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「観たことある」「初めて知った方だけど」仮面ライダーから“NHK夜ドラ”へ… 初見の視聴者も引き込んだ俳優に“称賛”の声

  • 2026.7.10
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夜ドラ『ミッドナイトタクシー』第5週目(C)NHK

NHK夜ドラ『ミッドナイトタクシー』で印象を残したのが、佐久間悠演じる畑中だ。蘭象子(古川琴音)の高校時代の同級生で、現在は医師となった彼は、ある患者を死なせてしまった過去を抱え、象子のタクシーに乗り込む。制服姿での回想にはSNS上で「イメージが全然違う」、牛丼のクーポン券を投げ銭にしようとする場面には「あのシーン好きだった」との声も。『仮面ライダージオウ』で強烈な敵役を演じた佐久間が、今作では不器用な善意を抱えた男を静かに見せている。

※以下本文には放送内容が含まれます。

制服姿で“高校生”に戻る説得力

『ミッドナイトタクシー』で象子のタクシーに乗り込んできたのは、高校時代の同級生・畑中だった。行き先は「ストリートミュージシャンがいそうなところ」。卒業式以来の再会でありながら、畑中は「人を殺したから」と冗談めかし、その後の車内でも「蘭さんのこと、好きだったから」と告白する。

普通なら空気が一変しそうな言葉も、象子はいつものマイペースさで受け止める。その距離感が、二人の過去を自然に浮かび上がらせていた。

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夜ドラ『ミッドナイトタクシー』第5週目(C)NHK

象子同様、現在の畑中と高校時代の畑中、どちらも佐久間悠本人が演じている。制服姿の佐久間が回想に登場すると、現在の落ち着きとはまるで違う、少し頼りなく素直で、人の顔色をうかがうような少年の空気が立ち上がる。SNS上で「イメージが全然違う」と反応があったのも納得で、単に制服が似合うという話ではなく、声の出し方や視線、身体の軽さまでが、ちゃんと“高校生の畑中”になっていた。

高校時代の畑中は、手相占いの本を読み、象子の左手を見て“寂しい中にもちゃんと愛情のある人”と読み解く。やがて二人の占いは生徒たちの間で評判になり、お小遣いを払う生徒まで現れる。教師にバレて没収される前に使い切ろうと、二人は畑中が母親から禁止されているフラペチーノを飲み、ファミレスで食事をする。最後には象子が、畑中に相談もせず、残った報酬をレジ前の募金箱に入れてしまう。

この一連の回想には、象子と畑中の関係性が詰まっている。畑中は真面目で少し臆病、でも象子の突拍子もなさにどこか救われている。象子は人の心に踏み込みすぎないようでいて、時々、相手の常識を軽々と飛び越える。青春の甘酸っぱさというより、思い出すと少し可笑しく、少し胸が痛むような時間。その曖昧な温度を、佐久間は力まずに表現していた。

牛丼のクーポン券ににじむ、畑中の“届かない善意”

現在は医師になっている畑中。高校時代から、ちゃんと必要な人になりたいと口にしていた彼は、その夢を叶えた。しかし、彼は誤って患者を死なせてしまい、裁判沙汰になっていた。

亡くなった患者が退院後にやりたいことを書き留めていたリストを手に、畑中はそれを一つずつ実行しようとしていた。償いというにはあまりに不確かで、自己満足と言い切るには切実すぎる行動。そのリスト内に、ストリートミュージシャンにちょっと多めにお金をあげて驚かせたい、という項目があったから、彼は夜の街でミュージシャンを探していたのだ。

畑中がいざ投げ銭をしようとした瞬間、財布に現金が入っていないことに気づき、代わりに牛丼のクーポン券を入れようとする。するとミュージシャンに「僕、肉食べないんですよ」と断られてしまう。SNS上で「あのシーン好きだった」と言われたこのやり取りは、たしかに可笑しい。けれど、ただの笑いどころではない。

牛丼のクーポン券は、畑中という人の“届かない善意”の象徴のように見える。彼は悪意のある人間ではない。むしろ、人を救いたい、必要とされたいという思いが強い人だ。だからこそ医師になり、亡くなった患者が残した希望を叶えようとしている。

けれど、その善意はいつも少しズレる。お金をあげたいのに現金がない。代わりに差し出したクーポン券は、相手には必要とされない。助けたいのに、うまく届かない。その小さなズレが、彼の人生の大きな痛みと重なっていく。

佐久間悠は、その頼りなさを大げさに演じない。後悔を抱えているのに、どこか穏やかで、冗談を言う余白もある。追い詰められているのに、完全には壊れ切っていない。そこに畑中の人間らしさがある。

『仮面ライダージオウ』から夜ドラへ

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夜ドラ『ミッドナイトタクシー』第5週目(C)NHK

佐久間悠の名前を強く記憶している人の中には、『仮面ライダージオウ』の加古川飛流/アナザージオウ役を思い浮かべる人も多いだろう。主人公・常磐ソウゴ(奥野壮)に強い敵対心を燃やし、複雑な過去を背負った宿敵として登場した加古川飛流は、物語の重要なキーマンだった。特撮ファンの間でも、強烈な印象を残した役柄である。

『ジオウ』での佐久間は、歪んだ執着や怨念を抱えた人物の不穏さを見せた。一方、『ミッドナイトタクシー』の畑中は、声を荒げるわけでも、分かりやすく怒りを爆発させるわけでもない。むしろ静かで、少し頼りなく、自分自身を持て余している男だ。

しかし、両者に共通しているのは、簡単には割り切れない感情を抱えた人物であるという点だ。

佐久間の魅力は、そうした複雑な感情を、説明的に見せすぎないところにある。畑中は、医師として誰かを救いたかった。けれど、その仕事で人を死なせてしまった。自分を責めながらも、日常の言葉でどうにか自分を保とうとしている。冗談を言う。思い出話をする。クーポン券を差し出して、断られる。そうした小さな振る舞いの奥に、逃げたい気持ちと逃げたくない気持ちが同居している。

クールな佇まいに、ふっと気弱さが見える。穏やかな声に、自分を責め続けている人の重さが混じる。特技である空手や殺陣を活かした身体性とはまた違う、静かな芝居の強度が、今回の畑中にはあった。SNSでも、「観たことあると思ったら仮面ライダーの人だった」「初めて知った方だけど良かった」といった声が見られ、その繊細な演技は、既存のファンだけでなく初めて彼を知る視聴者にも届いていたことがうかがえる。

『仮面ライダージオウ』で強烈な宿敵を演じた佐久間が、夜ドラでは、罪悪感を抱えながらも穏やかに前を向こうとする男を見せた。制服姿で高校生時代を演じる軽やかさ、牛丼のクーポン券を投げ銭にしようとする不器用な可笑しみ、医師として背負った罪から逃げない重さ。そのすべてが、畑中という人物に不思議な余韻を与えている。佐久間悠という俳優の振れ幅を、あらためて感じさせるエピソードだった。


NHK 夜ドラ『ミッドナイトタクシー』毎週(月)〜(木)夜10:45~11:00
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_

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