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「チップですか、1万円は多すぎます」制服のポケットにお札を入れて去ったお客様。数か月後に聞いた、その理由とは

  • 2026.8.29
「チップですか、1万円は多すぎます」制服のポケットにお札を入れて去ったお客様。数か月後に聞いた、その理由とは

制服のポケットに、何かを入れられた

ホテルのフロントで働いていたころの話です。何度か宿泊されている、顔なじみのお客様がいました。いつも一人で来られる、口数の少ない方でした。

私に話しかける言葉も、ほとんど決まっていました。

「おはよう」

「ありがとう」

それ以上の会話をした記憶は、ほとんどありません。

ある朝、その方がチェックアウトを済ませたあと、カウンターの端から私を呼びました。

近づくと、何も言わないまま、制服のポケットに何かをすっと差し込まれました。

驚いて取り出してみると、1万円札です。

「チップですか、1万円は多すぎます」

慌てて声をかけましたが、その方は小さく手を上げただけで、そのまま出口へ向かってしまいました。

私はすぐに責任者へ事情を話しました。金額も大きく、私個人が受け取ってよいものか判断できなかったからです。

相談した結果、次に宿泊されたときに確認できるよう、1万円は封筒に入れてホテル側で預かることになりました。

それからしばらく、その方の姿を見ることはありませんでした。

数か月後、ようやく分かった理由

何か月か経ったころ、その方が再びホテルへやって来ました。

手続きを終えたあと、私は預かっていた封筒を用意して声をかけました。

「以前いただいたものなんですが、やはり1万円は受け取れません」

すると、その方は封筒を見たまま少し黙り、いつもより長く話しました。

「いつも助かっているから。あなた一人じゃなくて、みなさんでお茶でも買ってください」

さらに、サービスを褒めていただきました。

私たちにとっては、引き継ぎながら続けていた日々の対応でした。

けれど、その方はきちんと覚えていてくれたのです。

「それなら、みんなでいただきます。ありがとうございます」

私がそう答えると、その方は小さくうなずきました。

「うん」

そして、いつものように部屋へ上がっていきました。

後日、休憩室にはその1万円で用意したお茶やお菓子が並びました。

あのとき返そうとしなければ、なぜ渡してくれたのか分からないままだったかもしれません。多くを話す方ではありませんでしたが、毎日の小さな対応を見てくれているお客様もいるのだと知った出来事でした。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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