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「ほら、ちゃんと座ろうね」旅館で不安そうな表情をしている子供。だが、仲居さんの対応で心温まった瞬間

  • 2026.8.7

家族旅行の夕食、隣に座った子連れ家族

家族でのんびり過ごせる温泉旅行が、私のいちばんの楽しみだった。

その日泊まった宿は、通された部屋の窓から山あいの景色が一望できる、静かで気持ちのいい旅館だった。

荷ほどきもそこそこに、私たちは窓辺で写真を撮り、夕食までのあいだに温泉へ浸かって旅の疲れをほどいた。

湯上がりの火照った頬のまま向かった食事会場は、出汁のいい香りに満ちていた。

広間にずらりと並んだお膳を前にすると、それだけで旅に来たのだと胸が弾んだ。

席に着いてほどなく、すぐ隣に小さな男の子を連れた家族が案内されてきた。

三、四歳くらいだろうか。

慣れない場所と大人ばかりの空間に緊張しているのか、椅子にも座らず、お母さんの後ろに隠れるようにしてもじもじしている。

「ほら、ちゃんと座ろうね」

お母さんが困ったように声をかけても、男の子はますます身を縮めてしまう。

ご両親の表情に、少しだけ申し訳なさそうな影がよぎったのが分かった。

仲居さんがかけた、やわらかな一言

そこへ、料理を運んできた仲居さんが、そっと膝を折って男の子と目線を合わせた。

「椅子もお食事も、ご用意します」

そう言うと、仲居さんは子ども用の椅子を運び、小さな手でも持ちやすいお皿を並べていく。

急かす様子はまるでなく、その手つきはどこまでも穏やかだった。

「今日はゆっくり、旅行を楽しんでくださいね」

にっこり笑ってそう声をかけられ、男の子の強張っていた肩から、ふっと力が抜けたのが見えた。

お母さんも、ほっとしたように目元をゆるめている。

「ありがとうございます、助かります」

「とんでもない。お子さまのペースで大丈夫ですからね」

その光景を、私は隣の席から見るともなしに眺めていた。

ただ料理を運ぶだけではない。お客さんが安心して食卓につけるように、さりげなく気を配っている。

仕事だから、と割り切ればそこまでしなくてもいいはずのことを、その仲居さんはごく当たり前のようにやってのけていた。

そのことが伝わってきて、なんだか私の胸まで温かくなっていた。

気づけば隣の男の子は、小さな椅子にちょこんと座り、嬉しそうにお箸を握って、お母さんに何かを話しかけている。

さっきまでの緊張した表情は、もうどこにもなかった。

帰りの朝、玄関で見送ってくれた宿の方々は、一組ずつ丁寧に頭を下げてくれた。あの仲居さんも、私たちに気持ちのいい笑顔を向けてくれる。

「またお待ちしております」

その一言に、私は迷わず「また来ます」と返していた。旅先で出会った人のやさしさが、この旅を特別なものにしてくれたのだと思う。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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