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夕食で“鶏刺し”を食べて下痢に→「ただの食あたり」胃薬を飲んで放置したところ…数週間後、50代男性を襲った“恐ろしい異変”

  • 2026.7.10
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「お腹を下したけれど、いつもの食あたりだろう」。仕事帰りに美味しい鶏刺しを食べ、翌日に下痢をしてしまったものの、市販の胃腸薬を飲んでやり過ごしていたBさん(50代男性)。

しかし数週間後の朝、突然「ペットボトルが開けられない」という異変に襲われます。そのうち治るだろうと様子を見ていたものの、次第に手足の麻痺が進行しました。慌ててかかりつけ医を受診したところ、大学病院を紹介されて入院することに。ついには呼吸をする筋肉まで筋力が低下し、一時はICU(集中治療室)で人工呼吸器による管理が必要な事態となりました。

現在はすっかり回復し、後遺症もなく元の日常に戻っていますが、「あの時、早めに受診していればよかった」と振り返ります。 今回は、見逃してはいけない神経の病気について解説します。

ギラン・バレー症候群は免疫の「誤作動」

なぜ、お腹を下した数週間後に手足や呼吸の筋肉まで動かなくなってしまったのでしょうか。その背景には「ギラン・バレー症候群」という病気のメカニズムがあります。

【免疫が自分を攻撃するフロー】

  1. 先行感染:カンピロバクター腸炎(生焼けの鶏肉などによる)などの原因菌(細菌)やウイルスが体内に侵入して、下痢や発熱を起こすことから始まります。
  2. 抗体の産生:体の免疫システムが、病原体を退治するために「抗体」を作り出します。
  3. 誤認: 病原体の成分と私たちの末梢神経の構造が似ているため、役目を終えた抗体が、誤って自分の神経を攻撃してしまいます。
  4. 伝達の遮断:神経が傷つくことで、脳からの「動け」という命令の伝達が遮断され、手足や呼吸筋に力が入らなくなります。

危険な前兆を見逃さないために

「下痢や風邪くらい、市販薬で様子を見よう」。毎日を懸命に生きる皆さんが、ご自身の体の小さな変化をやり過ごしてしまうのは自然な心理です。しかし、食あたり(細菌性腸炎)の際に自己判断で強い下痢止めを飲むと、原因菌が体内に留まり悪化することもあるため注意が必要です。

このギラン・バレー症候群は、食中毒にかかった人が必ず発症するわけではなく、実際に発症することは非常にまれな病気です(人口10万人当たり年間0.4~4.0人)。

ただ、日本神経学会の診療ガイドラインにも示されるように、発症すると急速に進行する特徴があります。また、患者さんの約13.3%が呼吸筋の麻痺により人工呼吸器管理を必要としたとの報告もあります。

しびれや脱力を「疲れのせい」と思い込んで受診が遅れてしまうと、症状が進行してしまうおそれがあります。早期に適切な治療を開始すれば、重症化を防ぎ、スムーズな回復が期待できます。「手足のしびれと、数週間前の風邪や下痢とのつながり」を頭の片隅に置いておくことが大切です。

受診を検討すべき3つのサイン

重症化を防ぐために、以下の3つのサインの有無を確認してください。

1. 足先や手先から「徐々に広がってくる」しびれと脱力感

麻痺が足元からふくらはぎ、太もも、そして手元へと、数日から数週間かけて徐々に広がっていくのが特徴です。

2. 休んでも回復せず「日を追うごとに悪化する」

単なる疲労なら休めば回復しますが、この病気は進行性であり、発症から4週間以内に症状が最も重い状態に向かって悪化し続ける傾向があります。

3. 麻痺だけでなく「痛み」を伴うことも

運動麻痺だけでなく、背中や太ももなどに痛みを伴うケースもあります。

体の異変を感じたら早めの相談を

「軽い症状で病院を受診するのは気が引ける」と我慢してしまう方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、「風邪や下痢といった症状のあと、数週間して手足にしびれや力が入らない感覚が出たら、まずはかかりつけの内科や脳神経内科を受診する」と覚えておきましょう。

不調を感じたときには、我慢せず医療機関へお気軽にご相談ください。


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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