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【ニューオープン連載】亀戸で遭遇! スペインでも稀な郷土の味「ロサ アスール」

  • 2026.7.9
Jun Hasegawa

絶えずアップデートを重ねる東京のレストランシーンの“現在地”を切り取る本連載。前回のホテルダイニングに次いで、今回、2人がスポットを当てたのは「スペイン料理」。日本の旬の恵みとスペインの伝統技法を掛け合わせたレストランから、カウンターに色鮮やかなピンチョスが並ぶ本場さながらのバル、そしてマドリッドの郷土料理に特化した最旬の注目店まで。独自のこだわりと個性を放つ、今こそ訪れるべき3つの実力派をご紹介。

3件目は亀戸に誕生した「ロサ アスール」。マドリッドの煮込みを看板料理に据えた、若き料理人が腕を振るうお店とは?

Photo : JUN HASEGAWA Editor : SATOKO UDA

Jun Hasegawa

スペインの伝統料理の軸を守りつつ、自分らしいエッセンスを

マドリッドの伝統的な煮込み料理が食べられる店がある、と聞いて降り立ったのは江東区の亀戸駅。アジア各国の飲食店が立ち並ぶ異国情緒あふれる路地裏を闊歩しながら、目指すは昨年8月にオープンしたスペイン料理「ROSA AZUL(ロサ アス―ル)」だ。青がテーマカラーの店内に入ると(店名はスペイン語で青のバラ)、カウンター6席と、テーブル席1つ(2席)のコンパクトな店内。定番メニューは、冷温の前菜11品、メイン4品、デザート2品に、黒板に書かれた本日のおすすめが4品ほど。メインの煮込み料理「牛タンのレボサダ」は外せなかったので、前菜は軽やかにと、本日のおすすめから「オレンジサラダ」と「アユのナバーラ風」をオーダー。

「オレンジサラダ」(¥1,400)は瑞々しいオレンジに塩気の効いたアンチョビ、ツナと赤玉ねぎのピクルス、ベビーリーフを合わせた一品。フルーティなオレンジを主役におきつつ、酸味や甘味、うま味、塩味のバランスが考えられた一品だ。

「アユのナバーラ風」(¥1,600)はバスク地方ナバーラ州の伝統料理をベースに、本来はニジマスを使うところを鮎をフリットにし、スペインの生ハム、ハモンセラーノとにんにく、シェリービネガーのドレッシングで。

「調理法は伝統的なスペイン料理からブレないようにしていますが、食材は日本の季節のものを使うことも多いです。鮎など季節の食材は喜ぶ方が多いので」と店主の二階堂拓麻さん。

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ある料理人との出会いが、スペイン料理へと傾倒するきっかけに

二階堂さんがスペイン料理を生業にしようと思ったきっかけは、“師匠”と呼ぶ料理人との出会いだった。調理の専門学校を卒業後、都内のレストランに就職。その厨房で、スペインでの修業から戻ったばかりの宮崎健太さんと出会い、2012年に宮崎さんが代官山のスペイン料理店「サル イ アモール」をオープンした時に、二階堂さんもオープニングスタッフとして働くことに。「サル イ アモール」といえば、今では都内に系列店が5つもある、東京を代表するスペイン料理店だ。

「宮崎さんは現地でも忘れられているようなスペインの伝統料理に精通していて、いろんな料理を教えてもらいましたが、衝撃的だったのは煮込みの作り方。“カジョス”というモツ煮込みがあるのですが、通常モツを料理に使うときは、強烈な臭みを取るために何度も煮こぼすんですね。でも宮崎さんから教えてもらった調理法では、そのモツの臭みをとるのではなくその煮汁を生かすんです」。

モツの煮汁というと、かなり強烈なのでは?

「はい。煮ているときは相当きついと感じる料理人も多いでしょうね(笑)。でもその強烈な匂いが、にんにくやソフリット(玉ねぎやトマト、にんにくベースのペースト)、ハモンセラーノやソーセージといったほかの強い食材と一緒に煮込むことで、より深い味わいになるんです。初めて食べたとき、あまりのおいしさにびっくりしました」と二階堂さん。

「サル イ アモール」在籍時には、マドリードやバルセロナ、セビリアに研修旅行に赴き、現地のレストランで働き、空き時間には伝統料理を食べ歩いた。

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煮込み料理は仕込みの丁寧さで味に差が出る

「サル イ アモール」を退社後に独立して店を構えるも、わずか半年でコロナ禍の直撃を受け、やむなく閉店。

「ロサ アス―ル」は、まさにその苦境からの復活をかけた再挑戦といえる。オープン前に再びスペインに渡り、マドリードでカジョスを始めとする煮込みを食べ、研究した。「煮込みって仕込み方によっておいしい、おいしくないが明確に表れる料理なんです」

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看板料理「牛タンのレボサダ」(¥3,600)は、水から皮付きの牛タンを3時間ゆで、皮を丁寧にはがしてソフリットやハモンセラーノなどと一緒にさらに5時間煮込むという手間のかかりよう。この丁寧な下処理が味の決め手になる。

厚めに切ったら小麦粉と溶き卵をつけてふんわり揚げ、煮汁とフォンドボー、ソフリットで仕上げたソースを添える。牛タンはフォークでほろほろと肉がくずれるほどやわらかで、揚げてあるのでどっしりと重めかと思いきや、ドライトマトを加えたソースがフルーティでぺろりと食べられてしまう。

下に敷いてある、焼き付けたえのきだけの付け合わせもソースと好相性だ。合わせたのはリオハのテンプラニーリョの赤ワインだが、シェリーでも合いそう。

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夏以外はスペイン各地の煮込み料理のオンパレード!?

「夏以外は煮込み料理がメニューに増えます。全部煮込み料理にしたいぐらいなんですけどね(笑)」と二階堂さんがいうように、秋以降はチリンドロン(肉、玉ねぎ、トマト、ピーマンなどの炒め煮)やペピトリア(ゆでた卵の卵黄とアーモンドでつくる肉の煮込み)、カルデレータ(レバーペーストを加える牛肉の煮込み)などなど、スペイン各地方の煮込みが登場する。

なかでも前述のカジョスは毎回5キロ分仕込んでもすぐになくなるほどの人気メニュー。「亀戸はモツ焼き店が多いので、モツに対して抵抗がないんでしょうね。僕自身もまさかカジョスがこんなに人気がでると思いませんでした」と二階堂さん。

私自身、15年前にバルセロナのサンジュセップ市場のバルでカジョスを食べて、そのおいしさに悶絶して以来、私史上2大偏愛モツ煮の1つとなっている(もうひとつはメキシコのメヌード)。ハチノス(牛の第二胃袋)に豚足、チョリソ、モルシージャ(豚の血入りソーセージ)、ハモンセラーノ、ピメントン(燻製パプリカパウダー)や唐辛子などのスパイス、白ワインなどで煮込んだもので、シチューのようなソースにスパイスの複雑な香りとうま味がぎっしり詰まっており、プルプル食感のハチノスと共にワインが止まらなくなる一品だ。

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食後の締めもお酒が進む

食後には「マンチェゴチーズと花梨のジャム」(¥800)を。ジャムと言っても、メンブリージョと呼ばれる、西洋花梨(マルメロ)を砂糖やレモン汁と煮詰めて作る羊羹のような形状のもの。凝縮した果実の甘味と、塩味の利いたマンチェゴチーズとの組み合わせを前にしたら、追加のシェリーのグラスを頼むのは必然。

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「ロサ アス―ル」は27時まで営業しており、21時以降はスペインの酒場のようにワインを酌み交わす、地元の仕事終わりの客や飲食店の人たちで賑わうそう。そんな地元の人たちに交じって、煮込み愛にあふれる二階堂さんの料理を食べに、亀戸へ足を運ぶ頻度が増えるのは間違いない。


ROSA AZUL(ロサ アス―ル)

住所/東京都江東区亀戸5-13-9
営業時間/18:00~27:00
定休日/木曜
Instagram/@rosa.azul20257

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