すことが難しい作品だったと明かす。「暴力の批判は簡単ですが、どんな事情があるのかということを表現できればと思いました」

暴力と支配のなかで見えてくる人間の輪郭

作中では、精神病院の患者を隔離し管理する闇が描かれている。「暴力や支配はありふれています。あえて見てみると、また自分がどんな人間か見えてきます」と水谷さんは指摘する。もしも自分が主人公の立場になったら、あるいは現場の従事者になったら――。さまざまな立場の目線で本作を手に取ってみてほしい。

取材協力:水谷緑(@mizutanimidori)

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