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「母にこんなにたくさん薬を飲ませないで」減薬を訴える家族と、楽になったと喜ぶ70代の母…板挟みの薬剤師がとった行動とは…

  • 2026.6.9
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

高齢のお母様の付き添いで来局されたご家族から「これ以上薬を増やさないでほしい」と相談を受けることがあります。一方で、ご本人は処方された薬で症状が落ち着いていると感じていることも少なくありません。

本記事では、本人とご家族の希望がすれ違う場面で薬剤師がどのように関わっているのか、実際にあった事例をもとにご紹介します。

ご家族の「薬漬けにしたくない」という思いの背景にあるものを整理し、ご本人・ご家族・医療従事者がよりよいコミュニケーションを築くヒントをお伝えします。

本人とご家族で「希望」が違うとき

同じご家族でも、薬に対する考え方は一人ひとり違います。ご本人は「飲んで楽になっている」と感じていても、付き添うご家族には別の心配ごとがあるものです。

「薬を減らしてほしい」と訴える付き添いのご家族

あるとき、70代のお母様と一緒に来局された50代の娘さんから「母にこんなにたくさん薬を飲ませないでほしい」とご相談を受けました。

処方されていたのは血圧、睡眠、痛み止めなど数種類。決して珍しい組み合わせではありません。

しかしご本人は「夜眠れるようになったし、膝の痛みも和らいだ」と話されており、薬の効果を実感されている様子でした。同じ診察室を出てきたお二人なのに、薬に対する受け止め方は対照的だったのです。

「薬漬けにしたくない」という言葉の奥にある思い

娘さんにお話を伺っていくと、その背景には「母の体に負担をかけたくない」「副作用が怖い」という素直な心配がありました。

また、知人から「高齢者の薬の飲み過ぎ」に関する話を聞き、不安が大きくなったとのこと。

「薬漬け」という言葉には、ご家族なりの愛情と、情報に触れて揺れる気持ちが込められていることが多いのです。決して医療を否定しているのではなく、大切な人を守りたいという思いが根底にあります。

板挟みの中で薬剤師が大切にしていること

ご本人とご家族、どちらの気持ちも本物です。薬剤師は、その間に立ってどちらかを否定することなく、橋渡しをする役割も担っているのです。

どちらかを否定せず、医師と連携して進める

「薬を減らしてほしい」と言われたとき、その場で増減を判断することはできません。

処方の変更は医師の領域だからです。しかし、ご家族の不安をそのままにせず、薬剤師から医師へ情報を共有することはできます。実際にこのケースでも、娘さんの心配を処方医に伝え、次回の診察時に薬の必要性を改めて見直していただく流れを作りました。

結果として、減らせる薬と続けたほうがよい薬を整理することができ、ご本人もご家族も納得して帰られたのです。

ご家族の不安を受け止めることから始まる対話

大切なのは、まず「ご家族が何を心配しているのか」を丁寧に聴くことです。

不安の正体が副作用なのか、飲み合わせなのか、費用なのか、あるいは漠然とした「薬への警戒心」なのか。それによって、お伝えする情報も変わってきます。

ご本人の前で意見が割れてしまうと気まずさが残るため、必要に応じて別々にお話を伺うこともあります。否定から入らず、思いを受け止めることで、その先の建設的な対話につながっていきます。

読者へのワンポイントアドバイス

薬に関する疑問や不安は、ご本人だけでなくご家族も抱えるものです。だからこそ、一人で抱え込まずに気軽に相談できる窓口があることを知っておいてください。

薬への疑問はご家族も一緒に相談できる

「家族の立場でこんなことを聞いてもいいのかな」とためらわれる方もいらっしゃいますが、薬局はご家族からのご相談も歓迎しています。

お薬手帳を持参していただければ、飲み合わせや重複の確認もできますし、心配な点を医師にどう伝えればよいかという相談にも応じます。

薬を続けるか減らすかは最終的に医師の判断ですが、その判断材料を一緒に整理するお手伝いはできます。

気になることがあれば、診察の前後にぜひお声がけください。小さな疑問を共有することが、ご本人もご家族も安心できる治療への第一歩になります。


ライター:下田篤男

京都大学薬学部総合薬学科を卒業後、調剤薬局やドラッグストアグループで薬剤師として勤務してきました。総合病院の門前店舗では管理薬剤師を務め、たくさんの患者さんと向き合う日々の中で、「薬を渡す」だけではない、人と人との関わりの大切さを実感しています。現在は薬剤師として現場に立ちながら、医療記事の執筆・編集や薬局経営コンサルタントとしても活動中。読者の皆さまに、薬局がもっと身近で頼れる場所になるような情報をお届けしていきたいと思っています。


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