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朝ドラ「風、薫る」爽やかな恋愛が展開!直美のモデルとなった女性も陸軍少佐と結婚していた…

  • 2026.8.17

朝ドラ「風、薫る」爽やかな恋愛が展開!直美のモデルとなった女性も陸軍少佐と結婚していた…

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。近代看護界の先駆者となった2人の女性を主役とする物語。「風、薫る」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ! ※ネタバレにご注意ください

恋愛ドラマとして爽やかで好感のもてる展開に

『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる著・中央公論新社)を原案とし、激動の明治時代を駆け抜けた二人のナースを、見上愛・上坂樹里のダブル主人公として描くNHK連続テレビ小説「風、薫る」の第20週「家族のかたち」が放送された。

二人の主人公のトレインドナースとしての奮戦ぶりは思っていたよりも少ないと感じる視聴者も一定数いるようで、また看護と関係ない展開だという感想も時折垣間見えることもあるが、毎週5話で半年という長期間のストーリーを紡いでいくにはいろいろな要素を盛り込んでドラマ性を高めていくのはひとつの正攻法ではある。

そうしてきたなか作品も20週目に突入しいよいよ残り1カ月半ほど、後半戦に突入といったところだ。前半から描かれてきた二人の主人公をめぐる男性たちの存在も、この作品にある種の幅をもたらせる要素である。

そんななか、直美(上坂樹里)の人生に大きな転機が訪れた。

「直美さんのことが好きです」
かねて直美に思いを寄せていた陸軍軍曹の吾郎(甲斐翔真)はそう告白し、直美にプロポーズする。直美もまた吾郎に好意を抱いていたが、すぐに返事をすることができない。

そう、直美にとって、りん(見上愛)という生涯のバディ、そしてその娘である環(英茉)などと築いてきた「家族」といえる存在は、孤児として育ち、実の母を探し続けてきた直美にとって、かけがえのない存在だからである。

りんたちは、そんな直美にとってこれまで得ることのできなかった「幸せ」をもたらせてくれた存在だった。それ以上の幸せを個人で望むことでそれを失ってしまうのではないかという怖さを感じていた。しかし、直美の最も良き理解者であるりんは、直美に言う。
「お嫁に行ったって、家族なのは変わらないよ」

結婚、女性がそのパートナーの家に「嫁ぐ」ということは、これまでの家族を捨てるようなものだという考え方は、日本の社会に長く根ざしていた考え方だった。明治時代を舞台にするこの作品の時代は言うまでもなくそういった考え方が当たり前、本人たちの意志よりも、家と家の結びつきが重視されるような時代だったはずだ。そんな当時において、りんの言葉は、きわめて現代的な感覚だといえる。

結婚とは家を捨てるものではない。環の二人目のお母さんと言われ、りんの母の美津(水野美紀)も直美にとっての母だと言われるなど、なかば「実家」の家族のようなりんたちは、いつでも戻ってこれるあたたかな存在なのである。直美は幸せになっていい。その思いに押され、直美はプロポーズを受け入れる決心をした。

さて後日。待ち合わせ場所になかなか吾郎は現れない。吾郎は脚を骨折しており、松葉杖をついて現れたのだ。心配する直美に、じっとしていたら会えないしと返す吾郎に、直美は言った。
「胸が、喉がキュッとして……だって、好きなんです」
と自分の素直な気持ちを口にする。そして、こう続けた。
「ずっと一緒に。私と、家族になってくれますか?」

あの日すぐ返すことができなかったプロポーズの返事、むしろ逆プロポーズである。
「幸せになります」
吾郎は周囲の祝福の声にそうこたえた。恋愛ドラマとしてとても爽やかで好感のもてる展開である。

対照的な二人の主人公

「風、薫る」の恋愛ドラマとしての側面は、これまでにも手厚く描かれてきた。直美はこれまでにも、詐欺師でありながらも直美の母親の情報集めなどに奔走してくれた寛太(藤原季節)や帝都医大病院の助教授・藤田(坂口涼太郎)など、複数の男性に好意を抱かれてきた。そんななかでも言葉は悪いが「平凡な」吾郎を最終的に選んだところが直美らしいというか、印象に残る部分である。

直美のモチーフとなった鈴木雅さんは、孤児ではなく旧幕府の武士の娘であり、陸軍少佐と結婚し二人の子供を産んだあと、夫が赴任先の仙台で亡くなったあとから看護婦となったところがドラマと大きく異なる点だ。「もし自分に看護の知識があったら」という思いが看護を志すきっかけになったという記録もあり、入学した養成所でりんのモデルとなった大関和と出会うこととなる。史実からは大きくアレンジされた部分ではあるが、一編の人間ドラマに厚みをもたせる翻案といっていいのではないだろうか。

いっぽうのりんも、記者の横沢(井上祐貴)がりんに結婚を申し込む。りんの恋愛模様といえば、なんといってもずっとりんを見守り続けたシマケン(佐野晶哉)の存在が気になるところだ。シマケンは働いてはいるものの、どこまでも夢追人のような空気を持ち続けるようなキャラクターだ。いいひとであることは間違いないが、一緒に生活するという現実を考えたときに、少し不安もよぎる、そんな存在である。横沢はといえば、地位など申し分なく、安定した存在だ。当の横沢も、自分のほうがりんをシマケンよりも幸せにできる、家族こと養えるとシマケン本人に宣言するほどである。

横沢がりんにひかれたのは、新潟で病人たちを看護するりんの強さである。しかしシマケンは、そのときのりんは、不安や怖さを抱えながら働いていたはずだと言う。本質を見ているのは、やはりシマケンということなのだろう。二人のやりとりが少し離れたところから見えたりんは、シマケンのその思いに打たれ、自分の思いにも向き合う。

雨が降る。りんは、雨に濡れるシマケンに傘をさしかけた。それがりんの答えである。ハッキリとした言葉と態度で見せる直美と対照的な思いの伝え方はとてもりんらしい。この二人の主人公のコントラストはこれまで20週にわたり丁寧に描かれてきたからこそ自然と受け入れられる。

りんと直美、二人の主人公は、これまで通り心を通わせ合いながら、それぞれ新しい家族を築いていく。家族の絆、そして家族というかたちも描き続けてきたこのドラマがこの先後半で描きだしていくものは何なのか。期待がふくらむ。

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