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ナイトガードで「前歯がかみ合わなくなる」って本当?歯科医師が明かす“危険サイン”

  • 2026.6.13
「ナイトガード」を着用すると前歯がかみ合わなくなる?(画像はイメージ)
「ナイトガード」を着用すると前歯がかみ合わなくなる?(画像はイメージ)

就寝中の歯ぎしりを予防するために、就寝用マウスピース「ナイトガード」を着用している人もいると思います。ネット上では「ナイトガードのせいで前歯がかみ合わなくなった」「ナイトガードで前歯がすきっ歯になってきた」などの声が上がっています。歯を守るはずのナイトガードがかみ合わせを悪くする可能性がある場合、不安に感じるかもしれません。

実際に、ナイトガードの着用が原因で前歯がかみ合わなくなる可能性はあるのでしょうか。豊洲センシティ矯正歯科(東京都江東区)理事長で歯科医師の石川宗理さんに聞きました。

ナイトガードは顎の負担を軽減

Q.そもそも、ナイトガードとはどのようなものですか。

石川さん「寝ている間の「歯ぎしり」や「食いしばり」から、歯や顎を守るための専用マウスピースです。

私たちは寝ている間、無意識にかみしめてしまうことがあります。この時、歯には体重の数倍もの力がかかっており、ナイトガードは、その過剰な力によるダメージを和らげるクッションのような役割を果たします」

【ナイトガードの主な役割】・歯を守る歯が削れたり、詰め物や被せ物が割れたりするのを防ぎます。

・顎の負担を減らす顎の関節や、かむときに使う筋肉(エラの部分など)の痛みを和らげます。

・顎関節症の治療顎が鳴る、口が開きにくいといった症状(顎関節症)を改善するための保存的治療の一つです。

知ってほしいこととして、ナイトガードには、硬いタイプや柔らかいタイプ、全体を覆うものなど、口の状態に合わせてさまざまな種類があります。単に「歯を保護する」だけでなく、「かみ合わせ」や「顎の動き」を適切にコントロールするという大切な役割があるため、歯科医師による定期的なチェックと調整が必要です。

ナイトガードで「かみ合わせ」が変わることはある?

Q.ネットで「ナイトガードのせいで前歯がかみ合わなくなった」という情報を知りましたが、本当でしょうか。

石川さん「結論から言うと、ごくまれにかみ合わせが変化するケースは報告されています。しかし、一概に『ナイトガードが悪い』と決めつけられるものではありません。

奥歯は当たっているのに前歯の間には隙間があり、かみ合わない状態のことを「前歯部開咬(かいこう)」と言います。なぜこのようなことが起こるのか、専門的な背景を順番に解説します」

(1)骨格的な特徴が影響する場合過去に行われた臨床研究によると、もともとの顔立ちや顎の骨の形によって、マウスピース治療の後に前歯のかみ合わせが浅くなりやすい人がいることが示唆されています。例えば、下顔面が長いタイプの人などが該当します。

ただし、これは「マウスピースを使えば必ずそうなる」ということではなく、「その人の骨格的に、変化が起きやすい傾向がある」という指標の一つであることに注意してください。

(2)「原因不明」や「元々のかみ合わせのズレ」が関係する場合マウスピース使用後のかみ合わせの変化については、マウスピースが直接の原因とは言い切れないケースも少なくありません。顎関節症の治療中など、顎の関節や筋肉の不調(顎関節症など)が原因で、結果としてかみ合わせがズレてしまうこともあります。もしかすると進行性の下顎頭の吸収が原因である可能性もあります。

また、元々のかみ合わせの状態によってはかみ合わせが本来の位置とは違った位置に誘導されており、マウスピースの使用により本来の安定しやすい位置に戻ったと考えられることもあるでしょう。

(3)装置の種類や調整の問題顎の位置を誘導する特殊なタイプや、柔らかい素材(ソフトタイプ)のもの、あるいは調整が不十分なものを使用し続けることで、意図しないかみ合わせの変化が起きる可能性はゼロではありません。また、マウスピースが親知らずを覆っていない場合には、長期的な使用は開咬の誘引となるでしょう。

もし違和感を覚えたら?

「ナイトガード=副作用で歯が浮く」と過度に心配する必要はありません。次のことに気を付けてみてください。

・違和感を放置しない「最近、前歯で麺類をかみ切りにくくなった」「奥歯が浮いている感じがする」「奥歯だけが強く当たる気がする」などと感じたら、顎の位置や歯の並びに変化が起き始めているサインかもしれません。「慣れれば大丈夫」と我慢して使い続けず、すぐに歯科医師に相談してください。

・定期的に歯の当たり方をチェックナイトガードは使っているうちに少しずつ削れていきます。削れるとかみ合わせのバランスが変わるため、定期的に歯科医院で「今の状態に合っているか」を確認・調整してもらう必要があります。

・装着時間や方法を守る歯科医師から指示された装着時間や、正しい付け方を守りましょう。自己判断で使い方を変えてしまうと、意図しないかみ合わせの変化を招くリスクが高まります。

ネットの情報だけで「ナイトガードは危険だ」と判断するのは早計です。装置の設計、装着時間、そして元々の顎の状態などを総合的に診断することで、リスクを抑えながら安全に歯を守ることができます。

かみ合わせが合わない「開咬」のデメリット

Q.もし「開咬」になると、どのような困りごとが起きるのでしょうか。

石川さん「大きく分けて『食事のしにくさ』『特定の歯への負担』『将来的な歯の寿命』の3つに影響が出る可能性があります。『開咬』は単に見た目の問題だけでなく、口全体の健康バランスを崩すきっかけになります」

(1)「かみにくい」という日常の不便・前歯がかみ合わない場合レタスや麺類などの食べ物を前歯で「かみ切る」のが難しくなります。

・奥歯がかみ合わない場合どこでかんでいいのか分からず、常にかみ合わせに違和感(浮いているような感覚)を抱くようになります。

(2)残っている歯に「過剰な負担」がかかる・かみ合っている歯の数が少ないということは「本来なら全員で支えるはずのかむ力を、少人数の歯で支えている」状態です。

・接触している特定の歯に力が集中し、歯が削れる(摩耗)、割れる(破折)、あるいは詰め物・被せ物が壊れやすくなるといったトラブルを招きます。

(3)将来、自分の歯を多く残せるかどうかの指標歯科業界には「80歳で20本の歯を残そう」という「8020運動」があります。 実は、8020を達成した方々を調査したある研究では、「開咬の人は1人もいなかった」という驚きの報告があります。

「開咬だと絶対に歯を失う」という意味ではありません。しかし、バランスの良いかみ合わせが、歯を長持ちさせるための重要な条件の一つであることを示唆しています。

開咬の影響がどれくらい出るかは、その人の筋肉の強さや歯の状態によって個人差があります。 「最近、前歯が使いにくい」「特定の歯だけが強く当たる気がする」といった変化は、口からのサインかもしれません。

少しでも違和感があれば、早めに歯科医師に相談し、マウスピースの調整やかみ合わせのチェックを受けるようにしましょう。

ナイトガードによる「かみ合わせの変化」への対応と注意点

Q.「開咬」になった場合、どのような治療をするのですか。自然に治りますか。

石川さん「まずは『なぜかみ合わせが変わったのか』の原因を突き止めることが先決です。自然に治るのを待つのではなく、早めの適切な対処が必要です。『前歯がかみ合わない』という見た目は同じでも、その原因は人によって異なります」

・装置の調整、見直しナイトガードの形が合わなくなっていたり、素材が削れたりしている場合は、削って高さを調整したり、新しく作り直したりします。

・顎の関節のチェック実はマウスピースの問題ではなく、「顎の関節そのものの変化(下顎頭の吸収など)」で顎の位置がズレているケースもあります。この場合は、レントゲンや精密な検査で関節の状態を確認します。

・根本的な治療かみ合わせのズレにより日常生活に支障がある場合には、根本的な治療として矯正治療などでかみ合わせの改善を検討する場合もあります。

ナイトガードは歯を守るための非常に心強い味方ですが、調整が必要な繊細な装置でもあります。歯科医師と二人三脚で「今の自分の口に合っているか」を確認し続けていくことが、口の健康を守る一番の近道です。

オトナンサー編集部

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