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そりゃ「結婚離れ」が加速するわ…東大の追跡調査で未婚9000人の"相手の条件"を分析して見えた残酷な事実

  • 2026.6.29

生涯未婚率は上昇を続けている。拓殖大学教授の佐藤一磨さんは「結婚に至らない背景には婚活市場で男女が互いに求める条件の高さがある。この理想が年齢とともにどう変化するかを追った分析結果から興味深い事実が浮かんできた」という――。

崩れたウェディングケーキの上に新郎新婦の人形
※写真はイメージです
なぜ日本では結婚が減少し続けるのか

「最近の若者は結婚したがらない」。

未婚化が話題になるたび、そんな説明が繰り返されます。確かに、日本では生涯未婚率が上昇し、2020年の国勢調査によると男性28.25%、女性17.81%で過去最高を更新しています。

かつて当たり前だった「結婚して家庭を持つ人生」は、もはや唯一の選択肢ではなくなりました。

ところが、データを見ると話は少し違います。出生動向基本調査によれば、独身男女のおよそ8割は今でも「いずれ結婚したい」と答えています。

つまり、日本人は結婚を諦めたわけではない。問題はむしろ逆です。

結婚したいのに、結婚できない。この奇妙な現象はなぜ起きているのでしょうか。

ここで、多くの人はこう考えるかもしれません。

「理想が高すぎるのではないか」。

年収は最低これくらい。学歴は自分以上。年齢差はここまで。見た目も妥協したくない。

婚活をめぐるネットの議論では、「高望み」が原因として語られることが少なくありません。

では、本当にそうなのでしょうか。年齢を重ねれば理想は下がるのでしょうか。条件を多く求める人ほど結婚できないのでしょうか。

この問いに真正面から挑んだのが、メリーランド大学人口研究センターのハラ・ユウコ研究員と、UCLAのウェイシン・ユー教授です(*1)。彼女たちは、東京大学が実施した全国追跡調査を用いて、約9000人分の未婚男女のデータを分析しました。

そして、そこで見えてきたのは、多くの人が想像している「婚活市場」とは少し違う現実でした。

「女性は年収を求め、男性は外見を求める」の先に

研究では、未婚男女が結婚相手を選ぶ際に、何を重視しているかを分析しています。対象となった条件は、「性格」「外見」「学歴」「年収」「年齢」。

結果は、ある意味では予想通りでした。

女性は男性より「年収」や「学歴」を重視していました。特に年収へのこだわりは強く、年収重視と答えた女性の約7割が、「自分よりかなり高い年収」を希望していました。

一方、男性は女性よりも外見を重視していました。学歴や収入への関心は相対的に低いものの、相手の見た目には厳しい目を向けていたのです。

ここまでは、多くの人が想像できる話かもしれません。しかし、本当に興味深いのはここからでした。

ハラ研究員らは、同じ人たちを長期間追跡し、「その条件が時間とともに変わるのか」を調べました。

すると――。男女で、まったく違う変化が起きていたのです。

年齢を重ねると、「理想」はどう変わるのか

一般にはこう考えられています。

若い頃は理想が高い。でも年齢を重ね、婚活が長引けば、少しずつ現実を見るようになる。

ところが、この予想は女性についてほとんど支持されませんでした。

女性は年齢を重ねても、相手に求める条件を大きく変えませんでした。もちろん「年収を重視する姿勢」も変化していなかったのです。

ここだけを見ると、「理想が高すぎるのではないか」と感じる人もいるかもしれません。

しかしハラ研究員らの解釈は逆でした。背景には、日本社会に残る結婚後の役割分担があります。

日本では依然として、家事や育児の負担が女性側に偏りやすい傾向があります。そうした環境では、女性にとって結婚は恋愛だけではなく、生活や将来設計にも直結する重要な選択になります。もし結婚によって負担が増えるなら、その代わりに経済的安定を求めるのは不自然な行動ではありません。

つまり、女性が収入条件を維持しているのは「贅沢」ではなく、現在の社会構造のなかでは「シビアな経済合理的な判断」とも解釈できるのです。

一方で、男性は少し違う動きを見せました。

年収が上がるほど、相手への条件も強くなる

男性では、相手に求める条件は女性より変化しやすい傾向が確認されました。特に興味深いのは、自分の条件が良くなるほど、相手への条件も強まることです。

ハートの交換
※写真はイメージです

収入が増えた男性ほど外見を重視し、大卒男性ほど相手の年齢を重視する傾向が見られました。

言い換えれば、「自分の市場価値が高い」と感じる人ほど、より魅力的な相手を求めていたわけです。

これは日本だけの特殊な現象ではありません。海外研究でも、高収入や高い社会的地位を持つ男性ほど、若さや外見を重視する傾向が報告されています(*2)。

一方で、その姿勢は永遠には続きません。

独身男性は40代後半以降になると、見た目へのこだわりを弱める傾向が確認されました。婚活市場での自分の立場を現実的に見直し、条件を調整していくのです。

つまり、男性は年齢とともに理想を動かす。女性は条件を維持する。

ここに、男女の婚活戦略の違いが表れていました。

条件が多い人ほど、婚活を頑張っていた

ここで研究はさらに意外な結果を示します。

理想が高い人は、婚活を諦めているのでしょうか。

答えは逆でした。

条件が多い人ほど、婚活イベント、紹介、知人ネットワーク、マッチングアプリなど、より多くの方法で積極的に相手を探していたのです。しかも、「結婚したい」という気持ちが強い人ほど、その傾向は強くなりました。

理想が高い人は受け身なのではない。むしろ行動量は多い。ここだけ見ると、条件が多い人ほど結婚に近づきそうです。

ところが、現実はさらに意外でした。

頑張る人ほど結婚しにくい

条件を多く持つ人ほど、翌年までに結婚する確率は低かったのです。

探している。努力している。行動している。それでも結婚につながりにくい。

理由はシンプルです。条件が増えるほど、条件を満たす相手が減るからです。

しかも、結婚を遠ざけていた条件には特徴がありました。

女性では「相手の収入」。男性では「相手の年齢」と「外見」。

つまり、伝統的な男女役割と結びついた条件ほど、結婚への壁になっていたのです。

この研究が私たちに突きつけるのは、男性は「若さと美貌」を求め、女性は「年収」を求めるという、昭和の時代からアップデートされていない価値観の存在です。

SALARYと書いたブロックの積み上げ
※写真はイメージです

しかし、時代は変わり、女性の高学歴が進み、年収も高くなっています。この女性が自分と同等以上の年収の高い男性を探そうとしても、その数は限られてくるでしょう。一方男性は依然として相手の見た目と若さを追い求める。

これらのミスマッチが日本の婚姻率の低下の原因の一つになっていると言えるではないでしょうか。

それではこの問題をどう解決していけばいいのでしょう。

日本の未婚化を変えるカギ

ハラ研究員らの分析結果を基にすれば、労働や家事・育児面における男女平等化の推進がカギだと考えられます。「男性は仕事、女性は家事・育児」という性別役割分業意識が残る日本では、結婚・出産後のキャリアへの影響が大きい女性の相対的な賃金はまだ低く、どうしても年収の高い男性との結婚が合理的な選択となってしまいます。

また以前の記事でも述べたように、その理想の男性と出会えなかった場合でも、一人で不自由なく生きていくことができる経済力はあるため、「結婚しない」という選択肢が最も合理的な選択肢となりえます。

これを打破し、年収以外の面でもパートナー選択をするようになれば、婚活市場に変化が見えるようになるでしょう。

もちろん、これは「理想を下げるべきだ」という話ではありません。問題は、一人ひとりが合理的に行動した結果、全体として条件が噛み合わなくなっていることです。

もしそうだとすれば、日本の未婚化を変える鍵は、若者の価値観を責めることではなく、結婚しても男女どちらかに過度な負担が偏らない社会をつくることにあるのかもしれません。

〈参考文献〉
(*1)Hara, Y., & Yu, W.-h. (2025). Mate preferences and marriage-related behaviors: The case of Japan. Journal of Marriage and Family, 87(4), 1361–1386.
(*2)McClintock, E. A. (2014). Beauty and status: The illusion of exchange in partner selection? American Sociological Review, 79(4), 575–604.

佐藤 一磨(さとう・かずま)
拓殖大学政経学部教授
1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。

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