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夫は「国民的アイドル」から社長へ転身。愛憎にまみれた“ヤバイ妻”の顔を見せた新境地

  • 2026.7.19
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木村佳乃-1999年7月撮影(C)SANKEI

結婚とは何かと問われて、ひとつの答えで済む人は少ない。式のことか、婚家との付き合いか、夫婦ふたりの関係か、それとも子を育てる日々のことか。木村佳乃の役者人生を結婚という切り口で眺めると、この問いの多面性がそのまま役柄の変遷になっていることに気づく。

彼女は恋人を演じ、新妻を演じ、妻を演じ、母を演じてきた。だがそれは単なる年齢に応じた配役の推移ではない。役ごとに、結婚の違う顔と向き合ってきた俳優の記録である。

他人の家の一員になるということ

1999年のフジテレビ系ドラマ『Over Time』のころ、木村佳乃が立っていたのはまだ結婚の手前だった。そこから2年後、TBS系『嫁はミツボシ。』(2001年)で演じたのは新妻である。この作品が扱ったのは、夫婦ふたりの愛の話ではない。嫁と婚家、つまり結婚によって突然家族になった他人たちとの関係だった。

結婚の最初の顔はここにある。恋愛は当人同士で完結するが、結婚はそうではない。相手の親、相手の家の流儀、自分がそこでどう呼ばれ、どう扱われるか。愛とは別の回路で人と家族になっていく過程を、木村は新妻の立場から演じた。

翌2002年のフジテレビ系『ウエディングプランナー SWEETデリバリー』では、立ち位置が反転する。今度は結婚する側ではなく、他人の結婚式を仕事として組み立てる職業人である。結婚を内側から生きる役と、外側から支える役。この2年間で彼女は、結婚という出来事を当事者と伴走者の両方の目で通過している。式は一日で終わるが、家族になる作業は終わらない。その落差を知る役柄が、キャリアの早い段階に並んでいるのは面白い。

妻という役の底が抜けるとき

新妻ものから14年後、日本テレビ系『僕のヤバイ妻』(2016年)で木村佳乃が演じた妻は、結婚のまったく別の顔を見せる。ここで描かれるのは夫婦の愛憎であり、それも穏やかな倦怠ではなく、極端な形にまで振り切った関係だ。

結婚生活が長くなると、妻という言葉の中身は変わる。婚家にどう馴染むかという初期の課題は消え、代わりに、最も近くにいる他人である配偶者との間で何が起きるかが主題になる。愛しているのか、憎んでいるのか、その両方なのか。『嫁はミツボシ。』の新妻が結婚の入口を演じたとすれば、この妻は結婚の深部、外からは決して見えない夫婦だけの領域を演じている。同じ「妻役」という括りでは到底片づかない距離が、この2作の間にはある。

母は結婚の終着点ではない

映画『告白』(2010年)で木村佳乃は母親役を演じ、日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受けた。母親役はその後も続く。だが彼女の演じる母は、結婚の物語が行き着いた静かな終着駅ではない。

TBS系『恋する母たち』(2020年)が描いたのは、母でありながら恋をする女性たちである。母になれば妻であることも女性であることも終わる、という暗黙の物語に対して、この作品ははっきり異を唱えていた。母という立場と、ひとりの人間としての欲望や揺らぎは同居する。木村が引き受けてきた母親役の系譜は、テレビ朝日系『南くんが恋人!?』(2024年)を経て、2026年10月9日公開予定の映画『汝、星のごとく』の母役へと続いていく。恋人から新妻へ、妻から母へという一方通行の物語ではなく、それらが重なり合ったまま生きる女性像を、彼女は演じ分けてきた。

家族を演じる現在地へ

木村佳乃と東山紀之は、2008年3月上演の舞台『さらば、わが愛 覇王別姫』で共演し、2010年10月23日に結婚した。東山は少年隊として長く活動した人であり、現在はSMILE-UP.代表取締役社長を務める。2026年には16年目を迎える。

実生活で妻であり母である人が、画面の中では入口の新妻にも、底の見えない妻にも、恋する母にもなる。その振れ幅こそが、この人の俳優としての持ち場を示している。2026年の秋には映画『汝、星のごとく』への出演が控える。結婚を式として、婚家として、愛憎として、そして母であることとして演じてきた人が、次にどんな家族の顔を見せるのか。答えはスクリーンで確かめればいい。結婚がひとつの言葉で言い尽くせないように、木村佳乃の演じる家族も、まだ言い尽くされていない。


※記事は執筆時点の情報です

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