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一品入魂! 新進気鋭のシェフが提案したデジコムタン専門店「オクドンシク」【おいしい店みっけ!】

  • 2026.10.9
Jun Hasegawa

ユニークなコンセプトととびっきりおいしい料理を提供しているお店が続々と誕生している東京グルメシーン。その“今”をフードジャーナリストの佐々木ケイさんと高山裕美子さんが独自の視点で紹介する連載「おいしい店みっけ!」。

今回は、新解釈で伝統をアップデートさせた注目の韓国料理をフィーチャー! 今回は看板メニュー1品に絞った、専門店が登場。東新宿にオープンした「オクドンシク」で味わえる一品とは?

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新解釈で伝統をアップデートした韓国料理「李朝膳」

Photo : JUN HASEGAWA Editor : SATOKO UDA

Jun Hasegawa

毎日でも食べたい。トップシェフ発想のデジコムタン

「韓国料理は本来、いろんな料理をそれぞれ専門店で楽しむのが現地のスタイルですが、日本にはなかなか根付かないんですよね」

とある韓国料理店の若い主が、そう話すのを聞いたことがある。たしかに、例えばソウルでも、カムジャタンにカンジャンケジャン、冷麺にカルグックスなどは専門店で食べるイメージだ。

ひるがえって、東京・赤坂や新大久保で人気を博し、日本の韓国食文化の成熟に貢献してきた老舗や繁盛店を2、3思い出してみれば、やはりホテル中華並みに分厚いメニューを思い出す。

冷麺やクッパだけを気軽に食べに行けて、食べ比べて好きな店を見つけられるようになったら楽しいのに……と、考えていたところに出合ったのが「オクドンシク」だった。

Jun Hasegawa

ソウルで開業した10席の店が、世界各都市へ

「オクドンシク」は、2017年に韓国・ソウルで創業し、ニューヨークに2店、ハワイに1店と店舗を広げ、2025年夏に東京に上陸したデジコムタン専門店だ。「コムタン」はご存じ、牛のすねやテールを骨ごと煮込んで作る韓国の有名なスープのことで、「デジ」は豚肉ゆえ、豚スープの店ということになる。

韓国の一流ホテルで料理長を歴任したオク・ドンシクシェフが、賄い料理に着想を得て作った料理で、ソウルに店を開くにあたり、地元で手に入る新鮮な食材や、トップレストランで鍛えた技術、ノウハウでその味を洗練させた。韓国では開業翌年から連続でミシュランガイドのビブグルマンを獲得。わずか10席の店は、常に行列が絶えない繁盛ぶりなのだとか。

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コムタン(あるいはソルロンタン)というと白濁したスープを思い浮かべる人も多いと思うが、「オクドンシク」の「デジコムタン(¥980)」は、高原地の清流ばりに澄み切っている。

これをクッパ(汁かけごはん)で提供するのだが、器によそったごはんを昆布だしで温める「トリョム」という工程を数回経て、昆布だしを切った後にデジコムタンが注がれる。

この「トリョム」により、ごはんの一粒ひと粒にしっかり、スープの味わいが浸透する。同時に、ごはんのでんぷん質がスープに流れ出ることなく、スープは最後のひと口まで澄み切ったまま、さらりと滋味深い味わいが続く。韓国料理では昔ながらの仕事、だがこのひと手間でクッパの味は格段に異なる。

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「洗練の味は伝統の仕事が作る」の、好例

もちろん、スープを取る豚肉も、筋肉質で脂身がほどよく、しっかりとしたうま味が強い豚うで肉を厳選している。

「香味野菜とともに、じっくり煮込む」という、ごく一般的な方法だが、仕上がりのクリアさを見るに、火入れの温度からアク取りまで、細心の注意が払われているのは想像に難くない。味付けは塩のみ、具材はだしに使用した肩肉の薄切りにネギのみと、潔いことこの上ない。「Essence of Simplicity(シンプルさの本質)」というブランドスローガンも、大いに納得がいく。

デジコムタンにはキムチとコチュジャンがつくのだが、卓上に「コチュジャンは肉に載せるもので、スープに溶かすべからず」というような注意書きがあり、「清流」への執念ともいえる熱い思いが伝わってくる。

Jun Hasegawa

「SDGs」は当たり前? 魅力的なサイドメニュー

ちなみに、数は限られているがサイドディッシュもあり、イチオシは、豆腐の生地で作るチヂミのような(韓国風厚揚げのような)「海老ドングランテン(¥480)」だ。

ふわりと軽く、海老の食感も味わいも豊か。添えられた甘酢しょうゆ漬けの玉ねぎがとてもよく合う。

酒はビールやハイボールのほかに、クラフトマッコリに注目。韓国中南部・尚州にある「NERD Brewery」のもので、ハーブ入りのフレーバーマッコリなど日本限定のフレーバーもある。

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写真上の「デジトッパプ(¥400)」も開業時からの一品。「トッパプ」は「丼」料理で、こちらはにんにくしょうゆ味の豚ひき肉丼なのだが、この豚もだしを取るときに使ったうで肉だ。にんにくがガツンと効いていて、ちょっとジャンクなうまさがある。

先日、久しぶりに行ったら「カップ餃子(¥550)」なる品も加わっていた。餃子の餡を器に詰め、上からふたのように皮を被せて蒸したもの。このテがあったか、という、自宅で真似したくなるようなアイデア料理で、やはりにらもきっちり効かせていてパンチがある。

最低限の塩味のみの淡麗なデジコムタンとのコントラストがくっきりの二品。おわかりの通り、サイドディッシュの多くが豚肉料理で、だしを取ったあとのうで肉をどうおいしくするか、という創意工夫もまた「Essence of Simplicity(シンプルさの本質)」である気がする。

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あまりにシンプルな味であり、開店からしばらくは常に長い行列ができていたので、これは一気に東京2号店、3号店……が続々オープンするのでは?と、期待する一方で、店舗が増えることによる味のブレも(勝手に)少しだけ心配していた。

けれど約1年、東新宿で基礎を固めて、ようやく年内をメドに赤坂に東京2号店を出すらしい。こちらも楽しみ。

オク・ドンシクシェフは、2025年12月に配信がスタートしたNetflixの『白と黒のスプーン~料理階級戦争~』に「デジコムタンひとつでニューヨークに乗り込んだ」シェフとして出演し話題を呼んだ。すでに成功を収めた"白さじ"料理人と、料理と味覚で抜群のセンスを持つ"黒さじ"料理人が対決する韓国発の大人気リアリティショーで、オクシェフが登場すると「すごいらしいぞ」と出場者たちがざわめき、ニューヨーク店の繁盛ぶり(予約待ち、なんと1000人!)が伝えられる。

Jun Hasegawa

実は東京1号店が開業した後、パリにも出店している。世界各都市でクリエイティブなコリアンフードは人気だし、同時にラーメンの世界的な人気が示す通り、ボウルひとつで一食が完結するハイクオリティな「コンフォートフード」は、ユニバーサルなのだと改めて思う。

冒頭の話に返るが、東京にも「オクドンシク」のような一品特化型の「使い勝手はカジュアル、味は一流」な韓国料理の専門店が(飽和状態にある麻辣湯や餃子専門店の代わりに)もっと増えることを切実に祈るばかり……という期待も込め、今回ご紹介した。

ちなみにパリ店の公式Instagramに出ていたメニューをチェックすると「Pork Comtang」は15ユーロ!(ひゃっ)。おそらく、東京は「オクドンシク」のデジコムタンが世界一“お得に”食べられる都市である。話だけ聞いて「ああ、あの有名な」と、食べた気になってしまっていた(私もよくやる)勢も、一度食べる価値ありです。東京で。

オクドンシク
住所/東京都新宿区大久保2-6-10
営業時間/10:30〜21:00(20:30LO)※予約不可
電話番号/03-6278-9155
定休日/不定休
HP/公式HP

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