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齋藤飛鳥が魅かれたアゴタ・クリストフ『悪童日記』。どこか美しさを感じる、その魅力とは?

  • 2026.6.29

読書をこよなく愛する齋藤飛鳥ちゃんがオススメの本を1冊ピックアップし、その本の世界観をファッションやヘアメイクなどときめく感性で表現する連載企画。今回もこだわりたっぷりの演出で、作品が映し出す世界観へと誘います。

今月の作品:『悪童日記』アゴタ・クリストフ著

ふたりの双子は一心同体の「個」として異常な環境のなかで無感情な強さを放つ

トップス ¥41,800(イコールメント)、首元のリボン ¥23,100(ミューラル/THE WALL SHOWROOM)、その他はスタイリスト私物

主観を排除し、双子が目にする事実だけが記されるこの日記。双子が観察したその事実は、戦争という異常な環境のなかの出来事であり、残酷な極限状態を生き抜くために“ふたりでひとり”であることが強さを成立させ異質な存在感を現す。一心同体であり、自己の複製を持つ強さや危うさを、感情を削ぎ落としたかたちで表現。


人間の心の闇や世の不条理、冷酷で淡々とした出来事が感情を削るように

ワンピース ※参考商品(MIYAO)、シャツ ¥61,600(シーロン)、スカート ¥49,500(ノーラ)、シューズ ¥27,500(ALM.)

善悪の境界が消え去り、冷酷でいて狂気が淡々と襲ってくる世界。人間の本質がむき出しになり、倫理観は崩れ去る。過酷な状況下でも世の中に適応するための双子の無垢な行動や考えは、もはや人間らしさを映し出し、“生きること”の意味を問いかけていく。まるで、読み手の思考を揺さぶるような感覚へと誘うように。


文章が美しい表現でもなく生々しくもなく、残酷で冷徹だけどどこか美しさを感じられる

ワンピース ¥49,800(HATRA)

数年前に出会った『悪童日記』は、すごく好きで気に入って2回ほど読了しました。世界観もはっきりしていて、この連載でいつか表現したいと、ずっと思っていた作品だったので、今回嬉しかったのが率直な気持ちです。また、シンプルに面白い作品なので、みんなにも読んでほしいな、という気持ちが大きいですね。

とはいえ、この本は明るくハッピーなストーリーではなく、実際にツライ描写が多いし、登場人物の大人達もまともな人間は全く出てきません。

主人公の双子も「双子」と綴られ名前すら出てこないし、詳細な年齢も明かされないけれど、憶測では、すごく幼い年なんだろうなと……。ふたりはかなり過酷な環境下で生きていて、読んでいて耐え難いシーンを目の当たりにしますが、どこか淡々としていてブレないたくましさみたいなものを持っているんです。

また、作中で言及もされているように、想像する双子は美しい少年のふたり。その美しさもこの作品にとってキーになっています。その双子を中心に、この本には、起こった出来事だけが記され、ふたりの感情や行動の動機などが一切書かれていません。読み手に想像させるからこそ、よりツライと感じる人もいるかと思います。

なんだか、世の中ってこんなに不条理なのか、と思わされる箇所も多いですが、その残酷さと双子のある種のピュアさが、アンバランスなような、バランスがとれているような、えも言われぬ魅力を醸し出します。

どのシーンも衝撃的で印象に残ります。登場人物も利己的な人間ばかりで、幼い双子にも代償を求めてくるような大人達がたくさん存在する世界ですが、戦時中という背景がそうさせているのかな、と諦めに近い感情を抱かざるをえない部分もあります。

気になるのは、この双子がその環境下だから変わっていったのか、それとももともとそういうものが備わっていたのか。悲しく思っているのか、怒りを覚えることはあるのか。実際に何を考えているのかさっぱりわからない怖さ(?)や不気味さのようなものが最後まで続きますが、そこがまた面白い。今回の撮影でも、淡々とした佇まいや表情で、感情が分からないといいなと思いながら表現しました。


\今月の1冊!/『悪童日記』アゴタ・クリストフ 著/ハヤカワ epi 文庫 堀 茂樹 訳

第二次世界大戦末期、母親が双子の幼い兄弟を田舎の祖母の家に疎開させる。その祖母は周囲からも“魔女”と恐れられ、双子も粗野な環境で鍛えられる。戦時下を舞台に、不正や暴力、欲望に満ちた環境を描くダークで衝撃的な群像小説。


model : ASUKA SAITO

photo : TAKEMI YABUKI[W]

styling : NORIKO MIYAZAKI

hair & make-up : NAHO IKEDA

edit & text : MAIKO WATANABE

web edit : KIMIE WACHI

※記事の内容はsweet2026年6月号のものになります。
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください。

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