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【adieu/上白石萌歌】「好きなものを思い浮かべていけば、自然と自分が見えてくると思うんです」

  • 2026.8.9

「自分が好きなものを信じる力が、自分を知るきっかけになると思う」

──adieuとして活動を始めて10年。この節目にリリースされた新曲『Wanna me』を受け取ったとき、どんな印象を持ちましたか?

「柴田聡子さんに楽曲を書いていただくのは今回で4作目なんですが、これまでとはまた違う質感を感じました。柴田さんの紡ぐ音の世界は、これまで自分の半径から近いもの、生活の中の心の機微を感じることが多かったんです。でも今回は、アニメ『本好きの下剋上』に寄り添う形で、少し視点を引いた、とても壮大な曲だと感じました。なんて言うんでしょう、抽象的ですけど、まるで空の上から、世界のいろんな事象を見つめているような感覚があったんです。普段のadieuよりもっとズームアウトした俯瞰の世界、主観というよりかは遠くから見つめているような感覚がありました。

この作品自体、主人公・ローゼマインが本を通して文化や教育を動かしていくという壮大な物語だからこそ、『こんなadieuもあるんだ』と思えるような、新しい一曲になったと思います」

──特に心を動かされた歌詞を教えてください。

「サビの、“誰かが私を知る前に、私は私を知っている”というフレーズが、とても好きです。このフレーズには、自分が自分であるためにどうしたらいいかという、強い意志を感じるんです。タイトルからも思うことですが、自分が自分であるための意志がある。この“私”という主語は、今の自分だけでなく、過去の自分が作ってきた道、そして今の自分が未来に影響を与える自分、といういろんな軸の私がいると感じるんです。その中で、私が私の中で大切にしているものをどう守っていくか、というテーマがこの曲の根底にあるのかなと思いました。adieuとしても、気がつけば10年という月日を一緒に駆け抜けてきて、adieuの道のりを自分の中でも知っているし、これからどうなっていきたいかと思いを馳せる部分がありますね」

──今回の新曲『Wanna me』を通じて、どのような気持ちを届けたいですか?

「この曲には、自分が好きなものを大事にしていけば、自分を信じていけるというメッセージをすごく込められています。自分がどういう人かという自問自答って、ずっと続くものだと思っていますし、私自身、自分というものがなんなのか全然わからないです。でも、自分というものは、自分が好きなもの、関わる人たち、信じているもので構成されている気もしていて。アニメの主人公・ローゼマインも、本が好きすぎて本が希少な世界で一から本をつくるという好きなものを貫く力があるのですが、自分のことを知ろうとするとき、好きなことを一個一個思い浮かべていけば、自然と自分が見えてくると思うんですよね。この曲が、皆さんにとって自分と向き合うきっかけになってもらえたらうれしいです」

「adieuイコール上白石萌歌ではなく、曖昧なままでいいのかなって」

──上白石萌歌さんとadieuさん、二つの名義を持つことについて、どのように捉えていますか?

「そもそも自分がもう一つ名義を持つと思っていなかったし、いまだに『adieuってなんだ?』と思っている方もたくさんいらっしゃると思うんですけど(笑)、アルバムを出すたびに『adieuってこういうところがあるんだな』という実感は、自分の中でもどんどん湧いてきました。私は、adieuイコール上白石萌歌にならなくてもいい、そこがノットイコールでもいいという、境界線が曖昧な形がadieuらしいなと思ったりもしています」

──歌うことと演じること、それぞれの表現活動において、どのような違いを感じますか?

「どちらも近しいものはすごくあって。歌も一曲一曲に主人公がいて、その主人公にどう寄り添い、どう心を与えていけばいいのかを考えます。ただ、演じるときは自分にない要素を手繰り寄せて想像し、その人の気持ちを考えていくのに対し、歌は自分の中にもともとあったものを引き出される感覚が強いです。そういった意味では、歌は自分自身にすごく近い、生身の自分で歌っているという感覚があります。役という鎧をまとわず、自分の“まんま”で戦うような緊張感がある。見透かされている感じがするというか、自分が表現することによって『こういう人なんだな』と思われる緊張感がある。だからこそ、とても居心地がいい素の空間でもあり、同時にとても背筋が伸びるなと思っています」

──adieuさんが「自分ってなんだろう?」と迷ったとき、どのように自分と向き合っていますか?

「あるアーティストの方がやっていたのを見て始めたのですが、好きな音楽のジャケットやキャラクター、色合いなどを印刷してノートに貼っています。部屋を見渡しても、自分が好きなものって視覚的に見えたりするので、それを集めると『私はこういう世界観の中にいたいんだな』というのがわかってくる。コラージュ療法というものがあるらしいのですが、自分を知る方法として楽しんでいますね。

あと、日記も10年以上続けています。何か特別なことを書くというより、その日の出来事や感じたことを書き留めるだけなのですが、最近は『3年日記』を書いていて、1ページに同じ日付の3年分が並ぶので、1年前の自分が何をしていたか、どんなことで悩んでいたかが一目でわかるんです。3行くらいなので手間にもならない。たまに1ヵ月分くらい溜めて書くこともありますが(笑)、意外と書けるものですよ。10代の頃の日記を読むと、当時の劣等感や悩みが明確に思い出せて、ここはクリアできたな、成長できたかも、と思えるんです。アナログな方法で自分のことを知っていく時間は、私にとってすごく大事です」

adieu/上白石萌歌(あでゅー/かみしらいしもか)

PROFILE

2000年2月28日生まれ。鹿児島県出身。2011年、第7回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞し、デビュー。2019年、映画『羊と鋼の森』で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。2017年、映画『ナラタージュ』の同名主題歌でデビュー。19年に正体を明かし、本格始動。以降、Yaffle、小袋成彬、カネコアヤノ、君島大空ら豪華な作家陣が参加する作品が続き、『よるのあと』はロングヒットを記録。2026年4月にアルバム『adieu 5』をリリース。俳優としては、『デンジャラス』(NHK)が2027年1月より放送予定。

『Wanna me』

adieuは、さまざまなクリエーターを巻き込み上白石萌歌が表現する音楽プロジェクト。シンガーソングライター柴田聡子による作詞・作曲。孤独や弱さを抱えつつも、自分を信じて奮闘し、仲間と絆を育んでいくローゼマイン。そんな彼女の内外にある心強さを、自分らしさを歌い手のadieuが語り部のように寄り添い、 聴く人すべての心に響くよう描いた楽曲となっている。TVアニメ『本好きの下剋上領主の養女』の第2クールEDテーマ。

衣装:ネックレス¥33000、バングル¥77000/スピック&スパン ルミネ有楽町店(SAMH by LILA/03-5222-1744) その他スタイリスト私物

撮影/井澤和己 ヘアメイク/根本亜沙美 スタイリスト/山王丸久美子 構成・取材・文/高橋夏実(Spacy72)

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