1. トップ
  2. ファッション
  3. 経年変化=劣化ではない。服と付き合ってきた時間が可視化される「味出し」の魅力

経年変化=劣化ではない。服と付き合ってきた時間が可視化される「味出し」の魅力

  • 2026.7.10

いつも自分のワードローブには長く愛着の持てるアイテムを加えていきたいと思っているが。一方でその選択肢は常にアップデートしていたい。2026年春夏シーズンに大切にしたいのは、“WELL−MADE”(作りの良い)なアイテムを見つける視点である。ここでは「味出し」をキーワードに、一歩先行くマスターピースをご紹介します。

photo: Yoshio Kato / edit: Keiichiro Miyata

1950sのスタッズベルト、1920sのレザージャケット、〈オールデン〉のVチップシューズ、〈チャンピオン〉の1970s のTシャツ、1940sのダブルガゼットスエットシャツ、1950sのハーフジップスエットシャツ、〈エル・エル・ビーン〉の1930sのレザーボストンバッグ
BRUTUS

経年変化=劣化ではない。服と過ごした時間が可視化されたものだ。ここで挙げる7つの変化は総称して「味出し」と呼ばれ、素材の表情を作るものとして親しまれてきた。文化の伝承を掲げる〈サンタセッ〉の主宰、大貫達正さんの愛用品に触れると、その価値観はより鮮明になる。

「体形や生活の癖が服に浮かび上がるように、糸がほつれ、色褪(あ)せる様子は、関係が深まっていく感覚です。素材や染料は“天然”であるほど、こうした変化を育ててくれます」そうやって長く着込まれたワードローブは、デザインや流行とは別の軸で存在感を放っている。中でも象徴的なのがデニムパンツだ。

「本来、色が抜けて白くなるのは生地が弱り、破れる前兆でした。しかし現代では、デニムを楽しむ美意識へと転じています。ステッチや当て布といった補強は、新たな“時間の層”を重ね、服との時間を延命することで個体差はさらに際立ち、魅力と愛着は静かに深まっていきます」

穴・破れ

摩耗により糸が痩せほつれることで生地がすり切れ、さらに使うと穴が開く。その生地の傷みが服の表情となり、またリペアすることで唯一無二のものへと進化していく。

〈リーバイス®〉の1950sデニムジャケット
継ぎ当てされた1920sシャツ、袖をカットした〈リーバイスⓇ〉の1950sデニムジャケット、1970s“ビーン・トート”。

色落ち

紫外線による“日焼け”、洗濯、日常生活での摩擦により、糸に付着した染料が抜け、配色が和らいだ状態。新品にはない曖昧なトーンやムラが現れ、色の奥行きが生まれる。

〈チャンピオン〉の1970s のTシャツ、1940sのダブルガゼットスエットシャツ、1950sのハーフジップスエットシャツ、〈エル・エル・ビーン〉の1930sのレザーボストンバッグ
〈チャンピオン〉の1970sのTシャツ、1940sのダブルガゼットスエットシャツ、1950sのハーフジップスエットシャツ、〈エル・エル・ビーン〉の1930sのレザーボストンバッグ。

硫化

シルバーが空気中の硫黄成分と反応し、黒ずみや深い陰影が生まれた状態。凹凸が強調され、模様が浮き立つ。磨くことで光を取り戻す“往復運動”も含めて味になる。

1900s~50sのインディアンジュエリー
1900s〜50sのインディアンジュエリー、タイプライターのキーをカスタムしたヴィンテージブレスレット、銀貨と金貨でできたブレスレットなど。

しわ・キズ

関節の曲げ伸ばしにより刻まれるしわ、擦過(さっか)で入る細かなキズ。革製品には使い手の動作や癖が刻印される。手の脂やクリームで色の濃淡が生まれ、磨くと艶が増す。

1950sのスタッズベルト、1920sのレザージャケット、〈オールデン〉のVチップシューズ
1950sのスタッズベルト、1920sのレザージャケット、〈オールデン〉のVチップシューズ《ウイスキーコードヴァン》。

毛羽立ち・起毛感

繰り返しの洗濯や日常生活での摩擦により、繊維が立ち、柔らかく空気を含んだ表情に変わる。また生地の均一感が崩れ、体の凹凸や動きの癖に合わせて馴染んでいく。

1920sのフランネルシャツ、1960sのキャップ、1950sの虎柄ハンチング
1920sのフランネルシャツ、アメリカ海軍の艦艇U.S.S. Wabashのクルーが着用した1960sのキャップ。1950sの虎柄ハンチング。

あたり

縫い目、折り目、可動部に生まれるかすれの濃淡。人それぞれの癖も刻まれる。代表的なのがデニム。股周りの“ヒゲ”、膝裏の“ハチノス”は、服の美点となっている。

〈コールマインギャランティード〉のデニムパンツ
愛用歴3年。3日に1度のペースで穿く〈コールマインギャランティード〉のデニムパンツ。

かすれ

プリントのインクが割れ、薄れ、版の輪郭が滲(にじ)む。主張が和らぎ、図像が生地に馴染んでいく。結果として、強かったメッセージが“余韻”へ変わる瞬間でもある。

1950sのメモリアルパンツ、1950sのハンティングジャケット
1950sのメモリアルパンツ。狩猟のグループ名が描かれた1950sのハンティングジャケット。

profile

大貫達正(〈サンタセッ〉主宰)

おおぬき・たっせい/1980年茨城県生まれ。古着店のバイヤーを経て、2008年独立。21年、自身の名前を冠したショップ〈サンタセッギャレリー〉をオープン。〈ウエストオーバーオールズ〉ほか、複数のブランドのデザインを手がける。

元記事で読む
の記事をもっとみる