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未婚の母や性被害者を“隔離”し強制労働…アイルランドに実在したマグダレン洗濯所の闇に向き合う『決断するとき』

  • 2026.1.8
未婚の母や性被害者を“隔離”し強制労働…アイルランドに実在したマグダレン洗濯所の闇に向き合う『決断するとき』
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宗教施設で正当化された虐待と強制労働、その場に居合わせた市民の葛藤

アカデミー賞主演男優賞に輝いた『オッペンハイマー』(23年)後、キリアン・マーフィーが次なる挑戦として臨む意欲作『決断するとき』が、3月20日より全国順次公開されることが決定した。あわせて、日本版メインビジュアルと場面写真が解禁された。

本作は、第96回アカデミー賞主演男優賞に輝いた『オッペンハイマー』(23年)に続き、キリアン・マーフィーが次なる挑戦として選び取った意欲作。アイルランドに実在した“マグダレン洗濯所”の人権問題を背景に、社会が長く黙認してきた現実を前に、「知ってしまった個人はどう振る舞うのか」を静かに問いかける人間ドラマだ。

舞台は1985年、アイルランドの小さな町。炭商として生計を立て、家族と慎ましく暮らすビル・ファーロング(キリアン・マーフィー)は、クリスマスが近づくある日、炭を届けに訪れた地元の修道院で、目を背けたくなる現実を目撃する。そこに身を置く少女から「ここから出してほしい」と懇願され、若い女性たちが行き場もなく苦しんでいる現実と向き合うことに。

見て見ぬふりをすることが賢明だと理解しながらも、良心の呵責に悩むビル。そんな彼が、ついに下す決断とは──。

マグダレン洗濯所(Magdalene Laundries)は、18世紀から20世紀後半にかけて主にアイルランドで、カトリック教会などの宗教団体によって運営されていた更生施設。当初は「ふしだらな女」とされた女性を保護・更生する場とされたが、実態は強制労働や身体的・精神的虐待が横行する、人権を著しく侵害した施設だった。

収容対象には未婚の母や性被害者、「素行不良」と見なされた少女、孤児や貧困層の女性などが含まれ、本人の意思とは無関係に隔離された。施設内では無償での過酷な洗濯労働が課され、本名を奪われ沈黙を強要されるなど、尊厳を徹底的に剥奪された。1993年、旧施設跡地から多数の身元不明遺体が発見されたことで実態が表面化し、生存者の証言とともに国家と教会の責任が国際的に問われることとなった。

原作は、『コット、はじまりの夏』(22年)の原作「あずかりっ子」でも知られる作家クレア・キーガンによるベストセラー小説「ほんのささやかなこと」。

マーフィー自身が原作に深く惚れ込み、自ら映画化を希望。『オッペンハイマー』の撮影中にマット・デイモンへ企画を持ちかけ、ベン・アフレックも参加した。さらに、マーフィー出演のTVドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』で監督を務めたティム・ミーランツが加わり、映画化が実現した。マーフィーは本作で初めてプロデューサーとしても名を連ね、キャスティングにも参加している。

マグダレン洗濯所となった修道院の院長であるシスター・メアリー役にはエミリー・ワトソン。長年にわたり「見て見ぬふり」されてきたマグダレン洗濯所の残虐さを正当化する、静かで揺るぎない権力を体現している。アイルランド社会の闇を象徴するその抑制された演技は高く評価され、第74回ベルリン国際映画祭にて助演俳優賞を受賞した。

今回紹介するメインビジュアルは、本国版のデザインを踏襲し、マーフィー演じる主人公ビル・ファーロングの顔を大きく捉えたもの。遠くを見つめ、硬い表情を浮かべるその眼差しからは、葛藤が滲み出ている。中央には「助けるべきか、見過ごすべきか。」というコピーを配置。良心か、沈黙か——その決断を、“顔”と“問い”によって語りかける、静かな強さを湛えたポスターとなっている。

場面写真は、マーフィー演じる主人公ビルを中心に、アイリーン・ウォルシュ演じるビルの妻、エミリー・ワトソン演じるシスター・メアリー、さらにクレア・ダン演じる修道院からの脱出を試みる収容者など、物語を象徴する主要人物たちの姿に加え、本編に度々登場し、物語の根幹となるビルの幼少期の姿も収められている。

『決断するとき』は2026年3月20日より全国順次公開。

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