1. トップ
  2. 映画館で感じたい、多様で豊かな愛のかたち

映画館で感じたい、多様で豊かな愛のかたち

  • 2026.10.13
Hearst Owned

「今、映画のなかで描かれる愛はますます多様に、豊かになってきている。これまで映画のなかで主流とされてきた異性同士やモノガミー(一対一のパートナーシップ)には留まらない愛のかたちもしかり。これまで「愛」という名のもとで覆い隠されてきてしまったものを、鋭く問い直すもの、時代がどれだけ変化しても決して変わることのない、家族や親子のあいだの普遍的な愛などさまざま。この秋、映画を通して愛について考えるのにふさわしい作品が、数多く公開される」(映画評論家・児玉美月さん)

©2026 「さとこはいつも」製作委員会

誰の人生にもある愛すべき物語

『さとこはいつも』

初恋中の中学3年生の聡子。会社員で、不倫関係にある沙都子。20年にわたる弁当作りを終えた主婦・里子。個性豊かな3人の「さとこ」たちは、ひょんなことから小説を書き始めることに。文章を書くことを通して、彼女たちは自分の人生と向き合っていく。「決して特別ではない、ごく身近な人々の人生に光を当ててきた名匠・沖田修一ならではの珠玉の人生賛歌」(児玉さん・以下同)

監督/沖田修一 主演/有村架純、石田ひかり、姫野花春ほか TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開中 配給/ハピネットファントム・スタジオ

© 2025 NINE BEHIND PRODUCTIONS LTD. BODDAH RIOTFILM KFT.

ある喪失を抱えた家族の肖像

『Blue Heron / ブルーヘロン』

カナダのバンクーバー島へ一家で移り住んだ8歳のサーシャ。しかし、問題行動を繰り返す長男に、両親は頭を悩ませていた。20年後、映画監督となったサーシャはカメラを手に、かつての記憶や記録をたどりながら、あのときを振り返る。「決して愛情だけでは解決できない困難に直面した一家の肖像が、ノスタルジックな映像美と共に描かれます」

監督/ソフィー・ロムヴァリ 主演/エイリュル・ギュベンほか10月23日 Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネマリスほかにて全国順次公開 配給/プンクテ

© 2026 ナギダイアリー・パートナーズ (スターサンズ/⼋朔ラボ/ワンダーストラック) / Survivance / Momo Film Co.

地方に生きる性的マイノリティ

『ナギダイアリー』

岡山県奈義町をモデルにした「ナギ」で創作活動に打ち込む彫刻家の寄子のもとに、弟の前妻で建築家の友梨が訪ねてくる。寄子は友梨をモデルに彫刻を制作し、ふたりは心を通わせる一方、寄子の喪失が次第に浮き彫りに。「多角的に相手を理解することの大切さ。そして、これまで映画ではなかなか光が当たらなかった性的マイノリティの日常を、丁寧にすくい取っています」

監督/深田晃司 主演/松たか子 新宿ピカデリーほかにて全国公開中 配給/スターサンズ

© 2025 Kamlert Film AB, Film i Skåne AB, Sveriges Television AB©LISALARSON

創作と家族への愛は両立する?

『リサ・ラーソンがいた時間』

赤白のしま模様が特徴のネコのキャラクター、マイキーで知られるスウェーデンの陶芸家リサ・ラーソン。孫のエミリア・エクマン・ラーソンがメガホンを取り、2024年に92歳でこの世を去ったラーソンの人生をたどるドキュメンタリー。「70年連れ添った夫、グンナルとの幸福な結婚生活や、女性芸術家としての葛藤と苦悩など、ラーソンの貴重な素顔が垣間見える作品」

監督/エミリア・エクマン・ラーソン シネスイッチ銀座ほかにて全国公開中 配給/ミモザフィルムズ

© 2025 Legs Film Rights LLC. All Rights Reserved.

限界突破寸前のワンオペ母

『ワンオペレーション』

セラピストとして働くリンダは、持病のある娘を抱えながら育児や家事を担う。ある日家の天井が崩落し、モーテルへ避難すると、状況を悪化させるトラブルが多発。ついにリンダは、心身ともに限界を迎えてしまう。「クローズアップの技法を多用して画面に閉塞感を生み出し、現代の女性たちが直面する苦境を、ユニークな撮影によって追体験させます」

監督/メアリー・ブロンスタイン 主演/ローズ・バーン ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国公開中 配給/東京テアトル、シンカ

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.C

元教え子を探し続けた教師の愛

『わたしの知らない子どもたち』

戦後、日本には12万人もの戦争孤児が存在したという。12歳の琴子もまた、戦争によって孤児に。琴子が選んだのは、少年のふりをして生き抜くことだった。一方、琴子の教師だった曽根は、いなくなった彼女を探し続ける。「戦争映画の新たな傑作。西川美和監督がこれまで手がけた映画で描いてきた“嘘”や“演じること”という作家性が結実した、集大成的な作品」

監督/西川美和 主演/小八重葵美、二階堂ふみ 10月16日 TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開 配給/K2ピクチャーズ

© endorfilm s.r.o. Punkchart films s.r.o. Česká televize innogy Česká republika a.s. Barrandov Studio a.s. 2025

果たしてそれは「愛」なのか?

『ブロークン・ヴォイス』

実際にチェコで起きた性的虐待事件を題材にしたフィクション。合唱団を率いる厳しい指導者ヴィーテクに才能を見いだされたヴァレリエは、彼と権力勾配のある複雑な関係へと陥っていく。「かつて恋愛だとみなされていた事象に、実は暴力が潜んでいたかもしれない、というパラダイム転換が起きている現代において、重要なメッセージ性をもった一本として必見です」

監督/オンドジェイ・プロバズニーク 主演/カテジナ・ファルブロバー シアター・イメージフォーラムほかにて全国公開中

Ⓒ2026『男ともだち』製作委員会

男女の曖昧な関係

『男ともだち』

30歳を目前にした神名は仕事でもくすぶる一方、同棲中の恋人がいながら既婚者の医者とも逢瀬を重ねていた。突然、大学時代に親しかった友人のハセオから連絡がくると、神名の日常に変化が訪れる。「近年、女性の作り手によって従来の模範的な女性像を打ち崩すようなリアリティと強度をもった作品が数多く生まれていますが、本作もその系譜に連なるもの」

監督/三島有紀子 主演/松岡茉優 11月6日 新宿ピカデリーほかにて全国公開 配給/ハピネットファントム・スタジオ

Ⓒ2026『すべて真夜中の恋人たち』製作委員会

初めての愛に触れた女性の孤独と光

『すべて真夜中の恋人たち』

川上未映子の人気小説を映像化。校正者として黙々と作業する毎日を送る冬子。人と関わることが苦手だったが、高校で物理の教師をしているという三束に、体調を悪くしていたところを救われる。光に魅了される冬子の見ている、孤独ながらも美しい世界を、16ミリフィルムが鮮やかに描き出す。「光と影の芸術である映画だからこそ実現した、息をのむような映像美!」

監督/岨手由貴子 主演/岸井ゆきの 11月13日 TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開 配給/ビターズ・エンド

Ⓒ 2026K2Pictures

一対一のみに留まらない新たな愛のかたち

『このごにおよんで愛など』

絵本作家の詩は夫がいながら、長年付き合っている同性の恋人がいる。やがて詩は“3人で一緒に暮らさないか”と提案し、ふたりは戸惑いながらも新たな家族のあり方を模索していく。 「同意の上で複数のパートナーと関係を築く“ポリアモリー”をテーマに、現代の恋愛や家族の価値観を問い直すもの。また、女性の妊活や子育てについても果敢に切り込んでいます」

監督/広瀬奈々子 主演/長澤まさみほか 11月27日 TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開 配給/K2ピクチャーズ

児玉美月さん MIZUKI KODAMA
PROFILE 『文學界』『文藝』『群像』「朝日新聞」など多媒体に寄稿。共著に『彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家』『反=恋愛映画論——『花束みたいな恋をした』からホン・サンスまで』など。

Realization : NONOKO HATA
25ans(ヴァンサンカン)2026年11月号掲載(9月28日発売)



元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ