1. トップ
  2. エピソード
  3. 保護者「人権侵害じゃないですか?」「転校します!」個人面談で30分激怒…元教員が語る“今でも忘れられない”記憶

保護者「人権侵害じゃないですか?」「転校します!」個人面談で30分激怒…元教員が語る“今でも忘れられない”記憶

  • 2026.7.7
undefined
出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。元小学校教員ライターの、みずいろ文具です。

夏休み前に、個人懇談が設けられている学校もあると思います。

1学期の子どもの様子を保護者に伝えたり、家庭での様子を聞いたりしながら、2学期以降の支援につなげていくための、大切な時間です。

しかし、時には思いがけず厳しい言葉を受けることもあります。

私にも、今でも忘れられない個人懇談の記憶があります。

対応に苦慮していた児童

高学年を担任していたときのことです。

クラスに、周囲の子に対して攻撃的な言動を繰り返してしまう児童Aさんがいました。

友達の見た目や家庭環境をからかったり、差別的な言葉を投げかけたりすることがあり、周囲の子たちも少しずつ距離を取るようになっていました。

もちろん、担任としてその状況を放っておくことはできません。

その子の話を聞いたり、個別に声をかけたり、友達との関わり方について何度も指導したりしました。

保護者にも相談したいと思い、何度も何度も電話をかけました。

しかし、なかなか連絡がつながらず、家庭と十分に情報を共有できないまま、1学期が過ぎていきました。

今思えば、電話だけでなく家庭訪問をしたり、学年主任や管理職に相談して組織的に動くなど、もっと早い段階で打つべき手があったと後悔しています。

靴箱に入っていた無記名の手紙

ある日、その児童に何度も嫌な言葉を言われていたBさんが、耐えきれずに無記名の手紙を書き、靴箱に入れてしまいました。

そこには、「あなたの存在が私を苦しめている。学校に来ないでほしい」という趣旨の言葉が書かれていました。

もちろん、その言葉は適切ではありません。

どれほどつらい思いをしていたとしても、相手の存在を否定するような言葉は、見過ごすことができませんでした。

筆跡などから手紙を書いたのはBさんだと分かり、双方に聞き取りをしました。

Bさんの苦しい気持ちに共感しつつも、相手を傷つける言葉を使ってはいけないことを伝えました。

一方でAさんにも、日頃の言動でBさんを傷つけていたことについて、あらためて考えるよう話をしました。

しかし、この話はここで終わらなかったのです。

個人懇談で浴びせられた言葉

その後、夏休み前の個人懇談がありました。

Aさんの保護者が少し遅れて教室に入ってくると、すぐに例の手紙の話になりました。

うちの子はひどく傷つけられた」
「学校に来ないでほしいなんて、人権侵害ではないか
こんなひどい担任、今まで見たことがない

強い口調で、次々と言葉を向けられました。

私は、それまでの経緯や、双方に聞き取りと指導をしたことを説明しようとしました。

けれど、その場ではなかなか話がかみ合いませんでした。

保護者から見えていたのは、「自分の子どもが手紙で傷つけられた」という事実でした。

しかし教室には、それ以前から積み重なっていたAさんの周囲に対する振る舞いや、それによるBさんも含めた周囲の子どもたちの苦しさもありました。

そのすべてを短い懇談時間の中で伝えるのは、とても難しいことでした。

「転校します」と告げられて

Aさんの保護者からは、私の担任としての対応に対する厳しい指摘が30分以上続きました。

そして最後に、唐突にこう言ったのです。

こんな学校、転校します。2学期から別の学校に行きます

突然の宣言に驚きました。
長時間にわたり厳しい言葉を受け止め続けた私は、疲れ果て、最後はただ「そうですか」と答えることしかできませんでした。

Aさんの保護者が教室を出て行ったあと、懇談の順番を待っていた別の保護者の方が、

先生、大変でしたね…本当にお疲れ様です」と、そっと声をかけてくださったことを覚えています。

今でも考えること

Aさんは、本当に1学期いっぱいで転校していきました。
夏休みが明け、2学期になると、教室の雰囲気は少しずつ落ち着いていきました。

子どもたち同士の関係も穏やかになり、クラス全体に笑顔が増え、安心して過ごせるようになったのです。

けれど、Aさんが転校先でどのように過ごしていたのかは分かりません。

今でも、あのときの対応について考えることがあります。

もっと早く保護者とつながる方法はなかったのか。

その子の攻撃的な言動の背景に、もっと目を向けることはできなかったのか。

周囲の子どもたちを守りながら、その子自身も支えるには、他にどんな方法があったのか…。

あの個人懇談は、私にとって決して忘れられない経験です。

そして同時に、子どもを支えることの難しさを強く感じた出来事でもありました。



ライター:みずいろ文具

関東の公立小学校で15年間、子どもたちと向き合ってきました。教室での日々を通して感じた喜びや戸惑い、子どもたちから教わったことを、今は言葉にしています。教育現場のリアルや、子どもたちの小さな成長の瞬間を、やさしい視点でお届けします。

【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる