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引っ越しの荷物から出てきた古い傘が、元カノへの最後のメッセージになった理由

  • 2026.9.30
ハウコレ

段ボールの底から、柄の折れた黒い傘が出てきました。引っ越しの荷造りで、こんなものまで持ってきていたのかと自分に呆れます。その傘を握ったまま、俺は半年前から開いていなかったチャット画面を探していました。

校門の記憶

高校2年の雨の日、部活帰りに校門で傘を差し出してくれた女子がいました。フードを深くかぶっていて顔は見えず、翌日も礼を言えないまま、傘だけが俺の手元に残りました。顔は見えなかったのに、俺はなぜかそれを、同じクラスにいた彼女だと決めてしまったのです。

付き合って2年。転勤の内示が出たことを言い出せないまま会う回数を減らし、「少し距離を置きたい」と切り出したのも俺です。荷造りの途中で傘を見つけ、もう会えないなら本当のことだけ伝えようと思いました。それで打ったのが「お前は俺の初恋」でした。「急にどうしたの」と返ってきて、俺は一気に理由を打ちました。

「高校の校門で、雨の日に傘を貸してくれただろ。あれからずっとだった」

私じゃないよ

返信までの間、俺は段ボールの上に座って傘の骨を直していました。届いた文面は短いものでした。

「それ、私じゃないよ。私、あの頃は自転車通学で、校門に傘なんて置いてない」

読んで、俺は傘を床に置きました。そういえば彼女は、いつも自転車のかごに合羽を入れていました。付き合っている間も、雨の日に彼女が傘を持って現れたことはほとんどなく、俺が2本持っていくのが当たり前になっていました。あれは校門の続きをやり直しているつもりだったのです。

誕生日に傘を贈ったときも、彼女は「傘が好きなんだね」と笑いました。俺はうなずいただけで、本当の意味を言いませんでした。言えば、校門の話になると思ったからです。

「……ごめん。間違えた」

それだけ打って送りました。

打ちかけて消した3行

すぐに問いが返ってきました。「傘の子と私、どっちと付き合ってたの」。俺は入力欄に、来月この街を離れることを打ち始めました。転勤のこと、言い出せずに会う回数を減らしたこと、別れたのは彼女のせいではないこと。3行ほど打ったところで、全部消しました。それを今伝えても、彼女に背負わせるものが増えるだけだと思ったからです。代わりに打ったのは1行でした。

「お前だよ。それだけは間違えてない」

校門の傘の子が誰だったのかは、もう思い出せません。けれど2本の傘を提げて改札に立っていた日々の相手は、間違いなく彼女でした。

そして…

返事は来ませんでした。既読だけが付いて、それきりです。傘は結局、段ボールに戻さず、部屋の隅に立てかけたまま引っ越しの日を迎えました。新しい街の天気予報を見るたび、俺は今も2本目の傘を探しそうになります。持ち主のいない傘を、初恋だと思い込んでいた。そう気づかせてくれたのが彼女で、よかったと思っています。

(20代男性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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