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「痛いって言ってるだろ」と何度も怒鳴る男性。すぐ謝った学生を前に、私が伝えた見ていたこと

  • 2026.9.20
「痛いって言ってるだろ」と何度も怒鳴る男性。すぐ謝った学生を前に、私が伝えた見ていたこと

夕方の車内に響いた声

夏の夕方、仕事帰りに地下鉄に乗った。車内はそこそこ混んでいて、座席はすべて埋まっていた。私はドアの近くで手すりにつかまり、立っていた。

次の駅で、大きなスポーツバッグを抱えた学生が乗ってきた。部活帰りなのか、日に焼けた腕でバッグの持ち手を握っていた。

学生が人を避けながら奥へ進もうとしたとき、バッグの角が、通路側の席に座っていた60代くらいの男性の膝に当たった。

「おい、痛いぞ」

突然の声に、学生がびくっとして振り返った。

「あ、すみません。当たりましたか?」

学生はすぐにバッグを自分の体へ引き寄せた。ところが、男性は眉をひそめたままだった。

「痛いって言ってるだろ。そんな大きい荷物持ってるなら、もっと気をつけろよ」

「すみません。本当にすみません」

学生はもう一度頭を下げた。

それでも男性は気持ちがおさまらないのか、学生を見上げたまま続けた。

「謝ればそれで終わりなのか?」

声が車内に響き、周囲の乗客も何事かと顔を上げた。

学生はそれ以上何も言えなくなったようで、スポーツバッグを抱えたまま俯いていた。

私が伝えたのは、見ていたことだけ

私も最初は、口を出すべきか迷った。

バッグが男性の膝に当たったことは見ていた。ただ、どれくらい痛かったのかは男性本人にしか分からない。

一方で、学生がすぐにバッグを引き寄せ、二度謝ったことも、私はすぐ近くで見ていた。

男性がまだ何か言おうとしたところで、思い切って声をかけた。

「すみません。私、ここで見ていました。バッグが当たったのは確かです。でも、この子、気づいてすぐ謝っていましたよ」

男性が私のほうを見た。

「…だから何だよ」

それ以上は何も言わなかった。

私が伝えられるのは、自分が見ていたことだけだと思ったからだ。

すると近くに立っていた年配の女性が、少し困ったような声で言った。

「もう謝ってるんですし、そのくらいでいいんじゃないですか」

男性は何か言いかけたが、結局、「もういいよ」と言って前を向いた。

その後は誰も話さず、車内には電車の走る音だけが戻った。

次の駅に着くと、男性は席を立ち、そのままホームへ降りていった。

ドアが閉まったあと、学生が私と年配の女性のほうを向いた。

「ありがとうございました」

私は「いえ」とだけ答えた。年配の女性も小さくうなずいていた。

バッグが当たった以上、学生にも気をつけるべきところはあったと思う。ただ、すぐに謝った相手を大声で何度も責め続ける場面を目の前にすると、黙って見ていることもできなかった。

あのとき私がしたのは、誰が正しいかを決めることではなく、自分が見ていたことをそのまま伝えただけだった。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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