1. トップ
  2. エンタメ
  3. 22年前、炭酸のCMと一緒に夏ごと鳴っていた“中毒のダンス・チューン” 日本中を勝手に弾ませた音の正体

22年前、炭酸のCMと一緒に夏ごと鳴っていた“中毒のダンス・チューン” 日本中を勝手に弾ませた音の正体

  • 2026.6.25

夏が来るたびに、決まって聴きたくなる曲がある。2004年の夏、その跳ねるリズムは街にもテレビにも鳴り響いていた。理由を説明しろと言われると困るのに、一度耳にすれば最後、しばらく頭のなかで弾みつづける。炭酸飲料「MATCH」のCMに乗って茶の間まで届いたこの曲を、当時を生きた世代なら誰もが知っているはずだ。

ORANGE RANGE『ロコローション』(作詞・作曲:Gerry Goffin・Carole King/日本語詞:ORANGE RANGE)ーー2004年6月9日発売

沖縄発、3人のMCを擁するバンド。彼らの6枚目のシングルにあたるこの曲は、累計で50万枚に迫るヒットとなった。

理屈の前に、体が先に反応した

あの軽快に弾むイントロは、どこかSHAMPOOの『Trouble』を思い出させる。一度聴いたら耳から離れない、理屈抜きで体が動く、あの感触だ。鳴り出した数秒で「あ、あの曲だ」と分かる強さが、夏の街にぴたりとはまった。

3人のボーカル、HIROKI、YAMATO、RYOが掛け合いながら言葉を転がしていくと、聴いているだけで気分が跳ねていく。意味を考えるより先に、まず体が反応してしまう。それこそが、この曲のいちばんの発明だった。前年の『上海ハニー』に続き、ORANGE RANGEは「夏に鳴る音楽」の代名詞になっていく。

テンポよく転がる言葉と、隙間で合いの手のように入る掛け声。三人の声が代わる代わる前に出ては引っ込み、聴いているだけで誰かと一緒に騒いでいるような気分になる。ひとりで黙って味わう曲ではない。みんなで声を出して、初めて完成するタイプの曲だ。当時の中高生にとっては、部活帰りの自転車も、海へ向かう車のなかも、この曲が鳴るための場所だった。

undefined
2005年3月、「第19回日本ゴールドディスク大賞」 グランプリの「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」邦楽部門で大賞を受賞したORANGE RANGE(C)SANKEI

借りた旋律を、自作として世に出した

ここには、長く語り継がれてきた裏の事情がある。じつはこの曲、発売当時、クレジットは「ORANGE RANGE」だったが、その跳ねるメロディーは、1962年の洋楽ヒット『The Loco-Motion』とそっくり重なっていた。出自には、たしかに後ろ暗いところがある。それでも厄介なことに、出来上がった音の中毒性だけは本物だった。

跳ねるビートとラップで分解し、まるごと自分たちの遊び場に変えてしまう。その大胆さこそ、当時のORANGE RANGEらしさだった。古いものを掘り起こして今のノリで鳴らす、その貪欲さが一枚に詰まっていた。

下敷きがあろうと、跳ねるビートと畳みかけるラップでまるごと別物に作り替えた手際は、やはり並ではない。経緯を知ってなお、夏が来ればつい手が伸びてしまう。罪深い話だが、耳と体のほうは正直なのだ。

バラードではなく、跳ねるほうで勝負した

2004年の大みそか、ORANGE RANGEは初めて紅白歌合戦の舞台に立つ。しっとり聴かせる『花』のようなバラードもあったなかで、彼らが歌ったのは、この跳ねるダンス・チューンだった。

しんみり聴かせる一曲ではなく、会場ごと踊らせる一曲を、その年の総決算の場に持っていく。それは、2004年がまぎれもなく「踊るレンジ」の年だったことの、いちばん分かりやすい証明だった。日本中を巻き込んだ一年を、彼ら自身がそう総括してみせたように映る。

思えばこの年のORANGE RANGEは、出す曲がことごとく的を射ていた。心に染みる一曲も、底抜けに跳ねる一曲も、その振り幅のすべてが当たっていく。そんな絶頂のただ中で生まれたのが、この曲だった。出自にいわくを抱えながらも、勢いのまま日本中を踊らせてしまう。器用に立ち回るのではなく、良くも悪くも止まらなかった時期のレンジが、ここにいる。勢いと危うさは、いつだって背中合わせだった。

しかも、踊れる一曲だからこそ、紅白という大舞台で映えた。客席もブラウン管の前も、自然と体が動き出す。年の瀬の改まった空気を、跳ねるビートで一気にほぐしてしまう。その場の全員を巻き込む力こそ、この曲がいちばん得意とするところだった。

季節が巡るたび、新しく鳴り直す

あれから時間が経っても、この曲の居場所は変わらない。気温が上がり、蝉が鳴きはじめる頃になると、なぜかまたあの跳ねるイントロが聴きたくなる。

プレイリストの片隅から引っ張り出して再生すれば、一気に2004年の夏へ引き戻される。炭酸の泡、汗ばんだ放課後、友達とのカラオケ。不思議なもので、当時を知らない世代が聴いても、この曲はちゃんと夏のにおいをまとっている。誰かのプレイリストからこぼれ出し、初めて耳にした人まで、気づけば体を揺らしている。

特定の年の記憶でありながら、季節が来れば誰の夏にもすっと馴染む。季節そのものと結びついた曲は、何年経っても色褪せない。むしろ夏が巡ってくるたびに、新しく鳴り直す。ORANGE RANGEが残したこの一曲は、これからも夏の入り口で、私たちの体を勝手に弾ませ続けるはずだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

の記事をもっとみる