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タレント・歌人のカン・ハンナさんの1か月連載コラムが始まります。初回は、「春秋に富む。日本の美しいことば」について。

  • 2026.7.10

今から15年前、私は日本語を一言も喋れないまま韓国から日本に来ました。その当時は生きるための言語を独学で習得するのに精一杯で、日本語の美しさに目を向けることができませんでしたが、それでも日本語が発する音の響きやリズムが好きでした。それ以降、運命のように導かれ、日本の伝統文学である短歌と出逢い、気がつけば日本語で歌を詠む歌人の人生を送っているのです。今回の連載企画では、「生きるための日本語」を超え、美しい日本語と触れ合う日々のなかで出合った「日本の美しいことばについて」いくつかご紹介できればと思います。

出典 andpremium.jp

私は時々古本屋さんに行って何十年、何百年前の歌集や小説を見つけるのが趣味です。伝統文学を研究する者ではないのですが、ことばはそれぞれの時代を映していて、今の時代に活かしてみることでよりロマンチックなイメージに変わることばもあると感じます。石川啄木の小説『菊池君』(1908年発表)で出合った「春秋に富む」ということばがその一つでした。

小説の第二章における「今の若い者は、春秋に富んで居る癖に」から始まる一節。「若い」というストレートなことばではなく、「春秋に富む」という表現にすることで作者の想いがもっと伝わる気がします。確かに私自身も歳を重ねることにより、若い方をみて若いから羨ましいのではなく、「これからの人生に春と秋が豊富に待っている」ことがいかに素晴らしいことなのかを痛感しているからこそこのことばの意味が心に染みます。

ところで、日本語は韓国語や英語に比べると遠回しな表現が多い言語かと思います。ストレートな表現は相手に伝わりやすい魅力があるとは思いますが、遠回しな表現のなかには言葉のロマンがある。「年を重ねる」という言葉が日本では「歳月を紡ぐ」という言葉になることにも胸キュンする私がいます。

タレント・歌人 カン・ハンナ

出典 andpremium.jp

韓国出身。大学在学中にテレビ番組に出演し、以降キャスターとして活躍。2011年に来日し、タレント活動のかたわら短歌に出合い、創作活動を続ける。’16年から3年連続で角川短歌賞に入選。’19年に出版した第一歌集『まだまだです』(KADOKAWA)で歌人デビューを果たした。’21年3月には、歌壇に新風をもたらす歌人を表彰する「第21回現代短歌新人賞」を受賞。新刊としては、’26年3月にエッセイ歌集『カジョクのうた 韓国から来て、日本で暮らす私が見つけた家族の形』(KADOKAWA)を出版。また、国際社会文化学者として教壇に立ちつつ、株式会社Beauty Thinkerを立ち上げ、2020年11月より100%ヴィーガンコスメブランド〈mirari〉を創設および統括ディレクションを行うなど、多方面で活躍している。

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