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「歩ける今のうちに、もう一度故郷のお墓参りに行きたい」数か月をかけて準備した日帰り外出…利用者の反応に「胸が熱くなった」

  • 2026.7.4
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

「歩ける今のうちに、もう一度故郷のお墓参りに行きたい」

有料老人ホームで働いていた頃、利用者のご家族からそんな相談を受けました。数か月にわたる準備を経て実現した日帰りの外出。その中で見た利用者の表情や、ご家族の言葉は今でも忘れられません。

利用者、ご家族、そして介護職。それぞれの想いが重なった一日を通して感じたことを振り返ります。

 ご家族からの一つの相談

これは、わたしが有料老人ホームで介護士として働いていた頃の出来事です。

ある日、利用者のご家族から相談を受けました。

「故郷のお墓参りに行きたいので、一緒に同行してもらえませんか」

利用者は高齢の女性でしたが、短い距離であればご自身で歩くことができる方でした。

一方で、お墓参りとなると話は別です。

慣れない場所での移動や食事、天候の変化など、さまざまな不安要素があります。

ご家族も長い間悩まれていたそうです。

それでも、「元気で歩ける今だからこそ行きたい」と考え、今回の外出を決意されたと話してくださいました。

相談をいただいたのは予定日の数か月前でした。

行き先の確認や介護タクシーの手配、食事場所やトイレの確認など、ご家族や施設長と何度も打ち合わせを重ねました。

当日は長時間の移動になるため、渋滞も想定しながら余裕のあるスケジュールを組みました。

外出の日が近づくにつれ、利用者と一緒に当日着ていく服を選んだり、故郷で暮らしていた頃の話を聞いたりする機会も増えていきました。

表情が変わった瞬間

利用者は普段から感情を大きく表に出すタイプではありませんでした。

穏やかで静かな方だったため、外出についても本当はどのように感じているのだろう、と思うこともありました。

そして迎えた当日。

見慣れた街並みが田園風景へと変わるにつれ、利用者の顔には自然と笑みが浮かんでいました。

すると、それまで静かだった利用者の表情が少しずつやわらいでいきました。

ご家族との会話も弾み、笑顔が増えていきます。

久しぶりに訪れた生家の近くでは、懐かしい思い出話にも花が咲きました。

お墓参りでは少し長い距離を歩く場面もあり、疲れも見られましたが無事に終えることができました。

その時、利用者の目にはうっすらと涙が浮かんでいました。

その表情を見た瞬間、利用者がこの日をどれほど待ち望んでいたのかを知り、わたしも胸が熱くなりました。

準備だけでは得られなかった学び

幸い、大きなトラブルもなく夕方施設へ戻ることができました。

何度も打ち合わせを重ねて準備してきた外出でしたが、わたしにとっては初めての同行支援でした。

慣れない場所での移動やトイレ介助、歩行の見守りなど、緊張する場面も少なくありませんでした。

それでも今回の経験を通して、利用者を支えるための新しい視点や応用力が身についたように感じています。

そして何より印象に残っているのは、利用者とご家族の笑顔でした。

感謝の言葉をいただいた時、それまで張り詰めていた気持ちがふっと軽くなったことを覚えています。

3つの想いが重なった日

普段、わたしたちは利用者と毎日のように関わります。

一方で、ご家族とゆっくりお話をする機会はそれほど多くありません。

しかし今回の外出では、ご家族とも長い時間を共に過ごしました。

利用者への想い。施設へ入居するまでの葛藤。介護を続ける中で感じてきたこと。

そんな話を伺う中で、ご家族が抱えてきたさまざまな気持ちに触れることができました。

介護は利用者だけのものではありません。

そこには家族の想いもあり、支える介護職の想いもあります。

利用者の願い、ご家族の願い、そして支える側の願い。

その3つが重なった時、誰か一人だけではなく、その場にいるすべての人にとって「充実した時間」が生まれるのかもしれません。

この出来事は、介護とは人の生活を支えるだけでなく、人の思いに寄り添い、繋いでいく仕事でもあることを教えてくれました。


文:けいこ/介護福祉士・Webライター 

介護福祉士として10年以上、デイサービスや入所施設などさまざまな介護現場で経験を積む。現在も介護職として働きながら、Webライターとして活動。介護や暮らし、働き方について発信している。二児を育てるワーキングマザー。


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