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「今すぐ同じものを用意しろ」コートの穴に怒った男性。店長が控えを見せると、90日前の日付に言葉を失った

  • 2026.9.19
「今すぐ同じものを用意しろ」コートの穴に怒った男性。店長が控えを見せると、90日前の日付に言葉を失った

棚の奥から出してきた冬物のコート

町の小さなクリーニング店で、受付のパートをしていたころの話です。3月の終わりは衣替えの繁忙期で、カウンターの前には朝から袋を抱えたお客さんが途切れずに並んでいました。

その日の午後、年配の男性が控えの番号を告げました。

棚の奥から出してきたのは、紺色の冬物のコートです。確認すると、お渡し予定日からすでに90日ほど過ぎていました。

男性はコートを受け取ると、その場で広げました。すると袖のあたりを指でつまみ、急に表情を変えました。

小さな虫食いのような穴が一つ、あいていたのです。

「ちょっと、これ。穴あいてるじゃないか」

私も袖を確認し、男性に頭を下げました。

「申し訳ありません。お預かりしたときの記録を確認させてください」

しかし男性は、コートをカウンターの上に広げたまま声を強めました。

「預けたときはこんなのなかったよ。来週、法事で着るんだよ。どうしてくれるの?」

「確認しますので、少々お待ちいただけますか」

「待ってる場合じゃないんだよ。今すぐ同じものを用意しろ」

突然の強い口調に、私は言葉に詰まりました。

「来週必要だって言ってるだろ。今すぐ同じものを用意しろよ」

男性は同じ要求をもう一度繰り返しました。

「それが無理なら3万円払ってくれ。買い直すから」

男性が手のひらでカウンターを叩くと、後ろに並んでいたお客さんが驚いたように一歩下がりました。

「来週必要なんだ」と男性は何度も繰り返し、やり取りは15分ほど続きました。

店長が一つずつ指で示した日付

声を聞きつけた店長が、奥のアイロン台から出てきました。私の隣に立つと、まず男性に頭を下げました。

「お待たせして申し訳ありません。私がお話を伺います」

男性はすぐにコートの袖を店長へ向けました。

「見てよ、これ。預けたときは穴なんかなかったんだ。来週着るのに、これじゃ困るよ」

「穴があることはこちらでも確認しました。ただ、今この場で同じコートをご用意したり、3万円をお渡ししたりすることはできません」

「じゃあ、どうするんだよ」

「まず、お預かりしたときの記録を一緒に確認させてください」

店長は引き出しから、受付時の記録が残った控えを一枚取り出しました。

男性から読める向きに置き、紙の上を指で示します。

「お預かりしたのが12月です。こちらがお渡し予定日になります」

店長の指が、その日付のところで止まりました。

「今日までですと、お渡し予定日から約90日経っています」

さらに、受付時に確認した内容と署名の欄を示しました。

男性は紙に顔を近づけ、日付を見つめました。

「……90日?」

「はい。こちらの日付からです」

「そんなに経ってたのか……」

先ほどまでの勢いが少し弱まりました。それでも男性は、もう一度コートの袖を見ました。

「でも、この穴はなかったと思うんだよ」

店長はうなずきました。

「その点については、今ここで原因を決めることはできません。確認をご希望でしたら、改めてお預かりして状態を確認します」

男性は黙りました。

しばらく控えとコートを見比べたあと、小さく息を吐きました。

「…いや、もういい。来週使うから持って帰るよ」

「よろしいですか?」

「うん。こんなに取りに来てなかったとは思ってなかったから」

男性はコートをたたんで腕にかけると、店を出ていきました。

店長は男性を責めることも、こちらに責任がないと言い切ることもしませんでした。ただ、確認できる日付を一つずつ示し、できることとできないことを説明しただけでした。

「お待たせしました。次の方、どうぞ」

店長が声をかけると、止まっていた列がゆっくりと前へ進み始めました。

あのとき、感情的な相手にこちらまで強い言葉を返すのではなく、まず確認できる事実を整理して伝えることの大切さを知りました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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