1. トップ
  2. ビューティー
  3. 塗るPDRNはサーモン注射レベル?話題の成分を化粧品開発者が科学的に解説!

塗るPDRNはサーモン注射レベル?話題の成分を化粧品開発者が科学的に解説!

  • 2026.9.3

「サーモン注射」や「塗るPDRN」としてSNSや美容医療で話題の成分『PDRN(ポリデオキシリボヌクレオチド)』。
「プチ整形級」「肌が生まれ変わる」といった噂を目にして、気になっている方も多いのではないでしょうか?しかし、医療用の注射と日々のスキンケアで使う化粧品とでは、成分の働きや期待できる効果に大きな違いがあります。
また、「サケ由来」と「植物由来」の違いや成分表示の見方など、購入時に迷うポイントも少なくありません。
今回は、最新のヒト試験データ(2025〜2026年発表)を交えながら、PDRN化粧品の本当の実力と後悔しない選び方について、現役の化粧品開発者で特級コスメコンシェルジュの船木彩夏さんが解説します。

この記事のポイント
・PDRN(DNA-Na)の正体:サケの精子等から抽出されるDNAの断片で、近年は高麗人参など植物由来のPDRNも登場している
・最新研究と注意点:塗るPDRNのヒト試験(目元のハリやバリア機能)が進んでいるが、医療のような「肌再生」や「整形級」の効果を保証するものではない
・失敗しない選び方:「◯万ppm」などの数値に惑わされず、一緒に配合されている保湿・整肌成分や製品全体の試験データをチェックすることが大切

話題の美容成分「PDRN」とは?成分の由来と全成分表示の注意点

PDRN(Polydeoxyribonucleotide:ポリデオキシリボヌクレオチド)は、デオキリボヌクレオチドの重合体のこと。
デオキシリボ核酸=DNAと習ったことがあるかと思います。
PDRNは、DNAを一定の長さに断片化した鎖状成分の混合物です。
それぞれの断片は、デオキシリボヌクレオチドが多数連なってできています。
サケ由来と植物由来(高麗人参・シャクヤク)の違い
PDRNは主にサケやマスの精子から抽出される、注目の成分といえます。
美容医療の分野でも「サーモン注射」などと呼ばれ、インフルエンサーや芸能人などの影響もあり人気になっています。
魚由来以外にも、エコやヴィーガンといった考えの広まりもあり、高麗人参や緑茶、シャクヤク由来で植物性のPDRNも登場しています。
化粧品パッケージで「DNA-Na」と書かれる理由
そして最近では、クリニックで使用されるのみでなく、PDRNを配合した化粧品も市場に並んでいます。
なお、日本の化粧品の全成分表示(表示名称規格)では、「PDRN」ではなく「DNA-Na」「加水分解DNA」「加水分解DNA-Na」などと記載されています。
商品にPDRN配合と書かれているのに成分表示に見当たらないと思うかもしれませんが、これらの名称を確認してみてください。

「塗るPDRN」に効果はある?最新のヒト試験データから判明したこと

これまでPDRNの研究は、注射や創傷治療に関するものが中心でした。
しかし、2025年末から2026年にかけて、肌に塗布したPDRNのヒト試験が少しずつ報告されるようになりました。
サケ由来PDRN(0.1%配合)による目元のハリ・シワに関する試験
2026年に発表された研究では、35~55歳の中国人女性31名が、顔の片側にサケ由来の中分子PDRNを0.1%配合したアイクリーム、反対側に同じ基剤でレチノールを0.1%配合したアイクリームを1日2回、28日間使用しました[1]。
その結果、PDRNを使用した側では、画像解析による目元のシワ、機器測定による弾力、超音波による真皮の厚み・密度、3D画像から算出した目の下のふくらみ(アイバッグ)とくぼみ(ティアトラフ)の体積指標が改善し、複数の項目でレチノール側より改善幅が大きかったと報告されました。
さらに、再構築したヒト表皮を、光の反応から成分の分布を調べる「ラマン分光法」で測定した試験では、PDRNに関連すると考えられるシグナルが、時間とともに角層より内側へ分布する可能性が示されました。
これは「分子が大きいPDRNは、塗っても角層より奥には届かないのでは?」という疑問に対する、興味深い研究です。
ただし、ラマン分光法だけでは、外から塗布したPDRNと皮膚にもともと存在する核酸を完全には区別できないといった点には注意が必要です。
また、実際のヒト皮膚での測定は1名のみであり、一般的なPDRN化粧品が角層を越えて浸透することを証明したものではありません。
今回の試験では、使用期間は28日間と短く、PDRN無配合の基剤との比較ではありません。
研究者自身も、真皮の厚みなどの早期変化には、保湿による一時的なふっくら感が含まれる可能性を挙げています。
「塗るPDRNにも可能性がある」と考える材料にはなりますが、この1報だけで「PDRNはすごく効く!」と言い切ることは難しいといえます。
ですが、同じ基剤に0.1%ずつ配合した条件で、複数の機器評価項目がレチノール側を上回った点は興味深いですね。
低分子シャクヤク由来PDRN(1%配合)による肌バリア機能の試験
植物由来のPDRNによる試験結果も報告されています。
低分子化したシャクヤク由来PDRNを1%配合したクリームの研究が2025年に報告されました[2]。
健常な韓国人10名が4週間使用したところ、目元の弾力が使用前より4.25%改善しました。
また、SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)で一時的にバリア機能を低下させた腕では、PDRN無配合のクリームと比較して、TEWL(経皮水分蒸散量)の回復が速かったと報告されています。
こちらの試験も、植物由来PDRNを塗布したヒトデータとして注目されますが、対象者は10名と非常に少なく、研究者全員が同原料の開発企業に所属しています。
「植物性のPDRNもすごい!!」というより、こんな結果も出ているんだな、ぐらいの受け止め方がいいでしょう。

購入時に失敗しない!PDRN化粧品を選ぶ4つのチェックポイント

PDRN配合をうたう化粧品が増え、配合量や原料の特徴を比較するのが難しくなっています。商品を選ぶ際は、次の点を確認してみましょう。
「サケ由来」か「非動物(植物)由来」かで選ぶ
これまでの研究の蓄積が多いのは、サケ・マス由来のPDRNです。
一方、植物由来や非動物由来のPDRNも、ヴィーガン・サステナブルといった点から注目されています。
ただし、「植物由来だから肌に浸透しやすい」「サケ由来より効果が高い」とは一律にいえません。
由来だけでなく、その原料自体にどのような試験データがあるかを確認しましょう。
「◯万ppm」「◯%」という配合量表示の罠に注意する
PDRN化粧品では、配合量がppmや%で大きく表示されていることがあります。
しかし、その数字が純粋なPDRNそのものの量なのか、PDRNを含む複合原料や原料溶液の配合量なのかは、商品によって異なる場合があります。
また、今回紹介した研究からも、PDRNは分子量や製剤設計によって働き方が変わる可能性が示されています。
数字が大きい商品ほど効果が高い、とは限りません。
原料単体ではなく「最終製品」の試験結果を確認する
原料メーカーが細胞試験をおこなっていても、実際の化粧品に少量配合したときに、同じ結果が得られるとは限りません。
可能であれば、完成した美容液やクリームそのものを使ったヒト試験があるか、PDRN無配合の製品と比較しているか、対象人数や使用期間は十分かを確認するとよいでしょう。
レチノールやナイアシンアミドなど「併用成分」を確認する
PDRN化粧品には、ヒアルロン酸、ナイアシンアミド、ペプチド、レチノール、パンテノールなど様々な成分が使用されていることが多いです。
使用後にうるおいやハリを感じても、PDRNだけでなく、これらの成分や基剤による効果が含まれている可能性があります。
敏感肌の方は、PDRNだけでなく、レチノール、香料など、自分に刺激となりやすい成分が入っていないかも確認してください。

魚アレルギーでも使える?PDRN化粧品の安全性と注意点

魚由来PDRNは、DNAを抽出・精製し、アレルギーの原因となり得るたんぱく質などを取り除いてつくられます。
そのため、「サケ由来=必ず魚アレルギーが起こる」というわけではありません。
しかし、化粧品原料の精製度や残存物の管理は製品によって異なる可能性があります。
重い魚アレルギーがある方は、サケ・マス由来かどうかを確認し、必要に応じて医師に相談してください。
非動物由来のPDRNを選ぶ方法もあります。
また、これまでの小規模な塗布試験では良好な忍容性が報告されていますが、長期間・多人数での安全性データはまだ十分ではありません。
初めて使用する化粧品は、腕の内側などで少量から試し、赤みやかゆみなどが出た場合は使用を中止しましょう。

PDRNは「魔法の成分」ではない!毎日の基本ケアと合わせて上手に活用しよう

現在の研究から考えると、PDRN化粧品に期待できる可能性があるのは、次のような変化です。
・肌にうるおいを与え、乾燥を防ぐ
・肌のキメを整える
・ハリやつやのある印象に導く
・乾燥などで乱れた肌を健やかに整える

一方、細胞の増殖、コラーゲン産生、抗炎症作用などについては、まだ細胞試験や皮膚モデルで示された結果が中心です。
化粧品を塗ることで、傷やニキビ跡が治る、深いシワやたるみが改善する、皮膚が「再生」するといった医療的な効果は期待できません。
もちろん、「塗るサーモン注射」「美容医療級」「一晩で若返る」といった変化も難しいでしょう。
研究は進みつつありますが、現時点では、PDRNは「肌再生を起こす魔法の成分」ではなく、毎日のケアで肌のうるおいやハリを支える可能性が研究されている成分、と考えるのが妥当です。

PDRNは期待の新成分。でも、化粧品は「整形級」でなくていい

PDRNは、毎日のスキンケアで肌のうるおいやハリ、バリア機能をサポートする期待の新成分です。
しかし、化粧品で傷跡が治ったり、劇的に肌が「再生」したりするような医療的効果(整形級の変化)が得られるわけではありません。
過度な誇大広告に惑わされず、ご自身の肌に合った製品を賢く選び、紫外線対策や十分な睡眠といった「基本のケア」と組み合わせて取り入れていきましょう。

参考文献
1.R Ye et al., Topical medium-length PDRN enhances dermal extracellular matrix repair in photodamaged skin via PI3K-Akt/TGF-β-regulated pathways. PLoS One. 2026 Jul 10;21(7).
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0350905

2.SU Bak et al., Anti-Aging Efficacy of Low-Molecular-Weight Polydeoxyribonucleotide Derived from Paeonia lactiflora. Int J Mol Sci. 2025 Dec 24;27(1):220.
https://doi.org/10.3390/ijms27010220

[執筆者]


船木 彩夏
化粧品メーカー研究員

[出演情報]
2023.12.2 TBSラジオ:井上貴博 土曜日の「あ」

<資格>
・サプリメントアドバイザー
・健康管理士上級指導員
・健康管理能力検定1級
・日本化粧品検定 特級コスメコンシェルジュ

[監修]キレイ研究室編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ