1. トップ
  2. エピソード
  3. 「あなたの奥さん、ちょっと変よ」義母が夫に放った言葉。価値観の合わない義母に感じたジレンマ

「あなたの奥さん、ちょっと変よ」義母が夫に放った言葉。価値観の合わない義母に感じたジレンマ

  • 2026.6.9

真顔で言い渡された掟

40代に入って、義実家との距離感が少しずつ変わってきた。

子どもが小学校に上がり、夫の実家に挨拶に行く回数が増えた頃のことだ。

週末に夫と子を連れて義実家に向かい、玄関のチャイムを押そうとした私の手を、義母が引き戸の内側からすっと止めた。

「家入る前に3回咳払いしないと運気落ちる」

冗談を言っているような声ではなかった。私を真っ直ぐ見つめて、ごく当たり前のことを伝える口調だった。

横にいた夫は苦笑いを浮かべて、自分だけ咳払いを3回した。私は意味が分からないまま、釣られて喉を鳴らした。

掟はそれだけではなかった。靴は左から脱ぐ、台所には素手で入らない、義実家の冷蔵庫は開ける前にノックをする。お茶を注ぐ順番、座る向き、トイレを出るときの戸の閉め方まで、義母の中ですべて運気と結びついていた。

守らない人間は家族にとって厄を呼ぶ存在らしい。最初の数回は付き合っていたが、回を重ねるほど、ルールは細かく増えていった。

表向き、義母はおっとりした穏やかな60代だ。けれど、私の挙動だけは決して見逃さない。お茶を一口飲むたびに視線を感じる夜が、何度もあった。

夫に届いた一本の密告電話

異変を感じたのは、ある日の帰り道だった。夫のスマホが鳴り、義母からの着信だと表示が出た。スピーカー越しに、義母の声が漏れて聞こえた。

「あなたの奥さん、ちょっと変よ」

低い声だった。聞いていて、足元から冷たいものが上がってくる感覚があった。

続けて、今日玄関で咳払いを2回しかしていなかった、左から脱がなかった、冷蔵庫のお茶を勝手に注いだ、と並べ立てている。会っている最中は終始にこやかだった義母が、見送ったあと電話越しに別人の声で密告していた。

夫は慣れた様子で「分かったよ、伝えとく」と短く返した。

あとから聞くと、結婚前から月に何度かこういう電話があるらしい。

夫の中では「母の癖」として処理されていたが、私は背筋が凍りついた。義母は私の挙動を一つも見逃していなかった。

掟を守らない瞬間を待ち構え、夫を通して私を矯正しようとしていた。家にいる間、ずっと笑顔だった義母の頭の中で、別の電源が常に動いていた事実が、家に着くまで頭から離れなかった。

翌週から、義実家に行く回数を減らした。

子どもの行事と重ならない週末は、夫だけ顔を出してもらう形に切り替えた。連絡を断つわけではない、けれど距離だけは確実に取り直した。

義母の掟は今も増え続けているらしい。たまに夫のスマホが鳴る瞬間、私の手は無意識に止まる。あの低い声が、いつまでも耳に残っていた。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる