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「誰のおかげで暮らせてると思ってるんだ」と言う夫の前に、私が黙って置いた1冊の家計ノート

  • 2026.9.30
ハウコレ

減った分を自分の欄に書き足しながら、半年分のページが埋まっていきました。夫がそれを読み終えるまで、流し台の前で待った数分のこと。振り返った先で聞いたのは、謝罪ではありませんでした。

振込の欄だけが減った春

結婚して3年、私はパート勤めで、生活費は会社員の夫が毎月共有の口座に振り込む決まりでした。その額が、春を境に3万円減りました。

理由を聞けば、責めているように聞こえてしまう。聞くことと責めることの区別が、あの頃の私にはつけられませんでした。そう思って、代わりにノートを1冊買いました。家賃、光熱費、食費。右端には「夫」と「私」の欄を作り、足りない分を自分のパート代から入れた月は、私の欄にその数字を書きました。

聞かない代わりに、書く。毎月それを繰り返すうちに、ページは半年分になっていました。

皿を重ねる音だけを返した食卓

食事の後、片づけの前にふと口にしたのが始まりでした。

「来月から、シフトを少し増やそうと思ってて」

箸を置いた夫が、こちらを見ずに言いました。

「誰のおかげで暮らせてると思ってるんだ」

言い返す言葉は、いくつも浮かびました。口に出す代わりに席を立ち、2人分の皿を重ねて流し台へ運びました。水を出している間に、夫は風呂場へ入っていきました。シフトの話は、夫を助けるつもりで出したものでした。

テーブルに戻り、ノートの最後のページを開きました。数字の代わりに、その日だけは文章を書きました。

「足りない分は私が出しています。聞かないでいたのは、言いにくいことがあるのだと思ったからです」

読んでからでいいから

次の日、出かける支度をする夫の定期入れの横に、ノートを置きました。

「読んでからでいいから」

それだけ言って、流し台に向かいました。背中の向こうで、ページをめくる音が何度か続き、それから途切れました。

「見てたんだ」

振り返ると、夫は最後のページを開いたままでした。

「春から、手当がなくなってたんだ。言えなかった」

待っていたのは、謝罪よりもこの一言でした。

「一緒に書いてほしかっただけ」

「帰ったら、2人で書き直そう」

定期入れを取った夫が、ノートをそのまま鞄に入れて出ていきました。

そして...

ノートは、いま夫の鞄と食卓を往復しています。右端の欄には、私の字と、少し右上がりの夫の字が交互に並ぶようになりました。

数字は、あの日から変わっていません。変わったのは、書く手が2つになったことでした。

(30代女性・パート)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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