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全く新しい「エスプレッソ」の淹れ方が開発される

  • 2026.6.25
全く新しいエスプレッソの淹れ方が誕生 / Credit:Canva

エスプレッソといえば、熱いお湯と高い圧力で一気に抽出する、濃厚なコーヒーの代表格です。

しかし近い将来、エスプレッソ作りの主役は「熱」ではなく「音」になるかもしれません。

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)の研究チームは、お湯を使わず、超音波を利用することで、常温付近の水からエスプレッソ並みの濃さをもつコーヒーを2〜3分で抽出できることを示しました。

研究の詳細は、2026年6月4日付で学術誌『Journal of Food Engineering』に掲載されました。

目次

  • 超音波が生み出す”常温”のエスプレッソ
  • 超音波により「常温では難しかった濃い抽出」に短時間で到達、消費エネルギーも低い

超音波が生み出す”常温”のエスプレッソ

一般的なエスプレッソは、細かく挽いたコーヒー粉をバスケットに入れ、タンピングして固めたうえで、90℃台の熱いお湯を高い圧力で押し込んで作られます。

この方法では、熱によってコーヒー成分が溶け出しやすくなり、圧力によって短時間で濃い液体を抽出できます。

その結果、強い香り、苦味、油分、独特のボディ感をもつエスプレッソが生まれるのです。

一方、常温や低温の水でコーヒーを抽出する場合、一般には長い時間が必要になります。

いわゆるコールドブリューは、なめらかで穏やかな味になりやすい反面、通常は12〜24時間ほどかかり、エスプレッソのような濃さも得られません。

今回研究チームは、「常温でも比較的短時間でエスプレッソを抽出できる」方法として、超音波に注目しました。

使われた装置では、コーヒー粉を入れるバスケットの外側に金属製のホーンを接触させ、42.6kHzの超音波を直接伝えます。

すると、バスケットそのものが細かく振動し、内部の水とコーヒー粉に音のエネルギーが伝わるのです。

このとき液体の中では、微小な泡が生まれて崩壊する現象「超音波キャビテーション」が起こっています。

泡が崩壊すると、コーヒー粉の表面に強い水流や細かな衝撃が加わり、香りや味に関わる成分を含むコーヒー成分が水に移りやすくなると考えられます。

つまりこの方法は、熱で抽出を進めるのではなく、超音波が生み出す微細な泡と流れで、コーヒー粉から成分を引き出す新しい淹れ方なのです。

超音波により「常温では難しかった濃い抽出」に短時間で到達、消費エネルギーも低い

研究チームは、この超音波抽出で本当にエスプレッソに近い濃さが得られるのかを確かめるため、コーヒーの総溶解固形分(TDS)などを測定しました。

TDSは、飲み物の中にどれだけコーヒー成分が溶けているかを示す指標です。

エスプレッソは一般にこの値が高く、論文ではおよそ8〜12%がエスプレッソの範囲として扱われています。

実験の結果、超音波を使った場合、細かい挽き目では2分でTDSが8.80%に達し、3分では条件によって9%台後半まで上がりました。

一方、同じ常温条件で超音波を使わない場合、抽出は途中で頭打ちになり、コーヒー粉から取り出せる成分の量も十分には増えませんでした。

つまり、単に常温水で長く待てばよいのではなく、超音波の作用が抽出を押し上げていたと考えられます。

さらに100人の一般的なコーヒー飲用者を対象にした官能評価では、両方を22℃にそろえて飲み比べた条件で、通常のエスプレッソと超音波で抽出したコーヒーのあいだに、香り、風味、苦味、総合的な好みに有意な差は見られませんでした。

ただしこれは、熱いエスプレッソとしての飲用体験まで完全に同じだと示したものではありません。

それでも、常温水から2〜3分でエスプレッソ強度の抽出に到達し、主要な味の評価でも大きな差が出なかった点は注目に値します。

加えて、同程度の濃さの飲料を作る実験条件では、超音波システムの消費エネルギーは従来のエスプレッソマシンの24.3%にとどまりました。

これは、ボイラーや金属部品を加熱し続ける必要がないためです。

こうしたメリットは、コーヒー製品を大量に作る企業にとっても魅力的かもしれません。

コーヒー抽出の常識を見直す技術として、今後の発展が注目されます。

参考文献

Entirely new way of making espresso shakes up the coffee world
https://techxplore.com/news/2026-06-espresso-coffee-world.html

元論文

Ultrasound enables espresso-strength coffee brewing in 2–3 minutes at low temperature with lower energy consumption
https://doi.org/10.1016/j.jfoodeng.2026.113193

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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