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彼が洗面台の棚で私の化粧品だけ奥にしまった。理由を聞けないまま、もやもやが募った話

  • 2026.6.15
ハウコレ

洗面台の棚を開けて、私は手を止めました。いつも手前に並べていた私の化粧品が、ぜんぶ奥のほうへ押しやられていたのです。手前を陣取っていたのは、彼の整髪料と歯ブラシ。ただ位置が変わっただけと思おうとするほど、もやもやとした気持ちが離れてくれませんでした。

奥に押しやられた、私の居場所

彼の部屋で過ごす時間が増えて、洗面台にも私の化粧品が並ぶようになっていました。それが、私にとってはささやかな安心でした。ふたりの暮らしに、私の場所がちゃんとある。そう感じられたからです。けれどある日、棚の手前にあったはずの私のものは、彼の持ち物の後ろへきれいに移されていました。手を伸ばさないと取れない、奥の奥へ。まるで目につかないところへ片付けられてしまったみたいで、私はしばらくその棚を見つめていました。

聞きたいのに、聞けない

邪魔だったのかもしれない。私のものが増えるのが、煩わしかったのかもしれない。考え出すと、よくない想像ばかりが膨らんでいきました。彼はいつも穏やかで、私を急かすようなことはしない人です。だからこそ、言葉にしない不満をこういう形で示されたのではないか。そんなふうにも思えて、なかなか切り出せませんでした。鏡の前で化粧をするたび、奥から自分の化粧水を引っぱり出す。その動作のたびに、小さな引っかかりが積み重なっていきました。

思いきって、聞いてみた

ある休みの日、思いきって彼に聞いてみました。「私の化粧品、なんで全部奥にしまったの?」彼は少し慌てた様子で、「奥のほうが水もかからないし、ものも落ちないから」と答えました。拍子抜けするほど、現実的な理由でした。「なら、言ってくれてもよかったのに」と返すと、彼は「ごめん。よかれと思って、勝手にやっちゃって」と頭をかきました。悪気がなかったのは伝わってきます。それでもなぜか彼の歯切れは悪く、何かを言いかけては飲み込んでいるように見えました。

そして...

彼なりの不器用な気遣いだったのだと、ひとまず受け止めることにしました。たしかに奥のほうが、お気に入りの化粧水も倒れずに済みます。考えてみれば、彼はいつも理由を口に出すのが下手な人でした。よかれと思って動いて、それを説明し損ねて、すれ違う。そういう不器用さを、私は知っているはずだったのに。今度からは、片付ける前にひとこと教えてね。そう笑って伝えると、彼はほっとしたようにうなずきました。あの奥の棚に、これからも私の場所がある。そう思える日が来るといいなと、今は穏やかに考えています。

(20代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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