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【ゾッとする怖い話「バラバラになっちゃったもんね」えらく楽しそうな声でした。【ホラー小説】

  • 2026.7.22
手すりで仕切られた、コンクリート造りの地下通路
出典:stock.adobe.com

「吉田渉くん、欠席ですか?」 誰もいない夕暮れの道で、突如として響いた不可解な声。 それは、昨日私が拾った名札に書かれていた少年の名前でした。

いつもの帰り道

結婚した当時から、いい場所に家建てたねって言われましたし、自分でもそう思ってきました。

ほどほどに田舎で、保育園も学校も近所にあって、スーパーも徒歩圏内。

とくに恩恵にあずかったのは、やはり子どもが小さい頃でしたが、今も小学生がじゃれながら下校しているのに行き合うと嬉しかったりします。
いい場所に家を建てたなと思ってますよ。

ある日の夕方、スーパーで買い物をして帰る途中、道に何かが落ちているのに気づいたんです。

近づいてみると、子どもの名札でした。
近所の小学校の校章が入っていて、名前のところには、「四年二組 吉田 渉」と書いてありました。

後で探しに来るかもしれない。
そう思った私は、名札を道の端にそっと寄せました。

「四年二組 吉田 渉」

次の日も買い物帰りに同じ道を通りました。

ふと昨日の名札のことを思い出して探してみましたが、もう道の上には見当たりません。

よかった、ちゃんと探しに来たんだ。
安心して、そのまま通り過ぎようとした時です。

「吉田渉くん」

思わず足が止まりました。
昨日拾った名札に書いてあった名前です。

「吉田渉くん、欠席ですか?」

教室で朝の出席を取る時の、先生の声。
きょろきょろと周りを見回しますが、誰もいません。

「吉田渉くん」

もう一度、名前が呼ばれました。

「あっ、そうか」

ふふ、と小さく笑いました。
不気味な笑い方でした。

「もう、学校来れないもんね」

「バラバラになっちゃったもんね」
「手も足もとれちゃって」
「トラックに潰されちゃった」

内容に反して、えらく楽しそうな声でした。

瑕疵

「お母さん、どうしたの?」

後ろから声をかけられて我に返りました。
振り向くと、娘が心配そうな顔で立っていました。

「……おかえり、今日晩ごはん家で食べるの?」
「うん、バイトないから。買い物行ってたん?」

私の手から買い物袋を引き受けてくれる娘を、なんとなくじっと見てしまいます。

「ねえ、あんたの通ってた小学校でさ、子どもが事故にあったりとか、あったっけ?」
「ええ?知らない。お母さんがわかんないなら私もわかんないよ」

吉田渉って子、知らない?
喉から出かけた言葉を押しとどめて、「そっか」と頷きました。

そう、そんな事故聞いたこともありません。
じゃあ、あれはなんだったんでしょう?

なんとなく誰にも聞く気にならなくて、それっきりです。

もう言われることもないかもしれませんが、いい場所に家建てたねって言われても、もう素直に頷けなくなったなと思います。

※この物語はフィクションです。
※この記事に使用している画像はイメージです。

◆味醂 子どもの頃から怖い話が好きで、ホラー小説やネット怪談など、文章作品を中心に親しんできました。 映像作品の痛そうな表現や急に驚かせる演出は少し苦手ですが、想像がふくらむ怖さや、日常の違和感が少しずつ不穏さを増していくような話に惹かれます。 読んだあとふとした瞬間に思い出してしまうような“あとから効いてくる怖さ”を大切にしています。 【SNS】 X:@a_mirin0223

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