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初回放送から恐ろしい“傑作”を予感させた【深夜ドラマ】原作とは異なる“実写版ならでは”の見どころ

  • 2026.7.10
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ドラマ24『ストレンジ -伊藤潤二の夜も眠れぬ奇妙な話-』第1話(C)テレビ東京

『ストレンジ -伊藤潤二の夜も眠れぬ奇妙な話-』(以下、『ストレンジ』)は夏の夜に相応しいオムニバス形式のホラードラマだ。

第1話は、ある町で流行っている奇妙な風習について描いた怪異譚だ。
深田龍介(細田佳央太)が暮らす霧に包まれた町には、四つ辻で通りすがりの相手に恋の行方を占ってもらう「辻占」(つじうら)という奇妙な風習が存在していた。
この「辻占」がきっかけで、不可解な事件が次々と発生。 やがて町には四つ辻の美少年と呼ばれる謎の存在の噂が広がり始める。

※以下本文には放送内容が含まれます。 

ホラー漫画の巨匠・伊藤潤二

本作は伊藤潤二の短編漫画を映像化したオムニバスドラマだ。
伊藤潤二は80年代後半から活躍するホラー漫画家で、高飛車でわがままな美少女・富江の影響で周囲の人々がおかしくなっていく姿を描いた『富江』シリーズ、呪われた街で起こる渦巻にまつわる怪奇現象を描いた『うずまき』、自分と同じ顔をした気球が襲ってくる恐怖を描いた『首吊り気球』といったホラー漫画を多数手掛けている。どの作品も強烈なインパクトがあり、一度読んだら忘れられない。
 
伊藤のホラー漫画は、細部まで描き込まれた緻密なペンタッチによる美しさと恐ろしさを兼ね備えた美男美女やおぞましい怪物や怪奇現象のビジュアルに定評がある。
そして斬新なアイデアを用いた短編が多いため、伊藤の漫画は何度も映像化されている。
最近では2023年に『マニアック』という伊藤潤二作品を映像化したオムニバスアニメがNetflixで配信された。
だが、伊藤潤二作品の最大の魅力は圧倒的な画力に支えられたビジュアル表現。これがアニメなら、漫画の絵柄をそのまま作品に持ち込めるため、あまり違和感はないのだが、映画やドラマといった実写だと、どうしても漫画とのズレが生じてしまう。
そのため、実写化する際には漫画のビジュアルに匹敵する映像表現を作り出すか、映像に頼らない独自のアプローチが求められる。
つまり、実写化の難易度はとても高いのだが、今回の『ストレンジ』の第1話は、実写化ならではのアプローチがとてもうまく成功しており、最後まで見応えがあった。

実写ドラマならではのアプローチ

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ドラマ24『ストレンジ -伊藤潤二の夜も眠れぬ奇妙な話-』第1話(C)テレビ東京

幼少期に龍介は、恋愛に悩む不気味な女から「辻占」を迫られ「そんな恋、実らないよ。バーカ」と言ったことがあり、その影響で彼女が自ら命を絶った姿を見たことが心の傷になっていた。
高校生になった龍介は、小学校で一緒だった柴山みどり(莉子)と再会し仲良くなるが、やがて子どもの頃、自分に「辻占」を迫ってきた女が、みどりの伯母・碧(高畑結希)だったと知る。
碧の一件が心の傷となっていた龍介は、みどりが自分に向ける恋愛感情に気付いていたが、距離を取ろうとしていた。
そんな二人の姿をもどかしく思っていた田中すず(松宮倫)は、二人をくっつけるために「辻占」で恋愛相談をするのだが、その相手が四つ辻の美少年(松瀬太虹)と呼ばれる謎の男だったことから、今度は彼女がおかしくなっていく。すずは自分の中にある龍介への恋心に気付き、彼に対して一方的に思いをぶつけ、ストーカーのようになってしまう。

彼女の豹変する姿はとても不気味で恐ろしいが、人を好きになったことで自分をコントロールできなくなっておかしな行動を取ってしまう彼女の気持ちが痛いほど伝わってくるため、とても悲しかった。

女子生徒が豹変していく姿は、原作漫画では伊藤潤二ならではの過剰な表情のビジュアルの凄さで一点突破していた。そのため、彼女の心情にはあまり関心が向かわなかった。
ストーリーに対しても絵が凄すぎるあまり、ただただ圧倒され、内容については深く考えなかったのだが、今回のドラマを観て、恋愛感情の暴走を描いたホラーだったのかと理解した。

おそらく、今回のドラマ化は伊藤潤二の過剰な作画によって成立している凄まじいビジュアルを、どうやって実写映像に落とし込むのかが、最大の課題だったのではないかと思う。

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ドラマ24『ストレンジ -伊藤潤二の夜も眠れぬ奇妙な話-』第1話(C)テレビ東京

今回の第1話は、恋愛感情に囚われて心がおかしくなっていく女子生徒の姿を、生身の若手女優が演じることによって、原作漫画と拮抗する力強い映像表現を生み出すことに成功した。
対して、四つ辻の美少年という怪物的存在の見せ方は原作漫画と比べると抑制的で、視聴者の想像に委ねる部分を増やすことで、得体のしれない不気味な存在としてうまく描かれていた。

その意味でも霧に包まれた町という本作の舞台設定は、とても上手く機能している。

原作漫画の霧が、細かい斜線を多用した湿気を感じさせる描き方となっていたのに対し、ドラマでは画面全体が白くぼやけており、風景と人物の輪郭が曖昧な空間として、霧の漂う町が描かれていた。全ての境界が曖昧な霧に包まれた町という異界が舞台だからこそ、次々と理解不能な出来事が起こる恐怖体験に説得力が宿っていたのだろう。

霧に包まれた町、「辻占」、四つ辻の美少年といった奇抜で恐ろしいイメージの連鎖に圧倒される作品だが、中心にあるテーマは恋愛感情の持つ暗黒面で、それをホラーとして描いたことこそが本作の魅力であると、ドラマを観たことではっきりと実感した。
本作のように中心にあるテーマをしっかりと抽出することができれば、他のエピソードも夏の夜に相応しい恐ろしい傑作になるのではないかと思う。


テレビ東京系 ドラマ24『ストレンジ -伊藤潤二の夜も眠れぬ奇妙な話-』毎週金曜 深夜24時12分~

ライター:成馬零一
76 年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に 『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する 6 人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』 (PLANETS)がある。

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