1. トップ
  2. エピソード
  3. 「落とした方に返ってほしかった」“10万円入りの財布”を交番に届けた大学生…手続き中に起きた“偶然の展開”に「今でも忘れられない」

「落とした方に返ってほしかった」“10万円入りの財布”を交番に届けた大学生…手続き中に起きた“偶然の展開”に「今でも忘れられない」

  • 2026.7.4
undefined
出典:photoAC ※画像はイメージです。

警察官として勤務していると、事件や事故、トラブルに対応することがほとんどです。

その一方で、人の優しさに触れ、「この仕事をしていてよかった」と思える瞬間もあります。

今回は、交番勤務時代に経験した、今でも印象に残っている出来事を紹介します。

「落とした人に返ってほしいだけです」

ある日、20代の大学生が財布を拾い、交番へ届けてくれました。

財布の中を確認すると、約10万円の現金が入っていました。

遺失物の手続きを進める中で、筆者は大学生へ、

「法律上、お礼(報労金)を受ける権利があります。また、一定の条件を満たした場合は所有権を取得できる制度もあります」

と説明しました。

すると大学生は少し笑いながら、

「権利はいりません。落とした方に返ってほしいだけです」

と話しました。

さらに、

「ちゃんと持ち主に返ったかだけ知りたいです」

とも話していたことを覚えています。

その言葉が、とても印象的でした。

交番内での偶然

手続きを終えようとしていた、その時でした。

1人の70代くらいの女性が交番を訪れ、「財布を落としてしまいました」と相談に来ました。

財布の特徴を確認すると、大学生が届けてくれた財布と一致。

実際に財布を確認してもらうと、女性は「これです!」と安心した表情を見せました。

女性によると、その財布は娘からプレゼントされた大切な品だったそうです。

現金ももちろんですが、財布の中には家族写真も入っており、

「もう戻ってこないと思っていました」

と目に涙を浮かべながら話していました。

その場には、まだ大学生もいました。

女性は大学生を見ると、「本当にありがとうございました」と何度も頭を下げ、財布からお礼を渡そうとしました。

しかし大学生は、

「お礼はいりません。落とした方に返ってほしかっただけなので」

と笑顔で辞退しました。

そこで私は、女性へ

「この方は届けた時も同じことを私に伝えました。」

「落とし主の方が困っているだろうからという一心で届けてくださっています。」

と伝えました。

女性は、

「こんな立派な若い人がいて本当に幸せです」

と喜び、大学生は少し照れくさそうに笑っていました。

人の優しさは、今でも忘れられない

元警察官として、事件や事故、悲しい出来事に立ち会うことは少なくありませんでした。

だからこそ、この日の出来事は今でも強く印象に残っています。

財布を届けることは、当たり前のようで決して簡単なことではありません。

その何気ない行動が、大切なお金だけでなく、家族との思い出まで守ることにつながりました。

この出来事から感じたこと

警察の仕事では犯罪やトラブルに接する機会が多いです。しかし、その一方で、人の優しさに触れる場面も少なくありません。

落とし物を届けるという何気ない行動が、誰かの大切な思い出を守ることにつながるのだとこの出来事を通して感じました。

交番では、毎日のようにさまざまな出来事が起こります。

その中でも、この日の大学生の優しさは、今でも忘れられません。

人を思いやる行動は、誰かの心を温かくするだけでなく、その場にいた人たちの記憶にも残るのだと感じた出来事でした。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる