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「アマゾンの幽霊犬」を固定カメラで撮影に成功

  • 2026.6.11
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

アマゾンの奥地には、人前にほとんど姿を現さない犬が潜んでいます。

その様子から“幽霊犬(ghost dog)”と呼ばれる犬の正体は、「コミミイヌ(学名:Atelocynus microtis)」というイヌ科動物です。

小さく丸い耳、短い脚、ふさふさした長い尾、そして部分的に水かきのある足を持つこの動物は、鋭い聴覚と嗅覚によって人間を巧みに避けるため、長年にわたり詳しい生態がほとんどわかっていませんでした。

しかし今回、アメリカ・野生生物保全協会(WCS)などの研究チームは、約25年にわたる固定カメラ調査によって、アマゾンの“幽霊犬”の姿と暮らしぶりを大量に記録することに成功しました。

研究成果は2026年5月27日付で学術誌『Neotropical Biology and Conservation』に掲載されています。

目次

  • 幻の「幽霊犬」をカメラトラップで追いかける
  • 幽霊犬は夜ではなく、昼の森を歩いていた

幻の「幽霊犬」をカメラトラップで追いかける

コミミイヌは、ラテンアメリカで最も知られていない肉食動物の1つとされてきました。

博物館に残されている標本も非常に少なく、野生で直接観察される機会も限られていたため、その姿はどこか神話的な存在のように語られてきました。

コミミイヌ/ Credit: ja.wikipedia

研究者たちは、この“見えない動物”を調べるために、森の中に固定カメラ、いわゆるカメラトラップを設置しました。

カメラトラップは、動物がカメラの前を通ると自動的に撮影する装置です。

人間が近くにいる必要がないため、警戒心の強い動物の自然な行動を記録するのに適しています。

今回の研究では、ボリビア全域の500件の分布記録に加え、ボリビアとペルーの低地森林で行われた34回の集中的なカメラトラップ調査が分析されました。

その結果、独立した写真記録は594件にのぼりました。

これは、コミミイヌの分布域内で確認された記録としては最大規模のものです。

【実際に撮影されたコミミイヌの画像がこちら

撮影されたコミミイヌは、黒灰色から赤褐色の濃い毛に覆われ、大きな頭と小さな丸い耳を持っていました。

また、短い脚とふさふさした尾、さらに部分的に水かきのある足も確認されています。

この足の特徴は、湿った森や水辺の環境を移動するうえで役立っている可能性があります。

まさに“幽霊犬”と呼ばれるにふさわしい、アマゾンに適応した独特の姿です。

幽霊犬は夜ではなく、昼の森を歩いていた

今回の研究で特に興味深いのは、コミミイヌが予想以上に多く森の中で生き残っている可能性が示された点です。

これまで、この動物は非常に希少で、ほとんど見つからない存在だと考えられてきました。

しかしカメラトラップの記録から、チームはコミミイヌの密度を100平方キロメートルあたり約15個体と推定しています。

これは決して「普通に見られる動物」という意味ではありません。

それでも、研究者たちが以前に恐れていたほど極端に少ないわけではない可能性を示しています。

相対的な多さで見ると、コミミイヌはジャガーのような大型肉食動物よりは多く、オセロットのような中型肉食動物よりは少ないと考えられました。

つまり、幽霊のように消えてしまった動物ではなく、人間の目が届かない深い森の中で、ひそかに暮らし続けていたのです。

【カメラに映ったコミミイヌの映像はこちらの記事内にあります】

また活動時間についても、新しい発見がありました。

謎めいた肉食動物と聞くと、夜に活動するイメージを持つかもしれません。

しかしコミミイヌは主に昼行性で、特に午前6時から正午ごろにかけて活動が活発になることがわかりました。

夜の闇に紛れるのではなく、彼らは日中の密林を静かに移動していたのです。

さらに研究では、コミミイヌが川から離れた高地林を強く好むことも示されました。

これは、彼らが開けた場所や人間活動の影響を受けた土地ではなく、連続した手つかずの森林に依存する「森林専門種」であることを意味します。

実際、コミミイヌの相対的な多さは、保護されていない地域よりも、国立保護区や保護区と重なる先住民の領域で高い傾向がありました。

つまり、幽霊犬を守るために必要なのは、犬そのものを探し回ることだけではありません。

彼らが隠れ、歩き、餌を探す森そのものを守ることが、最も重要なのです。

今回の研究は、カメラトラップという静かな“観察者”が、長年謎に包まれてきたアマゾンの幽霊犬の姿を明らかにした例です。

人間の前には現れない動物でも、森の中では確かに生きています。

そしてその未来は、私たちがアマゾンの深い森をどこまで残せるかにかかっているのです。

参考文献

Chasing the ghost dog of the Amazon: New insights into a mythical canid
https://phys.org/news/2026-06-ghost-dog-amazon-insights-mythical.html

Mysterious Web-Footed “Ghost Dog” Caught on Camera
https://nautil.us/mysterious-web-footed-ghost-dog-caught-on-camera-1281845

元論文

Unveiling the ghost: short-eared dog (Atelocynus microtis) distribution, activity patterns, habitat use, relative abundance, and occupancy in Bolivia
https://neotropical.pensoft.net/article/183324/

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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