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都内で味わう「体験するホテル」とは? 実在するホテルを巡りながら新たな楽しみ方を提案! 至福のおひとりさまストーリーの最新作【書評】

  • 2026.7.9

【漫画】本編を読む

『おひとりさまホテル』(まろ:原案、マキヒロチ:漫画/新潮社)は、現実に存在するホテルにひとりで泊まり、その楽しさや豊かさを描いた新感覚の漫画である。誰かと予定を合わせなくてもいい。観光地を詰め込まなくてもいい。ただ、自分のためだけにホテルで時間を過ごす。そんな贅沢を、驚くほど魅力的に見せてくれる。

主人公・塩川史香は、設計会社に勤める会社員。彼女にとってホテルは単なる宿泊施設ではない。仕事や人間関係から少し距離を置き、「自分を整える場所」だ。きれいなラウンジでぼんやりしたり、ルームサービスを楽しんだり、窓の外の景色を眺めながら夜を過ごしたりと、誰にも邪魔されない時間の中で、少しずつ心がほどけていく姿が描かれている。

もちろんホテルの魅力はたっぷりと描かれているが、本作の中心にあるのは「どう過ごすか」である。同じホテルでも、SPAを満喫する人、部屋にこもって映画を観る人、アートを楽しむ人、ただ静けさに浸る人。ホテルでの過ごし方にはその人自身の価値観や人生観がにじみ出る。読んでいるうちに、「自分ならどう過ごすだろう」と想像することだろう。

そして9巻では、その「おひとりさま時間」の幅がさらに広がりを見せる。舞台となるのは東京都内の個性的なホテル群。再開発が進む若者の街「下北沢」で温泉を楽しめるところをはじめとして、それぞれ異なるテーマを持つホテルが登場する。「泊まる場所」としてではなく、「体験する空間」として紹介しているのが印象的である。

誰かに合わせるのではなく自分の「好き」を最優先する。ひとりだからこそ自分の気分や感情に素直になれる。本作は、ホテルという非日常を通して、忙しい現代人に「ひとり時間」の贅沢さと大切さを教えてくれるのだ。読み終えたあとは「自分もホテルに泊まりたい」と思うだけでなく、「ちゃんと自分を休ませたい」という気持ちになっているはずだ。

文=富野安彦

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