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夫は「敏腕フォトグラファー」。国民的ヒロイン→“家政夫おじさん”と恋する新境地とは

  • 2026.7.19
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2024年4月、TASAKI創業70周年イベントに登場した多部未華子(C)SANKEI

恋に落ちる瞬間を演じる俳優は多い。しかし、恋のあとの長い生活を、これほど段階を踏んで演じ続けてきた俳優は多くはない。多部未華子の役の履歴を並べ直すと、恋愛の相手役から始まり、家族を背負う主人公、他人との共同生活、夫婦の危機、母としての葛藤へと、親密さの形が一作ごとに更新されていることに気づく。

それは単なる年齢に応じた配役の変化ではなく、結婚や家族というものを役の内側から問い直してきた歩みに見える。

恋愛喜劇の相手役から始まった

出発点にあるのは、TBS系『山田太郎ものがたり』(2007年)だ。ここでの多部未華子は恋愛喜劇の相手役であり、推進力は恋の成就に向かうときめきそのものにあった。相手を想い、すれ違い、近づく。この時期の役にとって、親密さとはまだ「これから始まるもの」であり、結婚も生活もその先にある未知の領域だった。映画『君に届け』(2010年)でも、描かれるのは関係が生まれる手前の緊張と喜びだ。恋愛の入口を演じる若手として、多部未華子は確かな存在感を示していた。

しかし、この時期にすでに例外がある。NHK『つばさ』(2009年)で演じたのは、家族と仕事を同時に背負う主人公だった。恋の相手を待つ側ではなく、家業と家族の重さを自分の肩で受け止める役。恋愛の入口と、家族という日常。20代前半でこの両方を演じたことが、のちの役の広がりを準備していたように思える。

共同生活を経て生まれる新しい視点

TBS系『私の家政夫ナギサさん』(2020年)は、その広がりが明確に形になった作品だ。演じたのは仕事中心の生活を送る女性であり、彼女の日常に入ってくるのは恋人ではなく家政夫だった。家事を担ってもらい、同じ空間で生活が回っていく。恋愛の成就でも婚姻でもなく、まず「一緒に暮らすことが成立するか」という問いから親密さが立ち上がる。若手期の役が恋の始まりを演じたのだとすれば、ここでの役は生活の始まりを演じている。この順序の逆転こそが、この作品の役の新しさだった。

フジテレビ系『いちばんすきな花』(2023年)では、さらに一歩進む。ここで演じられたのは、恋人でも夫婦でも家族でもない、名前をつけないつながりだ。関係に名前を与えないまま、それでも人と人が支え合えるのか。恋愛から結婚へという一本道を外れた場所に、親密さの可能性を探す役である。結婚をゴールとして描いてきた恋愛劇の文法と違った地点に立つ役だった。

結婚のあとに続く時間

一方で、多部未華子は結婚そのものの内側にも踏み込んでいる。TBS系『マイファミリー』(2022年)で演じたのは、娘を持つ夫婦の役だ。ここでの結婚は始まりでも到達点でもなく、危機にさらされる現在進行形の関係である。子どもという守るべき存在を前に、夫婦は試される。恋愛期の役が「この人と結ばれるか」を問うたのに対し、この役が問うのは「この家族を守り抜けるか」だ。同じ親密さでも、賭けられているものの重さがまるで違う。

TBS系『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』(2025年)では、専業主婦であり母である女性を演じた。仕事中心の女性を演じた過去の役とちょうど対をなす配置だ。結婚後の生活を美談にも悲劇にもせず、そこに生きる人の道として演じる。恋愛の相手役だった俳優が、結婚のあとに続く長い時間そのものを演じる主体になった。

実生活では、写真家の熊田貴樹氏と仕事の現場で出会い、2019年10月に結婚を発表、2021年には第1子の妊娠と出産を報告している。ただしこれは役の変化とは別の事実線であり、役の広がりは私生活の反映ではなく、俳優としての積み重ねと見るべきだろう。

またあらたな暮らしの形へ

2026年6月12日からPrime Videoで配信中のPrime Originalドラマ『クロエマ』は、杉咲花との初共演によるW主演で、ひょんなことから共同生活をはじめる2人が描かれる。夫婦でも家族でもない誰かと暮らすという主題に、多部未華子がもう一度向き合う。

恋の始まりから、結婚の危機、名前のない関係、母の日常まで、あらゆる局面を通過してきた俳優が、次にどんな暮らしの形を見せるのか。その役の履歴そのものが、また楽しみなところでもある。


※記事は執筆時点の情報です

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