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「感想を聞かせてください」。中古の本に挟まっていた紙に、私が3年後送信したメール

  • 2026.9.30
ハウコレ

返事は次の日に届きました。書かれていたのは感想への答えではなく、1つの問いでした。前の持ち主が本を手放した理由を、私はそこではじめて知りました。

古本屋の棚から抜いた文庫本は、開くと同じところで止まりました。120ページの間に、白い紙が1枚挟まっていたのです。鉛筆で書かれた1行の下には、メールアドレスが添えてありました。私がそこへ連絡したのは、買ってから3年たった日のことです。

紙の1行を、3年はさんだまま

1行は「感想を聞かせてください」でした。文字は薄く、消しゴムをかけた跡が下に残っていました。前の持ち主のものだと分かる書き込みは、その紙のほかにありません。背は角が丸くなるまで開かれていて、私はこの本を読み込んだ人が、話す相手を探しているのだと思いました。読み終えた日に返事を打ちかけて、消しました。知らない人へ送るには、自分の感想が薄すぎる気がしたからです。紙は、そのページに挟んだまま栞にしました。

3度読んで、3度書き直した

翌年、同じ本をもう一度開きました。前とは違う章に付箋を貼りたくなり、感想が変わっていることに気づきました。その次の年も読み、下書きはそのたびに長くなりました。3年目の終わりにようやく、メールを打ち込みました。書き出しは「3年前に古本で買った本に挟まっていた紙を見て、連絡しています」。最後の章の話まで書くと、何度スクロールしても一番下に着かない長さになりました。送信の後、なにも音沙汰ないまま、その日は終わりました。

返事は、感想への答えではなく

次の日、返事が届きました。「読んでくださって、ありがとうございます。1つ聞かせてください。最後まで読まれましたか」。私は「3度読みました」と返しました。間が空いて、こう続きます。「僕は120ページで止まったままです。この本は、付き合っていた人から、読んだら感想を聞かせてと渡されたものでした。別れてから先を読めなくなって、手放すときに、その言葉を自分の字で挟みました」。あの1行は、本を愛した人の誘いではなく、返せなかった約束の続きだったのです。角の丸くなった背は、たぶん同じところを開いては閉じた跡だったのでしょう。

そして...

「最後の章のことを、お話ししましょうか」と打つと、返事はすぐでした。「いえ。あなたの文を読み終えてから、続きを読みます」。私は本を開き、120ページに挟んだままだった紙を、最後のページへ移しました。3年かけて長くなった文は、感想を待っていた人ではなく、感想を返せずにいた人のところへ届いたのです。それでよかったと、今は思っています。

(30代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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