1. トップ
  2. エンタメ
  3. 再生数と話題性で“TVerトレンド1位”獲得ドラマ「思い当たる点が…」主人公を支えた新聞記者にこめられた“重要な役割”

再生数と話題性で“TVerトレンド1位”獲得ドラマ「思い当たる点が…」主人公を支えた新聞記者にこめられた“重要な役割”

  • 2026.7.9
undefined
月10ドラマ『銀河の一票』最終話より(C)カンテレ・フジテレビ

カンテレ・フジテレビ系 月10ドラマ『銀河の一票』(月曜よる10時)最終話がTVerのドラマランキングのみならず、急激な再生数の伸びやSNSでの話題性を反映するトレンドでも1位に入ったという。黒木華演じる星野茉莉と、野呂佳代演じる月岡あかりの都知事選を描いた本作で、静かに重要な役割を担ったのが、三浦透子演じる東西新聞の政治部記者・雨宮楓だ。SNS上でも「ワナワナしている」「思い当たる点が…」と反響を呼んだ雨宮は、なぜ男性ではなく女性である必要があったのか。

※以下本文には放送内容が含まれます。

雨宮楓は、茉莉を“ひとりにしない”ために存在していた

東西新聞の政治部で民政党を担当する26歳の雨宮記者。「〜っす」という少し砕けた敬語で話し、政治部記者でありながら、どこか人懐っこく、愛嬌のある人物として登場した。
第2話では、都知事辞任をめぐる混乱の中、政界を追われた茉莉を心配して駆けつける雨宮。彼女が茉莉を、単なる取材対象として見ていないことが伝わってくるシーンだ。

undefined
月10ドラマ『銀河の一票』最終話より(C)カンテレ・フジテレビ

2人の関係の根には、雨宮の高校時代の出来事がある。家に泊めてくれる男性を探す“神待ち”をしていた雨宮に、茉莉が声をかけ、自宅に泊めた。その出会いが、雨宮にとって人生の大きな転機となった。記者になったのも、茉莉への恩返し。彼女をひとりにしないために、雨宮は茉莉のそばにいた。

茉莉は、与党幹事長の元秘書として政界の裏側を知り、不正疑惑をめぐって組織から切り捨てられた人物だ。強く冷静で、選挙参謀としても有能である一方、その強さの裏には深い孤独がある。雨宮は、その孤独を知っていた。だからこそ、選挙活動に直接関わる立場ではなくても、報道や情報の面から茉莉を支え続ける。

第10話で描かれた二人の絆は、雨宮が茉莉に抱く感情が、憧れや恩義だけではないことを示していた。そこには、救われた側が、救ってくれた人の人生を支えようとする純度の高い友情がある。雨宮楓は、茉莉が権力の中で孤立しないための、絶対的な味方だった。

男性記者では成立しにくい、“他意のない友情”の強度

では、なぜ雨宮は男性ではなく女性だったのか。
もし雨宮が男性記者だったなら、茉莉との関係は同じように受け取られただろうか。もちろん、男性と女性の間に純粋な友情が成立しないわけではない。しかし、ドラマを見る第三者=視聴者の受け取り方としては、どうしてもそこに恋愛や下心の可能性が入り込む余地が生まれる。

茉莉のために駆けつける。茉莉のために記者になる。茉莉の選挙戦を陰から支える。これらの行動が、もし男性記者によるものだった場合、茉莉への好意・恋愛感情が動機なのではないか……という見方が発生してもおかしくない。本人の意図とは別に、男女の関係性として物語が読まれてしまうのだ。

その意味で、雨宮が女性であることには大きな意味がある。少なくとも視聴者の目には、茉莉と雨宮の関係は、恋愛のノイズを挟まずに受け取りやすい。雨宮の献身は、下心ではなく、救われた者の恩義であり、友人としての愛情に見える。
もちろん、雨宮の性自認や恋愛対象が明確に語られていない以上、同性だから恋愛感情が完全に排除されるとは言えない。けれど、作品の見え方として、雨宮を女性にすることで、茉莉との関係はより“混じり気のない友情”として立ち上がる。

そもそも、なぜ私たちは、記者という肩書きや「〜っす」という言葉遣い、LINEの登録名だけで、雨宮を男性だと思い込んだのか。雨宮の初登場前、彼女はまず茉莉のスマホ画面上の名前や文面として登場した。その段階で、無意識に“男性記者”を想像した視聴者も少なくなかったはずだ。
つまり雨宮は、視聴者のジェンダーバイアスを試すキャラクターでもある。政治部記者は男性だろう。砕けた敬語を使う後輩記者は男性だろう。権力の中枢に食い込む情報提供者は男性だろう。そんな思い込みを、三浦透子の登場が静かに裏切る。

雨宮が女性だったことは、作品が視聴者に仕掛けた問いだったのではないか。誰を“政治の現場にいる人”として想像するのか。誰を“献身的に支える人”として受け取るのか。そこに、私たち自身の見方が映し出されている。

友情が照らし出す男性側の孤独

『銀河の一票』では、星野茉莉と月岡あかり(野呂佳代)の関係性が大きな軸になっている。政治の世界を知る茉莉と、市井の感覚を持つスナックのママ・あかり。二人は都知事選を戦う同志であり、次第に互いを信頼する相棒になっていく。

undefined
月10ドラマ『銀河の一票』最終話より(C)カンテレ・フジテレビ

この関係は、日山流星(松下洸平)と昴(倉悠貴)の関係とも対になっている。流星もまた都知事選を戦う側にいる人物であり、昴は彼を支える存在だ。しかし、茉莉とあかり、そして茉莉と雨宮の関係にあるような“対等な友情”は、流星の側には見えにくい。

昴は流星に献身的に尽くしているように見える。しかし少なくとも物語中盤までは、その関係は友情というよりもビジネス上の主従関係、あるいは政治的な利害関係として映る。流星には、茉莉にとっての雨宮のように、過去を知り、孤独を知り、それでも利害を超えてそばにいようとする存在がいない。

だからこそ、雨宮の存在は重要だった。
雨宮が茉莉のそばにいることで、茉莉の強さは孤独な強さではなくなる。彼女には、理解者がいる。恩義を抱きながらも、単なる信奉者ではなく、友人として支える人物がいる。一方で、流星の周囲には大勢の人はいても、彼の孤独をまるごと受け止める存在が見えにくい。

あかりと茉莉、流星と昴。この対比だけなら、本作は選挙戦におけるチームの違いを描く物語に見える。しかし、そこに雨宮が加わることで、茉莉側にはもう一つの層が生まれる。政治的な勝利のためではなく、茉莉自身を支える関係。権力や打算から切り離された、個人的で、純粋な味方の存在である。

この味方が女性であることによって、本作は女同士の友情や連帯をより鮮明に描くことができた。茉莉とあかりが選挙を戦う表のバディだとすれば、茉莉と雨宮は、過去と現在をつなぐ裏のバディである。

雨宮という女性記者が茉莉のそばにいたことで、作品には重要な意味が生まれた。茉莉の孤独をやわらげ、流星の孤独を浮かび上がらせ、さらに視聴者のジェンダーバイアスを静かに照らし出す。雨宮楓は、“女性であること”に明確な必然性を持ったキャラクターだった。三浦透子の飄々とした語り口と、奥にある熱量が、その必然性を説得力あるものにしていた。


出典:@TVer_official TVer公式X

カンテレ・フジテレビ系 月10ドラマ『銀河の一票』

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_

の記事をもっとみる