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「自分の物じゃないでしょ」弟の返済を待っていた私。しかし、家の棚を見て気付いた違和感とは

  • 2026.9.16

給料日が近づくと、弟は同じ言い方をした

弟は一つ下で、私と母と三人で古い家に住んでいる。

最初にお金を渡したのは、私が働き始めて二年目の春だった。

家賃や通信費など、自分の支払いだけでも余裕はなかったが、困っている弟を放っておく気にもなれなかった。

弟は当時、支払いがいくつか重なって苦しいと言っていた。少しでも足しになればと思い、私は封筒に入れたお金を渡した。

返す期限までは決めなかった。兄弟なのだから、そこまで細かく言わなくてもいいと思っていた。

ところが、それから給料日が近づくたび、弟は似たようなことを口にするようになった。

「ごめん。今月ちょっと厳しくてさ。次の給料入ったら返すから」

「……無理して返せとは言わないよ。支払いのほうは大丈夫なの?」

「うん。そこは大丈夫。ほんと悪い」

最初のうちは、私も「気にするな」と返していた。

けれど半年、一年と経つうちに、返事は「分かった」や「うん」だけになった。

同じやり取りを何度したのか分からなくなったころには、最初にお金を渡してから三年が過ぎていた。

違和感を覚えたのは、ある日、玄関に大きな箱が届いていたときだった。

夜になると、弟が居間で箱を開けていた。出てきたのは、以前から「欲しい」と何度も話していた道具だった。

私は思わず声をかけた。

「それ、買ったの?」

弟は少しうれしそうに箱から取り出した。

「うん。ちょうど安くなっててさ。今しかないと思って」

「……支払いがきついって言ってなかった?」

弟の手が止まった。

「それは来月まとめて払うよ」

「まだ払ってないの?」

「大丈夫だって。ちゃんとするから」

その言葉を聞いた瞬間、腹が立つというより力が抜けた。また同じ「大丈夫」を聞いている気がした。

棚の上が、1つずつ空いていた

母の休みの日、私は台所で洗い物をしながら、その話をした。

「もう三年なんだよ。ずっと『次の給料で返す』って言われてる」

母はしばらく黙っていた。

「お金を返せって怒りたいわけじゃないんだ。ただ……欲しい物は買うのに、こっちにはずっと同じことを言うんだなって」

母は小さく息を吐いた。

「そうね。それは一度、ちゃんと話したほうがいいかもね」

居間の棚がおかしいことに気づいたのは、その次の日の朝だった。

祖父が使っていた置き時計がなくなっていた。

そこには四角く埃の跡だけが残っている。

何となく隣の段を見ると、母が集めていた小さな器も減っていた。以前はいくつも並んでいたのに、端に一つ残っているだけだった。

一つなくなっただけなら、母がどこかへ移したと思ったかもしれない。

けれど棚を見回すと、ほかにも空いた場所があった。

その日の夜、帰ってきた弟を呼び止めた。

「ちょっと聞いていい?」

「なに?」

「棚にあったおじいちゃんの時計、知らない?」

弟の表情が少し固くなった。

「……ああ、あれ」

「器も減ってるんだけど。何かした?」

少し間を置いて、弟が答えた。

「売ったよ。ずっと使ってなかったし、少しくらいお金になるかなと思って」

思わず弟の顔を見た。

「売ったって……自分の物じゃないでしょ」

「でも、ずっと置いてあっただけじゃん」

「置いてあるだけでも、お母さんの物はお母さんの物だよ。おじいちゃんの時計だって、勝手に売っていいわけじゃない」

弟は何か言いかけたが、結局黙った。

私はそれ以上言葉が出ず、棚の前に戻った。

残っている物を上から順に目で追っている自分に気づき、途中でやめた。

お金が返ってこないことだけなら、まだ待てたのかもしれない。

けれど、家にあった物まで知らないうちに一つずつ減っていた。そのことのほうが、私にはずっと重く感じられた。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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