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「なんで俺の分だけ大盛りなの?」と聞かれた私が、茶碗を替えられなかった理由

  • 2026.9.19
ハウコレ

器が小さいからそう見えるだけだと答えれば、すぐに済む話でした。それでも数秒、返事に迷ったのは、息子がその茶碗のことを覚えていないと分かったからです。

息子の茶碗にごはんをよそう量を、私は昔から変えていませんでした。

同じだけよそっても、息子のほうだけ高くなります

息子がこの家を出て、何年か経ちました。

月に1回くらいのペースで顔を出しては、2人でごはんを食べて帰っていきます。

その日も、いつもの茶碗を2つ出しました。

よそう量は同じです。それでも息子の茶碗は私のものより少し小さいので、ごはんが縁より高くなります。

私はそれを知っていながら、器を替えないまま何年も使ってきました。

食卓へ運び、炊飯器のほうへ戻ろうとしたとき、息子が自分の茶碗を見ているのが分かりました。

器が小さいから、と言えば済む話でした

「なんで俺の分だけ大盛りなの?」

軽い調子でした。

私は息子へ目をやりました。

「器が小さいからよ」

そう答えれば、それで終わる話です。

ただ、その瞬間、息子が自分の茶碗をただの食器として見ていることに気づきました。

覚えていないのだと思いました。

何を言えばいいか決められないまま数秒が過ぎて、私は、

「足りなかったら言いなさいね」

と笑いました。

答えになっていないことは、自分でも分かっていました。

それに、茶碗が小さいと言えば、次に来るとき新しいものを買ってきそうな気もしていました。

私はまだ、それを替えるつもりになれませんでした。

あの茶碗を選んだのは、息子自身でした

息子がその茶碗を選んだのは、中学に上がった年です。

それまで使っていたものを割ってしまい、一緒に新しい茶碗を買いに行きました。

売り場で息子が手に取ったのが、今も使っているあの茶碗です。

大人用より小ぶりだったので、

「もう少し大きいほうがいいんじゃない?」

と言いました。

それでも息子は、

「これがいい」

と言って戻しませんでした。

家を出るときには、鍋も皿も箸も一式持たせました。台所から息子のものが少しずつ減っていったなかで、あの茶碗だけが実家に残りました。

何年か前、そろそろ替えてもいいだろうと思って新しい茶碗も買いました。

けれど包みを開けないまま、食器棚の奥にしまっています。

食事のあと、洗い終えた茶碗を見比べた息子が、

「これ、俺のだけ小さいんだな」

と言いました。

私は台所の入り口から、

「同じだけよそってるのよ。ずっとその茶碗よ」

と返しました。

「自分で選んだのよ」とは言えませんでした。

覚えていないことを責めたいわけでもありませんでした。

ただ、私だけが覚えているままでもいいような気がしたのです。

そして...

あれからも、盛る量も茶碗も変えていません。

次に来たとき、息子は量のことを聞かず、高くなったごはんの上から先に箸をつけていました。

食事が終わったあと、私は新しい茶碗の包みを食器棚のいちばん奥へ戻しました。

いつか今の茶碗が欠けたり、割れたりしたら、そのときは新しいものを出すつもりです。

それまでは、中学生だった息子が自分で選んだ小さな茶碗に、同じ量のごはんをよそい続けようと思っています。

(60代女性・パート勤務)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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