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リーアム・ニーソンが“特別なスキル”がない男に惹かれた理由は?『ハードボイルド』で見せたアクション俳優としての新境地

  • 2026.10.4

『96時間』(08)や『プロフェッショナル』(24)など、常にアクション映画界の第一線で圧倒的な存在感を放ってきた名優リーアム・ニーソン。今年6月7日に74歳を迎えたニーソンの主演映画最新作が、『スノー・ロワイヤル』(19)のハンス・ペテル・モランド監督との再タッグ作『ハードボイルド』(10月9日公開)だ。1980~90年代ノワールの魂を受け継ぐ骨太な人間ドラマと、切れ味鋭いクライム・アクションを融合させた本作の魅力を、ニーソンが語る。

【写真を見る】いつしかベッドがボートとなり水面を走っていく!?幻想的なシーンのメイキング写真

ボストンの裏社会に生きる、元ボクサーで運び屋の男 [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.
ボストンの裏社会に生きる、元ボクサーで運び屋の男 [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.

ボストンの裏社会で、かつて拳ひとつで成り上がった一匹狼の運び屋の男は、ボクシングの後遺症で記憶が徐々に奪われていく残酷な病に侵されていた。疎遠になっていた娘デイジーを訪ねるも、冷たくあしらわれてしまうが、あるきっかけで孫のドレと交流する時間を得る。やがて、男は長年身を置いた裏組織と対峙し、人身売買の闇から無垢な少女たちを救うため、命懸けの奪還作戦に身を投じていく。

男は娘デイジー(フランキー・ショウ)に会いに行き、孫息子ドレと交流していくことに [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.
男は娘デイジー(フランキー・ショウ)に会いに行き、孫息子ドレと交流していくことに [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.

今回演じた男について、ニーソンは「これまでアクション映画はたくさんやってきて、殴り合いも銃撃戦も山ほど演じてきましたよ。でも今回は、それ以上に、1人の人間をじっくり演じられるところに惹かれたんです」と、キャラクターの魅力に惹かれた様子。

「この男は長い間、自分の暴力によって食べてきました。褒められた人生じゃないけど、本人にとっては、それが仕事だった。そうやって生きるしかなかったんだろうね。でも家族のことになると話は別です。自分がいい父親じゃなかったことを、彼自身が一番よくわかっています。いや、よくなかったどころか、ひどい父親でした。そんな男が孫と出会って、心のどこかに小さな変化が生まれる。宗教的な意味じゃないけど、『なにとかやり直したい』『少しでも償いたい』という思いが芽生えてくるんです。そこが、この役の一番人間らしいところだと思います」。

【写真を見る】いつしかベッドがボートとなり水面を走っていく!?幻想的なシーンのメイキング写真 [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.
【写真を見る】いつしかベッドがボートとなり水面を走っていく!?幻想的なシーンのメイキング写真 [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.

ニーソン演じる主人公の名前は最後まで登場しない。エンドロールでも「Thug(チンピラ)」とだけ表記されている。

「もともと、映画のタイトルも『Thug』でしたが、実を言うと、私はあのタイトルのほうが好きでした。『Thug』という言葉には、この男が生きてきた人生がそのまま詰まっています。彼はフィリップでもジェイミーでもパトリックでもない、『ああ、あいつはチンピラだ』と、周りから、それだけで済まされてきた男なんです。すなわち、名前なんて必要ない人生だった。だからこそ、物語が進むにつれて、自分という人間を少しでも取り戻そうとする姿には胸を打たれるものがあります」。

男の誇りを懸けた最後の死闘を描くハードボイルド・アクション! [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.
男の誇りを懸けた最後の死闘を描くハードボイルド・アクション! [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.

そんな役どころは、ニーソンがこれまで演じてきた主人公とは、かなり印象が違うが、「そうですね。まず、この男には“特別なスキル”がない(笑)。ただの荒くれ者です。でも、それがおもしろかった」と語る。

「私はアイルランドやロンドンで育ったから、若い頃にこういう男たちを何人も見てきました。映画ほど極端じゃないにしても、暴力と隣り合わせで生きている人たちは実際にいましたし、怖い人たちでもありました。でも同時に、どこか寂しさも抱えているんです。そういう記憶が、この役には自然と重なっていました」。

男の愛車は赤いシボレー・シェベル [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.
男の愛車は赤いシボレー・シェベル [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.

男のひげや、革ジャン、彼が乗る赤いシボレー・シェベルもキャラクターを際立たせている。

「あれは脚本のトニー・ゲイトンが考えた人物像が土台になっています。監督とも、細かいところはいろいろ話し合いました。ただ、車については私に聞かないでほしいです。全然詳しくないんです(笑)。『どんな車に乗ってるんですか?』って聞かれたら、『黒いやつだよ』と答えるくらいですからね。でも、あの古いシボレーを見てエンジンをかけた瞬間、『これしかない』と思いました。少し調子の悪そうなマフラーの音まで含めて、この男そのものだった。彼は70年代を生きた男で、見た目だけじゃない、考え方も、生き方も、どこかあの時代から抜け出せずにいるんです」。

本作ではCTE(慢性外傷性脳症)による記憶障害も重要なテーマになっているが、役作りについて聞くと「私は若い頃にアマチュアボクシングをやっていましたし、この30年ほどの間にも、CTEと闘っているボクサーやアイスホッケー選手たちと知り合う機会が何度かありました。当時は『パンチドランクだ』とか『少しパンチをもらい過ぎたんだろう』と言われる程度でした。でもいまではCTEという病気について少しずつ理解が進んできています」と述懐。

男は、孫息子のドレにボクシングの手ほどきをする
男は、孫息子のドレにボクシングの手ほどきをする

さらに「彼らと話をすると、とても魅力的で温かい人たちなんです。でも同時に、記憶や思考が少しずつ失われていく苦しさも感じられます。そうした人たちの姿が、この役を演じるうえで大きな助けになりました。本作で演じる男は暴力を振るってきた男だけれど、それだけの人間じゃなく、病と向き合いながら、人生をやり直そうともがいています。その姿をできるだけ誠実に演じたいと思いました」と、真摯なアプローチで役を作り上げたことも明かした。

役柄にとても真摯にアプローチしたというリーアム・ニーソン [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.
役柄にとても真摯にアプローチしたというリーアム・ニーソン [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.

2度目のタッグとなったモランド監督については、「ハンスとは『スノー・ロワイヤル』で初めて一緒に仕事をしたけれど、本当に気が合うんです。とても落ち着いていて、現場でも決して大声を出したりしない。でも、自分がなにを求めているのかは、はっきりわかっています。役について難しい理屈を延々と語るようなタイプではなく、お互いに『このシーンでは、なにを伝えたいか』が自然と共有できます。だから俳優としても、とてもやりやすいんです。脚本を読んだ時にも、『これは、いまの自分にぴったりの作品だ』と感じて、すぐに出演を決めました」と、監督との深い信頼関係や、役との親和性についても語った。

男が30年使える犯罪組織のボス、チャーリー役にロン・パールマン [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.
男が30年使える犯罪組織のボス、チャーリー役にロン・パールマン [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.

また、疎遠になっていた娘デイジー役のフランキー・ショウ、犯罪組織のボス役のロン・パールマン、バーで出会い、心を通わせていく娼婦役のヨロンダ・ロスと共演した感想についても聞いた。 「ショウはドラマ『SMILF』(原題)を観て以来のファンです。俳優としてすばらしいだけじゃなく、脚本家としても監督としても、本当に才能があります。実は彼女に『君に少し恋をしてしまったよ』なんて冗談も言ったくらいです(笑)。パールマンとは今回が初共演ですが、本当にすばらしかったです。撮影の合間は笑い合っていても、カメラが回った瞬間に空気が変わります。その集中力と誠実さは見事でした。ロスとは20年以上の付き合いになるけど、今回ようやく一緒に仕事ができなした。彼女もまた、とても信頼できる俳優です」。

さらにニーソンは「優れた俳優と芝居をすると、自分で無理に感情を探しにいかなくても、相手が自然に引き出してくれます。それは、俳優にとって本当に大きな贈り物」と、共演者たちを称えた。

74歳にして果敢にいろいろな役にトライしてきたリーアム・ニーソン [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.
74歳にして果敢にいろいろな役にトライしてきたリーアム・ニーソン [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.

70代を迎えたいまも、本作のように深みのある役柄が続くニーソン。

「本当に幸運だと思います。もちろん、いまでもアクション映画の脚本は届きますし、なかには誰かを殴る役もあります(笑)。でも、それ以上に嬉しいのは、時々こういうすばらしい脚本に出会えることなんです。この年齢になってなお、自分が演じたいと思える役が届いてきて。それは俳優として本当にありがたいことだと思っています」と、感謝の言葉を口にする。

『ハードボイルド』は10月9日(金)より公開 [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.
『ハードボイルド』は10月9日(金)より公開 [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.

近年は、アクション映画からの引退を示唆しているニーソンだが、本作はその雄姿をスクリーンで目に焼きつけられる貴重な1本となることは間違いない。年齢を重ね、ますます味わい深い演技で観る者を魅了していくニーソンの姿をずっと観続けていきたい。

文/山崎伸子

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